07:強敵
少し書き方を変えてみました。読みやすくなってますかね?
1~6話も気が向いたら直しておこうと思います。
探索しつつ森の中を歩き始めて10分ほどだろうか。入り口の方では疎らに生えていた木々が次第に鬱蒼としてきている気がする。出会うモンスターのレベルも1つ上がっていた。どうやら森の深部に入りつつあるらしい。
目についた綺麗な野花なんかを採りながら【索敵】を発動させてみると、何だか気になる物を発見してしまった。
「シズ兄、あっちでモンスターが小っちゃい群れを作ってるっぽいんだけど」
「群れ?何匹くらい居るんだ?」
「んーと…5匹かな。行ってみる?」
「そうすっか。サブクエとかのフラグかもしれねぇしな! 覗いていこう」
コクリと頷き、10メートルほど先のその地点へと向かう。狭めの小道に分け入って進んでいくと小さな空き地に辿り着いた。どうやらそこに群れが居るらしい。
かず兄と茂みにしゃがみ込んで様子を伺ってみる。見た感じ動物系のモンスターが木の周りで寄り集まってる…って雰囲気。和やかだ。
「居るのは角兎2匹に森鷹、森栗鼠だな。弱めのモンスターだしあれくらいなら倒せるんじゃないか?」
「や、ちょっと待って…1匹足りなくない? 確かに【索敵】では5匹居るはず…」
「ギュッ!? きゅっきゅっ…キュ〜〜〜!!」
「えっ、な…なに、うわぁぁ………」
角兎の悲痛な鳴き声が聞こえてきたので何事かと思ったら、動物達が囲む木の根が生き物みたいに動いていた。哀れな角兎ちゃんは首元を根っこに巻き取られ…がぱりと開いた木のウロへと飲み込まれてしまう。
「あの木、モンスターだったのか!? えーと…《Lv.5 トレイント》…? 変わった名前だな。普通トレントかエントだろ」
「どっちでもいいよ、それより…戦うの? これと…」
「そーだなぁ…。俺は【火魔法】取ってるし、植物系モンスターには強いだろ。行ける行ける! 取り巻きから削ってトレイントも倒す作戦でどうだ?」
「りょーかい。んじゃ、弓で先制攻撃するね…」
矢をつがえて照準する。狙うのは森鷹だ。飛ぶと厄介だからね、奇襲でHPを削っておきたいところだ。私のクエストアイテムも手に入りそうだし…逃がさないぞー。
小声で【スピードシュート】とアーツ名を呟き、攻撃を放つ……当たった!
森鷹が枝から落ちると同時にモンスター達がこっちを振り向く。戦闘開始だ!
「っしゃ、来い! 【強撃】ッ!!」
「【プラントバレット】! …シズ兄、鷹は抑えたよ! あとトレイントも動けないっぽい!」
「OK、そのまま鷹を頼む!」
トレイントは根っこをビタンビタンさせているが移動は出来ていない。かず兄はその攻撃の範囲外で2匹のモンスターを相手取っている。
私も負けじと蔦に絡まっている森鷹を集中砲火した。通常攻撃とアーツ技を織り交ぜてダメージを与えていく。ハリネズミになっちゃえ!
さして時間も掛からずに森鷹をやっつけ、かず兄も角兎を倒し終える。私は残ってる栗鼠に【プラントバレット】を当てて足止めした。
「栗鼠は任せて! シズ兄は木の方!」
「おーっし、大将首は貰うぜ!! 【ファイヤーバレット】! 【エンチャント・フォース】! …【強撃】ッ!!」
「バオオォォォッッ!?」
火の弾丸がトレイントの口へ吸い込まれ、燃え盛る。そして白い光を帯びた木剣の一撃!!おおーっ、スキル三連撃はアツい! HP3割も持ってった!!
