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第6話 道を指し示す骨

 人狼の記憶が頭の中に流れ込んでくる。どうやら言語を持つ生命を喰らうと、その知識も私のものになるらしい。


 人狼は私の頭を左手で抉ろうとしたようだが、何が起きたかもわからないうちに死んだ。 ヨミの言った通り、私の第二の力はスピードなど無関係に敵を倒せることが証明された。


 人狼が抉り取った私の内臓は、独立した生物へと変化したのだ。それは切り離せば切り離すほど、別々の個体になって獲物を求める。


 人狼の左腕に吸いついた肉片は、恐らく(ひる)のように痛みを感じさせない物質を流し込み、身体の内部へと素早く入り込んだ。人狼がどんなに速かろうと、体内から食い破られれば確実にダメージを受けるわけだ。


 彼が右手の痛みに気を取られている時、蛭は既に脳に辿り着く直前だったと思われる。そして、彼は私に攻撃を仕掛ける手前で、脳を喰われて絶命した。私は両腕の触手で、突撃してきた人狼の身体をキャッチするだけで良かった。


「やられる側の気持ちになって考えると、全くゾッとする力だな」


 私は、既に私の両腕に飲み込まれた敵に少しだけ憐れみを感じた。が、倒木の方を振り向くと、狼達が一目散に逃げて行くのが見え、憐れみの心は一瞬で霧散する。


 私は跳躍して追いつき、1匹も逃さず飲み込んだ。




 さて、これだけの生命を飲み込んでも全く満腹になる気配はない。この力は食事ではなく、あくまで栄養補給と増殖が主目的なのだろう。


 とはいえ、かなり使い道のある能力だということはわかった。回復、増殖に加えて、知的生命体からの情報取得ができるのだ。今、私の頭には人狼が死ぬ間際に思い出していた記憶と思考がインプットされている。それも、はっきりと彼らの言語としてだ。人狼の脳を取り込んだことで、私は『言葉が通じない』という問題を一つ解消できた。


「…俺の名はトダ・アキヒコ、俺の目的は王様を倒すこと」


 試しに発音してみると、今まで全く聞き取れなかった異世界の言葉を、しっかりと意味を理解して発することができた。しかし、少々粗野な口調に思える。私は日本語では決して『俺』という一人称は使ったことがない。


(あの人狼の性格というか、語彙力に影響を受けたのかもしれない)


 私の性格としては少し違和感を覚えるものの、意味が理解でき、発音も普通に可能なのは大きな前進だ。


 私は、狼達に捕まって辿り着けなかった川へと向かった。月明かりが反射してゆらゆらと揺れる水面を覗き込むと、治癒しかけた傷跡と血と泥に塗れた男の顔が見つめ返してきた。


(これが、私の顔なのか…)


 狼に殺されかけたと思えば、蘇って狼を食い殺し、さらに未知の化け物と殺し合いをして生き残った。


 そんな経験を全く実感していないような、呆然とした顔が映っている。実際、私は何が起きたのかまだ完全には受け入れられていない。本当に私のやったことなのかすら実感が湧かないのだ。


 まるで、私の中に別の意思が入り込んで操られていたかのような、夢を見た後のような余韻が残っている。


(いや、私がやったことに違いない。きっと、あの神様に妙な身体に改造されてしまったんだ。肉体の変化に、まだ心が追いついていないのだな)


 この異世界に送られるとわかった時から、五体が無事で済まないことは薄々予想していた。元より運動神経も悪く、病弱な自分の肉体が、今更どのように弄られようと恐れも恨みも抱かない。


 むしろ、元の世界に戻るため、そしてこの異世界で生き残るためには、改造されようがなんだろうが、神様の力は必要だということがよく理解できた。


 川の水で顔を洗い、傷口の血を洗い流す。綺麗な水だ、恐らく昼食の魚はここから採れたものだろう。水深は私の膝下程度の浅さで、子供でも溺れる心配はなさそうだ。


 そして、不思議なことに川の水面に露出しているいくつかの石や岩場はボウッと光を発している。近づいてよく見てみると、月明かりの反射ではなく、岩の表面に生えた苔のようなものが、まるで蛍光塗料のように淡い緑色に発光しているのだった。


(さて、確かルクラド城だったか、早く戻ってローレを助けなきゃ)


 人狼の記憶は、細部や過去を遡って思い出すことはできない。死ぬ直前の思考と記憶だけだ。彼は重要なキーワードをいくつか思い起こしてくれた。


 まず、あの城の名前はルクラド城で、やはり奴隷を捕まえておくための場所のようだ。そして、人狼を含めた、おそらく屋敷の執事服やメイドなどは、人間ではなく霊獣族という異種族で、この世界の人間を奴隷として支配している。


