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会合


「あ、マサル。どうもこんにちは」


「こんにちはー」


 『自宅』の力を使いやってきたのは、グルスト王国第二王女であるアリシア王女殿下の私室だ。

 未玖が帝国の皆に時間を割くようになったことで、今までは彼女がやっていたことの一部が俺の役目になった。

 そのうちの一つが、この王国訪問……というかアリシアへの訪問だ。


 彼女と話す機会はそれほど多くはなかったが、こうして何度も話しているうちにある程度は打ち解けることもできたように思う。

 あだ名で呼べるほどではないが、とりあえず呼び捨てで呼び合えるくらいには仲良くなれた。

 ……あれ、ひょっとすると俺のコミュ力も捨てたものじゃない?


「アリシアには色々と迷惑をかけちゃって、悪いね」


「いえ、いいのです。私にできることなんて、本当に限られたものですし……」


 現在アリシアは、王城の中に軟禁されている。

 彼女が帝国に使節を送っていたということが判明し(その中身が俺達であるということはさすがにバレてはいない)、それを国王イゼル二世がめちゃくちゃに怒ったからだ。

 今まではわりと自由に王城の中を行き来できていたらしいが、今では食事のために外に出ることも許されていないという。相変わらずあの王様、心の広さがミジンコサイズである。


「そんなに自分のことを卑下する必要はないと思うけど……」


 アリシアは、とにかく自分を下げる癖がある。

 自意識過剰なミーシャと暴君であるイゼル二世の近くというアリステラ史上最悪に近いような育成環境で育ってしまったせいだろう。


 考え方はまともだと思うし、なんならこのアリステラではちょっと異端扱いされるくらいに開明的だ。

 何せ彼女はイゼル二世が魔族と話し合いを持つと聞いて、きちんと対話をするようお願いしていたくらいだから。

 もちろんイゼル二世がそれに激高したことは言うまでもない。

 魔王を倒すために勇者を異世界召喚するくらいの魔族絶対殺すマンなイゼル二世には、彼女の説得はまったくと言っていいほどに届かなかったようだ。


「マサル、そういえば気になる情報が入ってきたのですが……」


「ほう、気になる情報……って、ちょ、ちょっとこしょばいよ」


「あ、すみません」


 部屋の外には兵士の人達がいるので、必然俺達は部屋の奥の方でこしょこしょと会話をすることになる。

 耳元で囁かれるの、弱いんだよね。

 なんかイケないことをしてる気分になってくるから。


「ミトガワ様やカズマ様が、一度王城に戻ってくることが正式に決まったようです」


 アリシアは外に出ることはできないとはいえ、彼女には一人も味方がいないわけじゃない。 お茶やご飯を仕出しするコックやそれを運ぶメイドさんの中には、アリシアの信奉者も少なくないのだ。

 なので軟禁されているとはいえ、彼女は以前とそう大差ないくらいに王城内の事情に詳しかった。


「なるほど、それは聞き逃せないね」


 俺達が一度にドッと勇者が居なくなってしまったことで、一時王城の中はとんでもない騒ぎになったらしい。

 その動揺は貴族や商人を通じて民衆にも移り、グルスト王国に暮らす人達の不安が大きくなった。

 それをなんとかするために、残っている勇者の皆は各地を巡りながら勇者が健在であることをアピールしているんだとか。


 滅多なことで出そうとしなかったのにいざとなればすぐにこき使うとか、さすが愚王。

 彼と比べれば、ただ引っ込み思案で自分に自信がないくらいしか欠点のないアリシアに皆が肩入れしようとするのも当然かもしれない。


「となると……そろそろかな」


 現在俺達がこうやって密に連絡を取っているのは、イゼル二世が秘密裏に行おうとしている、魔族との会合に関する情報を共有するためだ。


 一体彼が何を思って魔族と話し合いの席を設けようとしているのかはわからない。

 けれど多分……いや間違いなく、碌な目的ではないだろう。


 アリシアが王城の書庫から取ってきた本では、魔族とは対話が可能であると記されていたという。

 俺は魔族と戦ったことは一度しかないから、それが事実なのかはわからない。

 けれど殺し合いではなく会合をしようとしている時点で、あちら側に知性があるのは間違いない。


 であれば、その話し合いがどんな風に行われるのか、それを確認するのには意味があると思う。

 だってひょっとしたら、魔族との戦いが終わるかもしれないわけでしょ?

 そのチャンスをぶち壊したりするくらいならイゼル二世をとっちめてやらなくっちゃいけないし……なんにせよこのチャンスだけは絶対に逃さないようにするつもりだ。


「はい、一体我が国はどうなってしまうのでしょうか……」


「それを見届けるんでしょ、アリシアは」


「……そうですね。私には一人の王族として、全てを見届ける義務があると思います」


 それを見たアリシアがどんな選択をするのかは俺にはわからない。

 けれどそれはこの国やアリステラにとって、そう悪いものじゃないんじゃないかな。


 なんて、そんなことを考えながら彼女と毎日のように会うこと五日ほど。

 ようやく待ちに待ったその機会がやってきた。


「どうやら明日、魔族の方々がグリスニアに到着するようです」

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