私も【スピードシュート】で栗鼠を討ち取り、トレイントを狙っていく。手始めに【プラントバレット】をウネウネしてる根っこに絡ませてみた。
「あれ? すぐに解かれる…木魔法だと相性悪いのかな?」
「かもな! 俺の火魔法は微妙にデバフ入ってるっぽいし!!」
「じゃあ私は弱点狙いで行ってみようかな…っと!」
ギョロギョロと気持ち悪く蠢いている眼を慎重に狙って数発矢を撃ってみる。その内の1本が運良く眼に命中した途端、トレイントは仰け反って硬直した。どうやら当たりだったらしい。
かず兄の【エンチャント・フォース】の効果もあってかHPはゴリゴリ減っていた。もうひと頑張りってとこでしょ!
私は残ってるもう片方の目を狙える位置に移動して矢をつがえ、声を上げる。
「シズ兄! さっきのスタン攻撃もっかいやるよ!」
「おう、来い!!」
「……ここッ! やった、当たりっ!!」
「うおおおおおおッ、俺の【強撃】を喰らいやがれーーッ!!」
「ボオオオオアアァァァァッ……!!」
トレイントの黒焦げになった口を割くようにスキルのライトエフェクトが走る。野太い断末魔が鼓膜を震わせた。燐光が消える中、緑樹は半ばからボッキリと折れて地面に転がる。
「……やったか?」
「シズ兄、フラグ立てないの。…終わったみたいだね」
『戦闘終了 経験値60を獲得しました』
『スキル【短弓】の熟練度が3になりました アーツ技【トリプルアロー】を習得しました』
システムコールが聞こえてきて、ホッと息をつく。激しい戦闘をした甲斐あって収穫もそれなりに良いものだった。…生産スキルよりも戦闘スキルの方が伸びてるとは…ううー。
私は動物たちの死体を拾いながら倒木とかず兄の側へと駆け寄る。綺麗にポッキリ折れてるトレイントを見てるとちょっと笑いが込み上げてきた。
「ふ、くくっ……シズ兄、めっちゃ主人公してたね」
「んなっ、笑うなよ! 叫びもするだろ、こんなマンガみたいな戦闘したらよー!! ユーリィだってノリノリだったじゃねえか!」
「あははは! そだね、私も入り込んじゃってた…ぷふふ」
「あーもう…ほら、解体やっちまおうぜ! 早くしねーと自動消滅するかも…」
「それは困る!」
おふざけ気分は一気に冷め、シャキーンと解体ナイフを構える。私にとってはアイテムの方が嬉しい収穫だからね!
私は角兎を解体することにし、他のモンスターの方はかず兄へ任せておく。ちゃんと解体するのは大変だけどアイテムの実入りを考えると断然手作業でやる方がお得だ。
全部のモンスターを解体した結果、角兎からは肉類と角と毛皮、森栗鼠は肉と尻尾、森鷹からは羽毛と肉、そして『森鷹の尾羽』なるものが手に入った。私のクエストアイテムだ! これで『矢の材料の採集』クエストに必要なアイテムは集まったようである。
気になるトレイントはというと、『魅怪木の枝』が2本と『魅怪木の樹皮』が3枚ドロップした。そう、かず兄の探していたクエストアイテムの主はトレイントだったのだ。
「なるほど…敵を引き連れるからトレインとトレントでトレイントって訳か。こういうお遊びのあるゲームってのは好感が持てるぜ…」
「ブツブツ言ってる場合じゃないよシズ兄! クエストアイテムが揃ったならやる事は一つ! 生産あるのみっ!! 早く生産、生産~~!!」
「わーったよ、ここじゃリポップするから何処かに移動するぞ。【索敵】使ってモンスターの居ない場所を探してくれ」
「アイアイサー!」
少し歩き、丁度モンスターの居ない開けた草地へと辿り着いた私たち。さっきのようにトレイントが根を張ってもいない。ここで生産タイムを楽しむとしよう!
各種の材料と道具を地面の上に広げる。スキルに応じて生産道具が初期アイテムとして与えられていて、私は『簡易採集セット』と『簡易木工セット』。かず兄は『簡易錬金セット』がインベントリに入っていた。
生産道具をインベントリから取り出してタップすれば、生産のスキルメニューが開ける仕様になっている。メニュー画面には『レシピ一覧』『レコード』『オリジナル』の3つのタブがあり、私は『レシピ一覧』の中で明るく表示されている矢のレシピを選択した。
「えーっと、マニュアル制作とオート制作があるんだっけ…初めてだしオートにしとこうかな」
「マニュアルじゃねーんだ? ユーリィ凝り性なのに」
「さすがの私も矢は作ったことないからね…失敗したらヤだもん」
「ははっ、あったらビックリだぜ。俺は簡単そうだしマニュアルで行く!」
かず兄も早速作業に取り掛かったらしい。『魅怪木の樹皮』をすり鉢に入れてゴリゴリと擦り潰している。よーし、私もやってみよう!