 私が境界を越えたというのは、あの髑髏の案山子のことだろう。私の生死に関係なく、ルクラド城には既に私の脱走が感知されていると考えるべきだ。そうなると、ローレの身が危ない。


 こうなったら、この能力でローレを連れて脱走を強行するしかないだろう。私は急いでルクラド城の方へと引き返した。


 ルクラド城の方角は明るくなっていた。灯が点っているのだ。屋敷の住人達が、私の脱走を知って起き出したのだろう。私は正面からは向かわずに、屋敷の裏へ回る。塀を乗り越えれば、伸び放題の草の中に身を隠しながら侵入できるはずだ。


 昼間は塀の中にいたので気づかなかったが、屋敷の裏手には墓地があった。日本や西洋の墓石とも違う、見たことのない形の墓だが、そこに刻まれた人名や数字から一見して墓であることはわかる。人狼の知識のお陰で異世界の文字もある程度は読めるようになったようだ。


 墓石には、


 “イリザエル・マス・ルクラド 1436-1453 肉体からの解放こそ真の始まり”


 と彫られていた。


(随分と早死にだったんだな)


 他の墓石も見てみたが、どれも名字は『ルクラド』となっている。この城を所有する一族なのだろう。しかし、屋敷の主人らしき人物は見かけていないし、いるのは召使いばかりである。


 私は触手で塀を乗り越え、音を立てないよう慎重に草むらを進んだ。屋敷の表側から声がする。よく聞き取れないが、裏手はまだ警戒されていないようだ。私は脱走の時に使った井戸のところまで来て身を隠し、様子を伺う。


 井戸からは表にいる者達の影がギリギリ見える。耳を澄ますと、どうも馬の息遣いも聞こえる。御者はもう死んだのだが、馬車を用意しているらしい。


「奴が戻って来る前に移動するぞ、娘を助けに来るだろうからな」

「何でわかる」

「さあな、リンセン様のご命令だ。とにかく別の場所へ移す。行き先はここだ」

「………よし、わかった」


 わずかに聴こえてきた会話で、ローレが馬車に乗せられて、今まさにどこかへ連れ去られようとしていることはわかった。恐らく私と彼女が親しくしていたのを霊獣達も見ていて、私が脱走したことで人質のような扱いを受けているのだ。


 一刻も早く助けなければ、馬車を見失えば終わりだ。


(馬車が屋敷を出たらこっそりと跡をつけよう)


 私が井戸に手をかけて身を乗り出した、その時である。


 ピチャッ


「ん?」


 井戸の底から水音が反響してきた。


 何かが水面に跳ねる音だ。井戸を覗くと、確かに5メートルほど下の水面に波紋ができていた。真っ暗でよく見えないが、わずかな光の反射が波紋でゆらゆらと揺れていた。


(手をかけた時に小石でも落ちたのか?)


 気を取り直して、塀を乗り越えるために井戸へ足を乗せた。


 次の瞬間、激しい水しぶきをあげて、何かが井戸から飛び出した。


「なに!?」


 その何かは私の足をがっしりと掴むと、そのまま井戸へ引きずり込んだ。


 突然の出来事に受け身すら取らなかった私は、井戸の縁へ頭をぶつけた。目の前が真っ白になるような感覚と、遅れて痛みが走る。しかし、痛みを感じた時には既に、私は井戸の水に沈んでいた。


 鼻に大量の水が入る。咳き込むが、吸い込む空気がないのでそのまま肺に水が流れ込んでくる。意識を失いかけながら、私は咄嗟に右手を上へ伸ばした。その動作に連動して右腕の傷口から触手が飛び出す。飛び出した触手は、最も身近にある物体を捕らえようとする。


 井戸の中において、それは石造りの壁面であった。触手は最初、凹凸の少ない壁面に上手く掴まれなかったが、粘性の液体を分泌することでしっかりと張り付いた。私が右手を思い切り引くと、触手の怪力でようやく水から引きずり出された。


「ゴホッゲホッ!!」


 水を吐いて咳き込みながら、私は必死に左手も伸ばした。右手と同じ要領で触手による壁登りを繰り返す。


 何度か落ちかけたが、とにかく井戸から出ることだけを考えて登り続けた。


(とにかくアレから逃げなきゃ…!)


