アリシア王女
アリシア王女殿下は、絹のように波打つ金の髪を持つ、碧眼の美少女だった。
ベッドの上で上体を起こしているだけにもかかわらず、その身体からは圧倒的なまでの王族オーラが噴き出している。
第一王女のミーシャは見たことがないけれど、王族っていうのは皆こんな風に気品とか威厳といったものが備わっているものなんだろうか。
おまけに見た目や所作だけではなく、そしてその声も美しい。
その鈴の音のような軽やかな声に、一瞬言葉に詰まってしまったほどに。
「いえいえ、まさか。私は使者……のようなものです」
「使者……一体どこからでしょうか? 公式にせよ非公式にせよ、外交の窓口としたいなら父上を通した方がいいと思いますけど……」
「至って個人的なものですよ……ミク・アリスガワからの使者です」
俺の言葉に、アリシア様が目を丸くする。
「――ミク!? ミクが生きてたのですか!? よかった、ミクがあんな簡単に死ぬはずがないって、私はずっと信じていました!」
どうやらミクと仲がいいというのは本当らしく、目をキラキラと輝かせている。
俺はまず最初に、彼女に手紙を渡すことにした。
ちなみに手紙に書かれている文字はどこからどう見ても日本語なのだが、これでしっかりと意味は通じるらしい。
どうやら勇者にはデフォルトでついている自動翻訳機能の力のようだ。
ミクからもらった手紙を食い入るように見つめていたアリシア様。
しっかりと二周してからゆっくりと顔を上げる。
「ミクを助けてくれたのはマサル様だったのですね……礼を尽くすくらいのことしかできそうにありませんが……ありがとうございます」
そう言って頭を下げるアリシア様。
それに慌てるのは俺の方だ。王侯貴族の頭が決して軽いものではないということは、この異世界生活で十分に学んでいる。
「ふふっ、こうしていると普通の男の子にしか見えませんね。ミクの言葉がなければ、万夫不当の英雄様と言われても信じられなかったかもしれません」
ちょっと未玖、一体手紙で何を言ったのさ!?
今更だけど、渡す前に事前に確認しておくべきだったよ!
「手紙にはあなたはミクをここに連れてくることができるということですが……本当ですか?」
「……ええ、あまり細かい事情を詮索せずにいてくれるのならという但し書きはつきますが」
「お願いします……もう一度ミクに、会わせてください」
もちろん否やはない。
事前に未玖との話し合いで、アリシア様にはある程度力を見せておこうという結論になった。
グルスト王国の王族に、一人くらいはこちら側の人間がいた方がいいだろうということになったのである。
俺は一度シャドウダイブで外に出てから『自宅』を使い、未玖に来てもらう。
そしてジョウントを使い、あたかも時空魔法を使ってやってきたかのように部屋の中へと入った。
流石に『自宅』の力は、そう簡単には見せられないからね。
未玖を見たアリシア様はベッドから起き上がり、小走りに駆け出す。
着ているのは薄手のネグリジェで、月に照らされて均整の取れたボディラインが陰影を映し出していた。
「ミク……会いたかったです!」
「うん、久しぶりね……アリス」
アリシア様が抱きつき、未玖がそれを受け止めながら優しく頭を撫でる。
み、未玖が男前だ……いつも女の子らしいところが多いから、すごいギャップを感じる。
感動の再会を邪魔するのもあれだろうということで、俺はダークオブザムーンを使って影に溶け込み、背景と同化するのだった――。
未玖がアリシア様と一通り話が終わったらしく、再びジョウントを使う。
そして自宅へ戻ってからドア設置を使い、神聖エルモア帝国へと戻ってくる。
泊まっている宿へと帰ってきて異常がないことを確認してから、今回の報告会と作戦会議をまとめてすることにした。
未玖的にも御津川君と会うのは問題ないということで、そこは一度セッティングの場を設けることにする。
対して未玖の方からは、それよりはるかに重要そうな、聞き捨てならない話が出てきた。
「アリスが立ち聞きしたらしいんだけど……どうやら近いうちに、王国に魔族からの使者が来るみたい」
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