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魔族

『引きこもり』第一巻発売まであと七日!


 御津川君の格好は以前のものと比べて少しきっちりとしている。

 制服を着ていないのでなんだか違和感を感じるなぁ。


「御津川君、ずいぶん出世したみたいだね」


「ああ、異界の勇者ってこともあってな。待遇としては砦を守る大隊長と同等クラスってことになってる。兵権を使えるのは、有事の際だけらしいがな」


「なるほど……あれ、ってことは今の御津川君って軍属なの? 他のクラスメイトの皆も」


「いや、軍属なのは俺だけだな。一応特務部隊ってことになってるが、実質強いのが出たときや撤退の時になんとかする役割だな。あちこち飛び回るおかげで、馬にも乗れるようになったぜ」


「めちゃくちゃ順応してるなぁ……」


 なんなら自宅でぬくぬくしながらダンジョン攻略に精を出していた俺よりもずっとこの世界に馴染んでいるかもしれない。


 だって着てる軍服もめちゃくちゃ着こなしてるし。元々の凶悪な顔も相まって戦場で出会ったら逃げ出してしまいそうなほどに怖い。


「お前は今まで何してたんだよ? あれから半月ぐらい経つが」


「帝国に行ってたんだ」


「神聖エルモア帝国か……もちろん観光ってわけじゃねぇよな?」


「うん、まあ過程をはしょって結論だけ言うと、皇帝と交渉してクラスメイトの皆を帝国で受け入れてもらうことができるようになったよ」


「はしょりすぎだろ……一体何をどうやったら皇帝と謁見することになるんだよ」


「ちなみにこれから皇帝のお茶会にも参加するよ」


「これからって……ああ、瞬間移動か。じゃあ時空魔法のLVも高ぇんだな」


 わ、ジョウントのことも知ってるのか。

 前に会った時にアイテムボックス使ってたけど、どうやら時空魔法に関してもかなり造詣が深いみたいだ。

 ずっと前線にいるのは伊達じゃないね。


「未玖が言ってたんだ、中には心を病んじゃったり、戦いたくないって思ってる人も少なくない数がいるって。王国だと戦いを強制されるじゃない? まだざっくりとしか考えてはないんだけど、帝国側にはもう少し譲歩してもらって、無理強いはさせずにある程度自由な暮らしをできるように取り計らってもらうつもりなんだ」


「お前……むちゃくちゃだな……」


 そうかな?

 まあそもそもが青写真だし、できると決まったわけでもないんだけどね。

 特に帝国側は戦争が激しいらしいし、いざとなったら勇者に頼って……って可能性もゼロじゃない。


 でもまあぶっちゃけた話人間側で一番の大国だし、そうなる可能性は王国よりかなり低いと思う。

 まあそうなったらなったで、また別の国に行けばいい……なんていうのは、少し楽観的に過ぎるだろうか。


 それもこれも『自宅』が万能過ぎるのが悪い!(責任転嫁)


「しっかし帝国か……俺も一回だけ遠征したことはあるぜ。つってもほんの少しの間だったが。あっちと比べりゃ、王国の砦なんておままごとと変わらねぇ」


「あ、やっぱりそうなんだ」


 帝国の方が王国より魔法技術に優れてるからそうなんじゃないかって思うけど、やっぱり砦や使われている魔道具、兵士の質、どれもこれも帝国は王国とは比べものにならないほど発展しているらしい。