 すると、井戸の途中に妙な穴が空いているのを見つけた。しゃがめば大人が1人入れそうな穴だ。昼間、井戸を使った時には気づかなかったが、相当奥まで続いている。僅かだが風も通っている。


(このまま上に出て見つかる危険を冒すか、この穴に入って私を引きずり込んだ奴と戦う危険を冒すか…どちらにしろ危険には変わりない)


 私はその穴へ入った。穴の中もやはり石造りで、何故かボンヤリと明るく、進むのにそれほど苦労はない。


 よく見ると、上下左右どこにでも、点々と光るものがくっ付いている。


 触ってみると、少し湿った絨毯のような肌触りだった。


(これは…川の石に生えていたのと同じ、光る苔だ)


 苔の明かりを頼りに、とにかく奥までどんどん進んだ。時折、背後を振り返ったが、何かが追いかけてくる気配はない。


 しかし、こんな風に人工的なトンネルがあるいうことは、ここも敵陣の中であることには違いない。前も後ろも注意しながら進んでいく。方向からして、おそらくルクラド城の地下に向かっているはずだ。


 普通は人が入らない井戸のような場所にあったのは、いざという時の避難通路か、あるいは何か隠さなければならないものに通じる道か。


 やがて前方に四角い光が見えてきた。しゃがんだ体勢ももう少しで終わりだ。


 出口に辿り着くと、そこは予想以上に広大な空間だった。


 巨大な円筒状の空間である。私が顔を出した出口は円筒状の壁面にあり、絶壁になっている。この空間もやはり光る苔が壁面に生えており、ボンヤリとその様相を浮かび上がらせていた。


 下を見ると、私のいる場所から底までおよそ20メートルの高さで、途中に足場も何もない。上はというと、こちらもやはり頂上まで20メートルほどの壁である。


 円筒状の空間の直径はよくわからないが、見た目の印象としてはルクラド城の敷地面積にすっぽり入るくらいの広さだと思われる。


 空間の中央には、太い金属のパイプのようなものが上から下へと伸びており、底よりも少し高いところで口を開けていた。


 パイプの口の下には、おそらくパイプから排出されたのだろう何かが山を作っている。


 さながらゴミ処理場といった雰囲気だ。


(一体何を捨てているんだ?)


 私は触手を出口の縁に引っかけて、壁を降り始めた。


 ところで、この触手がどれくらい伸びるのか、私はこの地下空間に入り込んで(ようや)く知ることになった。勢いをつけた時は約7メートル、ぶら下がってそろそろと伸ばした時には最大約8メートルといったところだ。これ以上引っ張ろうとすると、傷口が引きつって痛かった。これでは20メートル下の底へは届かないので、狼との戦いで無意識に使った足のバネ状の触手を使うべきだろう。


 しかしこのバネもまた、なかなか思うように動いてくれない。


「出ろ!」


 と気合と共に足に力を入れてみたのだが、何の反応もない。先ほどはどうやって能力を発揮しただろうか。無我夢中だったので覚えていない。


「触手よ伸びろ!飛び出せ触手!……ダメか」


 途方に暮れて、腕の触手でぶら下がりながら、何となく壁面に足をつけて踏ん張ってみると、今度はちゃんとバネが出てきた。どうやら、念じるのではなく、どこかに接地して脚を踏ん張ることで発動するらしい。


(『しっかり地に足つけろ』ってことなんだな…)


 落下の速度を落とすため、壁に触手をくっつけながら飛び降りる。


 腕の触手も、力む加減によって粘液を分泌することがわかった。粘液はとても強力で、大人一人分がぶら下がっても問題ない粘性を持っている。それでいて、腕の力を弱めると、どうやらその粘液を溶かす液体を分泌して簡単に引き剥がせるようになっている。


 触手をよく見ると、毛穴ほどの小さな穴が無数にあり、粘液と溶解液を交互に分泌する並びになっているようだった。見た目のグロテスクさはさておき、とても便利な触手である。


 足のバネのお陰で衝撃はさほど大きくなく、無事に底へ着地した。改めて、目の前にうず高く積まれたものを見て、私は暗澹(あんたん)たる気分になった。


 それは、どう見ても人の骨である。パイプの上にはおそらく屋敷があるのだろう。そのパイプから人骨が山のように捨てられているのだ。


(奴隷どころか、家畜以下の扱いじゃないか…)


