砦
第一巻発売まで、あと8日!
あとがきに大切なお願いがあります、ぜひ最後までご覧ください!
未玖と一緒にワインを飲み、ささやかながら交渉の成功を祝ったその次の日。
二日酔いをキュアで覚ました俺達は、一度王国に戻ってクラスメイト達の情報収集をしようという話になった。
皆を連れてくる許可を改めて得ることができたので、後は好きなタイミングで王国の皆を帝国に連れてくることができるからね。
なので皆の意志を確認するために動き出そうというタイミングで、エミリア陛下から呼び出しを受けた。
お茶会の誘いだ、一緒に話でもどうかとのことだった。
今後の心証を少しでも良くするためには、皇帝陛下のお茶の誘いを断るのはマズい。
呼ばれているのは俺だけど、別に未玖を連れてきても構わないとある。
なのでいつものように未玖も一緒にくるのかと思ったんだけど……
「あ、それなら私をグルスト王国の王城に連れて行ってくれないかな? アリスと話しておきたいことがあるの」
「王城に? 別にいいけど」
どうやら未玖はアリシア王女殿下経由で色々と動くつもりらしい。
たしかに二人とも拘束されてても時間がもったいないし、彼女には彼女で動いてもらった方がいいか。
「それじゃあね」
「うん、また後で迎えにくるから」
未玖のアッシー君(死後)となりアリシア王女殿下の部屋を後にして、そのままグリスニアを出る。
時間を確認するとまだ昼前だった。
茶会に誘われたのは三時だから、少し時間ができちゃったな。
(……あ、そうだ。御津川君のことすっかり忘れてた)
せっかくだしこの空いた時間で、一度前線に向かってみようかな。
後でまとめて話をしちゃえばって思ってたけど、晶君ってよく前線に飛ばされるから救出作戦と時間がかみ合わない可能性もあるもんね。
クラスメイトの皆の受け入れを優先にしてたせいでついつい後回しにしちゃってたけど、怒られないことを祈ろう。
えっとたしか御津川君がいるのは……カスティーリャ砦って言ってたっけ。
一度前線を覗いてみたいとは思ってたので、これも良い機会だ。
軽く戦いに参加してみてもいいかもしれない。
砦へ向かおうにも、俺の自宅には王国の北の方の場所は登録されていない。
あ、そうだ。
それならいっそのこと、クラスメイトを帝国に連れてくる時の予行演習も兼ねて向かうことにしよう。
やっぱり未玖とも色々考えたんだけど、『自宅』の力は基本的にクラスメイト達には見せない方がいいと思うんだよね。
話ってどこから漏れるかわからないし、一度家に入れてリフレッシュやトレーニングルームの機能がバレたりしたら、全自動食料生産機兼ソルジャー工場としてこき使われることになる未来がありありと見える。
俺のギフトに期待されすぎても困るし。
皆が平和に暮らせるために手を貸すくらいのことはするけど、後のことは自分達でなんとかしてもらいたいしね。
というわけで彼らを帝国へ送る時には、『自宅』は使わずに行かせてもらう。
今考えてる方法は二つ。全員に巨大な板に乗ってもらって俺が気合いで走って運んでいくスタイル。
ただこれだと運搬はできても、上の方にいる皆がグロッキーになってしまうだろう。
吐瀉物をまき散らしながら進むのは本意ではないので、なるべくならもう一つのやり方ーージョウントの連続使用でなんとかしていきたいと思っている。
ジョウントは長距離転移になると、MPが結構バカにならない。
そして同行者ごと転移させようとすると、使うMPが増えていく。
三十人をまとめて転移させるとなるとさすがにMPが厳しそうだけど……とりあえずやってみますかね。
結論から言おう。休み休みやればなんとかなりそうだ。
今のところ、ジョウントで転移が可能なのは基本的に目視ができる範囲に限られる。ちなみにパーセプションで壁の向こう側や見えないところを把握しちゃえば、ある程度はカバーできたりもする。
まあこっちの勇者の物語だと、もっとすごいどこでも行き来できるような人もいたので、そこは今後に期待かな。
なので俺がジョウントで距離を稼ごうとする場合、なるべく高地を取って遠くが見えるところを選んで、ギリギリまで遠くに転移する必要がある。
それで使うMPがおよそ15ほど、クラスメイト全員をまとめて運ぶとなると、およそ150くらいのMPを使う。
範囲詠唱スキルのLVが上がればもう少しマシになるのかもしれないけど、今までほとんど一人で戦ってきたせいで全然使ってなかったから、これは仕方ない。
一応魔力回復スキルがあるおかげで今の俺は一分に三MPが回復することができる。
なのでおよそ五十分で使ったMPは補える計算だ。
俺の今のMPがあれから更に上がって3650ほど。
序盤はとにかくジョウントを連打して距離を稼いで追跡を撒き、途中からは適宜休憩を取ったり、睡眠を取ってMPを回復させたりすれば……多分一日とかからずに帝国まで行けるだろう。
つらい旅にはなるかもしれないけど、そこは今後王国にいた方がもっと辛い思いを抱えるからと納得してもらうしかない。
さて、というわけで王国の北へやってきたわけだけど……うーん、見事に荒れ地だなぁ。
魔族に使われないようにするためかまともに街道も見えず、軍靴に踏み荒らされまくってできた道があるだけだ。
地図を頼りにするならそろそろ見えてくるはずなんだけど……あ、あれじゃないかな。
石造りで建物自体から魔力反応を感じる砦らしき建物が見えてくる。
外に兵士達がいる様子はないし……御津川君は中かな?
今はまだ昼だしバンバン影を出すわけにもいかないから少し心配だったんだけど、王城でもそうだったように、建物の中なら影には困らない。
とりあえずシャドウダイブとウィンドサーチを駆使して、なんとか御津川君を探してみることにしようかな。
砦の中はわりとシンプルだった。
物資とかが搬入しやすいようにしてあるらしく、さほど入り組んでるということもなくするすると中を進んでいける。
このカスティーリャ砦自体が人じゃなくて魔物や魔族を想定しているから、こんな感じになってるのかな。
中のスペースはある程度広く取られているらしく、二段ベッドの置かれた部屋があちこちにある。砦の中だけどぎっちぎちって感じはしない。
怪我をしている兵士達の数が少ないのは、聖教のヒーラー達が頑張ってくれているおかげなんだろうか。
そのまま中に入っていくと、御津川君はあっという間に見つけることができた。
ある程度立場のある人向けっぽい個室を探してみたら、一発だった。
「やあ」
「……誰かと思ったら鹿角か。ずいぶん久しぶりだな。忘れられてたのかと思ったぜ」
「あ、あはは……」
実際後回しにしているうちに忘れたようなもんだったので、とりあえず曖昧に笑っておく。
全てを笑顔で誤魔化すジャパニーズスタイルで対応すると、御津川君は呆れた様子を隠そうともしなかった。
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