 だというのに現在帝国の戦線は、少し押され気味だ。

 つまりそれは、魔族達の侵攻がめちゃくちゃ激しいということ。


 でも王国は思っていたより平気そうだ。

 なんでこんなに差があるんだろうね。


「ここ最近はどんどん来る魔族達自体が減ってるな。前にこいつを使ってた魔族を殺してからは、大して骨のあるやつも来なくて退屈してる」


「なるほど……」


 やっぱり前に未玖とも話をしたけど、どうも魔族の動きって一貫性がないんだよね。 

 それぞれが別の意図で動いてるというか。


 そういえば、今度王国に魔族が来るんだよね。

 彼らからその辺りの詳しい話を聞けたりすると大変今後のためになると思うんだけど……まあそうはならないだろうなぁ。


 あの国王なら平気で暗殺とかしそう。そして暗殺に失敗して魔族のヘイトだけ溜めて、意味もなく戦いを激化させそう。


 ……どうしよう、冗談で言ったつもりだったんだけど、なんだか本当にそんな感じの展開になる気がしてきた……。


「魔族の人って普通に話はできる?」


「お前……魔族を人って言うと、結構怪訝な顔されるからやめといた方がいいぞ」


「ああ、聖教的なアレかぁ。帝国はその辺大分ゆるいからどうも感覚がね」


 聖教は基本的に人族を絶対とし獣人やエルフみたいな亜人達を一等低いものとして置いている。


 だから王国では魔族のことを賢い扱いしたりすると、結構白い目で見られたりする……というのは、以前未玖からアリステラ講座で教わったはずだ。


 ただ少なくとも帝国相手に善戦してしかも押し気味という時点で絶対に相手側もかなりのやり手だとわかると思うんだけど……相変わらず王国は理解に苦しむところが多々あるね。


「で、質問に答えてほしいんだけど?」


「普通にできるぞ。俺がこの剣を譲り受けた魔族は、忠義に生きる武人って感じのやつだった」


「俺も前に一回戦ったことはあるんだけど、その時はすぐに倒しちゃったからあんまり対話らしい対話もできなくてね」


「お前は……いや、言うだけ無駄か」


 呆れた様子で、御津川君が取り出した大剣を撫でる。

 剣にしてはあまりにもデカすぎるように見える大剣は、かなりタッパがいいはずの御津川君と同じくらいの長さがある。


 柄にはぐるぐると包帯が巻かれていて、いかにも使い込まれているといった感じだ。

 共に戦場を駆けてきた相棒、ってやつなんだろうか。


「で、ちなみになんだけど御津川君は帝国に行けるってなったらどうする?」


「俺は……少し悩むが、まあ多分帝国に行くだろうな」


 あれ、そうなのか。少し意外だ。

 俺は御津川君は王国に残るんじゃないかって思ってたから。


 こっちに来てからずっと戦場にいたっていうし、そっちで軍人や武人の仲間が沢山できてるのかなって。


「勇者と仲良くしようとするやつなんざ十割下心だ。俺と真っ向から喧嘩するだけの気骨があるやつがいればまた話は違ったんだろうが……少なくとも王国の騎士や軍人は、一部を除けばカスばっかだ。馴れ合おうとは思わねぇな」


「なるほどねぇ」


「それに帝国に行けば、今よりもっと歯ごたえのあるやつらと戦えるんだろ? 戦いが激しくなる分には、望むところだしな」


「はえぇ~~」


「何気の抜けた返事してんだよ。お前だって一年一組のやつら助けるために、身体張るつもりなんだろ?」


「……うーん、まあそれは出たとこ勝負っていうか、今のところ予定は未定って感じかな」


 たしかに最終的にエミリア陛下を納得させたのが俺のパワーだったから、何かあれば力を貸す必要はあると思う。

 ただ正直あんまり表舞台に立って勇者として活躍することにあんまり魅力を感じないんだよね。


 基本は自宅で寝泊まりをして、異世界情緒溢れる街並みを観光しながらひっそりと生きていく……そんな生活ができたら理想だよね。

 ……まあ、それが難しいってことはわかってるんだけどさ。


「とりあえず未玖と会う場所のセッティングはどうする? 皆を脱出させる前にしようか?」


「いや、お前も忙しそうだし今はいいさ。どうせ王国を出る時には顔を合わせるだろ? そん時に二言三言話せればそれでいいさ」


「オッケー、わかったよ。それなら俺はこのまま皇帝との茶会に行ってくるね」


「……そうだったな。お前と話してると頭が痛くなりそうだ、さっさと行ってこい」


 しっしっと蚊を払いのけるような仕草をされたので、俺はそのままシャドウダイブで影に潜り砦を後にすることにした。


 さて、それじゃあ気持ちを切り替えて、迫ってきた陛下とのお茶会に出向くことにしよう。 ……ってヤバい、どうしよう。


 俺、この世界のテーブルマナーとか何一つ知らないや……。

読んでくださりありがとうございます!

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