 中には子供らしき小さな頭蓋骨も転がっている。それを見て、私が霊獣族とやらと戦う理由は十分だ、と思った。


 異界の神の『悪い王様を倒せ』という指令は、おそらく霊獣族の王を倒せということなのだ。それによって人間を解放し、この世界を救うというのが私の使命なのだろう。


 私だって一端の大人だ、目の前で無辜(むこ)の人々が暴力に苦しんでいるのを何も感じない訳ではないし、今の私には怪物と戦える能力もある。


 今はひとまず、上に戻ってローレの乗った馬車に追いつくのが先決だろう。邪魔する霊獣がいれば容赦はしない。


 私が再びバネを使って、元来た出口へ戻ろうとした、その時である。


 カチャッ


 壁の方を向いた私の背後から、つまり骨の山の方から、乾いた音が聞こえた。


「誰だ!?」


 私は右腕を構えながら振り向いた。そして、目の前の光景に目を見開く。


 そこには、骸骨が立っていた。


 1人、いや1体、なんと数えればいいのかわからないが、とにかく人間1人分の骨格が標本のように立っているのだ。


 私を見ているのか、眼球も表情もない顔がじーっとこちらを向いている。私はいつでも攻撃する準備があったが、骸骨は一向に襲ってくる気配がない。


 カタカタカタ


 不意に、骸骨はゆっくりと右腕を上げ、パイプの廃棄口を指差した。そこに悪意や敵意は感じない。ただ、何かを気づかせたくて指差した、そんな印象を受けた。


「…俺の言葉がわかるか?俺は人間の味方だ。お前は人間か?霊獣族か?」


 私は試しに、警戒を怠らず右手を構えたまま話しかけてみた。すると骸骨は、何か言いたげに口を開いたが、舌のない口からは何の音も発せられない。最後に、右手で指差した廃棄口の方を向いて、もう一度こちらを向いた後、カラカラと崩れ落ちた。


(上にある何かを知らせたい、ということか?)


 私は、パイプの中を覗き込んだ。真っ暗で何も見えないが、微かに風の流れを感じる。


(行ってみるか)


 私は壁に沢山生えている苔を、壁の石ごと触手で剥ぎ取った。これで少しは視界を確保できるだろう。


 苔の明かりを右手に持ち、両腕両足の触手を展開して、パイプの中へと入って行った。


 パイプ内は思った以上に上りにくかった。それはそうだ、角度は垂直で、内側を上るようには作られていない。触手の粘液なしでは到底無理だっただろうが、少しずつ上へ上へと進んで行く。


 上るという単純動作は、私に思考を巡らせる時間をくれた。こんなところまで来ておいて今更だが、なぜ神様とやらは私をこの世界に飛ばしたのだろう、などと考える。


 どうせなら、もっとメンタルもスタミナも兼ね備えた人間を送るべきではないのか。私は運動も勉強も苦手だし、何より普通の人より鈍くて怠惰だ。


 子供の頃からずっと、周囲とのズレを感じて来た。例えば、小学校の時、私がどれどけ急いで給食を食べても、気がついたら昼休みは終わっていて、周囲の嘲笑に耐えながら完食しなければならなかった。


 通知簿にはいつも担任から「もっとキビキビと行動しましょう」と書かれていた。キビキビ、の意味が分からず、試しにテレビで見た兵隊を真似して動いてみたら、周囲から笑われた。


 普通の人間は私にとって特殊であり、私は普通の人間にとって愚鈍な存在だった。


 それでも何とか働くところまで来られたのは偏に母の教育のおかげなのだが、母はいつも私を厳しく叱った後、泣きながらこう言った。


「あなたは特別な人間よ。だから普通の人なんかに合わせる必要はない。でもね、この世界で生きるためには耐えることも武器になるってことを、母さんは学んでもらいたいの。ごめんね、苦しいよね。でもあなたを世界に殺させたくないの、わかって。強く生きなさい、アキヒコ」


 本当にわからない、なぜ神様が私を選んだのか。


 ただ、正しいことと間違ったことの区別はつく。人を殺すのは間違ったことだ。だから、この異世界の霊獣の暴力に従う気はない。霊獣の迫害を止めさせ、人間の自由を取り戻す。具体的な方法もまだわからないが、その目標を達成してやっと、私は思い残すことなく元の世界へ帰ることができるだろう。


 思いを巡らせているうちに、パイプ上りも終わりが近づいてきたようだ。なんだか少し生臭さが漂っている。真っ直ぐだったパイプの内部に、次第に傾斜がつき始めた。上りやすくなった分、内部に足をつけて登って行くことができるようになった。


 やがて、少し明るい出口に辿り着いた。出口の周囲は、例えるなら漏斗やアリジゴクの巣のようにすり鉢状の斜面になっていた。骨を放り捨てるのには便利な形というわけだ。パイプ内よりは明るい空間だが、それでも壁に取り付けられた松明の火が少なすぎるため、足元しか見えない。


 しかし、暗がりにあってハッキリと見えるものがある。骸骨だ。先ほどのように、人間の骨がすり鉢状の出口の縁に立っている。普通ならもっと見えにくいはずなのに、骸骨の輪郭はハッキリと見える。骸骨は、パイプの出口から奥へと続く廊下の先を指差していた。


 パイプの出口を登り切った私が近づくと、骸骨はボウッと霞んで消えた。


(これだけ非常識な世界なんだ。今さら幽霊が出てきても驚かない。少なくとも、私を傷つけようとしていたわけではなさそうだし)


 私は、骸骨の指さした廊下の先に向かって歩いて行く。廊下の終わりには扉があった。荷物の搬入口のような大きめの扉で、鉄格子の窓が付いている。押してみると、廊下に錆びた蝶番(ちょうつがい)の軋む音を響かせながら扉は開いた。


 何があるのかわからないが、進むしかあるまい。意を決して、私は生臭さが強くなっているその扉の向こうへ踏み入った。

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