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能力者たちの日常  作者: 中町直樹
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プロローグ


「埃すげぇな。マスク二重にしといてよかったわ」


 薄暗い倉庫の中を物色しながら浅葉優也はぼやいた。祖父から探し物を頼まれ今に至るが軽い気持ちで請け負った過去の自分を恨んだ。


「だいたい本当にここにあるのか?じいちゃん最近ボケ始めてっからなぁ、、」

「失礼なやつじゃな。まだボケとらんわい」

「おわっ!?」


 予期せぬ声に驚き手に持っていた野球ボールを落とす。


「ビックリした。いつからいたの」

「ちょうど今じゃよ。1時間経ったから様子を見にきたんじゃ。その感じじゃまだ見つかってないようじゃがな」

「じいちゃん本当にここにあんの?結構しっかり探したけどじいちゃんが言ってた木の箱なんて無かったよ」

「いや間違いなくここにある。60年前わしが誰にもバレないようにここに隠したのはハッキリと記憶している」

「60年前って、、」


 祖父も今年で80歳。ボケ始めてもおかしくない歳ではあると優也は思っていた。そんな中で60年前のもの探し。おまけに倉庫内は野球やサッカーの道具ばかりで木の箱が置いてある雰囲気はない。記憶違いだったのだろうと優也は考えた。


「もうそろそろ飯にするから今日は一旦終わりじゃな」

「そーだね。すぐ片付けるよ」


 そう言い先ほど落としたボールを拾うため身を屈める。棚の下に潜り込んだため腕を伸ばし手のひらの感覚を頼りに探す。すると何かが指の腹に刺さる。

 

「痛ってぇ!」


 すかさず優也は手を引っこ抜く。見ると太い木の破片が刺さっていた。深くまで刺さっているため想像よりも血が出てくる。


「うわーマジか、、」

「なんじゃどうした」

「いや、ボール取ろうとしたら木の破片が刺さったみたいでさ意外と深くまで刺さったから痛くて」

「どれ見せてみろ」


 そう言われ優也は指を差し出す。しかし刺さった木の破片を見て祖父の声色が変わる。


「どこでこれが刺さった」

「え、いや、そこの棚の下だけど、、、」


 優也の手を離し言われた棚を覗き込む。汚れた床に顔をつけることすら躊躇せず、何かに取り憑かれたかのように探す。

 その様子を見て優也は恐怖を覚える。


「あった!あったぞ!」

「さ、探してた物あったの?」


 興奮気味の祖父に優也がおそるおそる聞く。


「おお。あったぞ。お前のおかげだありがとうな。さ、用は済んだ。早く飯を食おう」

「う、うん。そうだね」


 優也は15年間一緒に暮らしてきた祖父の見たことないほどの喜びに気圧され中身を聞くこともできなかったが、また明日にでも聞けばいいと考えた。


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