レシピからオート制作をタップすると、手が勝手に動き出した。うわぁ、この感覚はちょっと気持ち悪いかも…。
まずは数本ほど採取した『ニワトコの枝』の加工からだ。表面の樹皮を削ぐようにナイフを滑らせ、一通り終わったらヤスリで磨いて表面を整える。そして適当な長さに切り揃えてから両端に刻みを入れればシャフト…軸部分が完成したようだ。
一つ加工し終わると残りの材料も処理されるらしく、ただの枝がピカピカの棒へと変化した。超便利!
次は『角兎の角』だね。尖ってる方をナイフで削って平たく鋭利に仕上げ、更に反対側を凸状になるよう細く削っていく。これは細やかな作業が求められそうだ。オート制作で手が動くままに任せていれば、数分で角の矢じりが出来上がった。
これは一旦置いといて、『森鷹の尾羽』に取り掛かるらしい。数枚ドロップしたのを手に取り、軸部分を境に半分に割く。そして木工セットの中から何やら黄色っぽい液体が入った瓶を出してきた。
「これは…ニカワかな? 古風だなぁ…。ファンタジーっぽくて良い!」
「俺の方にもファンタジーな道具があるぜ、置いたら火が点く五徳! すげー魔法っぽいの」
「えっ、なにそれ気になる!! いいなー、私も【錬金術】取りたくなってきた…」
「生産となると目移り激しいな、唯は…。ていうか手、喋りながら勝手に動いてるぞ」
「うわわっ、見てなかった…不思議だなぁ、この挙動…」
余所見してる間にニカワで羽根と角をシャフトへ接着し終えていた。レシピを見ればもう仕上げ段階らしい。最後に角と軸の合体部分、そして羽根のお尻と頭を固定するように紐を巻き付けて縛り、矢は完成した。
「よし、できたー! おお~、出来上がったら矢が一気に増えた!! 1本が10倍になってる!」
「ゲーム仕様ってヤツだな…俺もそろそろ完成だぜ! 後はこれを混ぜて…」
かず兄は茶色の粉末をボウルの中のペーストへ入れ、よく混ぜ合わせてから何やら両手をパチンと合わせる。そしてその手を地面につけて…。
「【錬金】!! …おぉ!! なんか出たぞ、これで完成か!」
「ほんとだ、なんかアロマキャンドルみたいになってる…。ところで今のやつ何?」
「え? いや別にアーツを唱えるだけでよかったけどよ。錬金って言ったらやるっきゃないだろ、アレは…」
「そ、そーいうモンなんだ」
よく分からない。何かゲームのお約束的なものだろうか?
まぁともあれ、かず兄の方も制作が終わったらしい。ボウルの中にはクリーム色の蝋燭が出現していた。それぞれの生産アイテムをタップしてデータを確認してみる。
【武器消耗品】角兎の矢 品質E レア度1
角兎の角を矢じりにした初歩的な矢。
【魔法道具】懐柔のお香 品質D レア度2
使用するとモンスターを惹きつける香りを放つ。テイム確率が上昇する。
「なるほどー、シズ兄のヤツはテイムの補助アイテムだったんだね」
「これは役立ちそうだな。あと残ってるクエストは俺の『モンスター1匹のテイミング』だけだし、これ使って終わらせたい所だぜ!」
「あれ? 付与魔法のクエストって終わってたの?」
「ふふ、まーな! さっきのトレイント戦の時にいつの間にか。動かないモンスだったし10秒で5回当ててたみたいだわ」
「やるぅ~! じゃあ次は何かテイムするモンスター探そっか。何が良いとか決めてるの?」
「そうだな…魔法剣士の相棒ってどんなのだ? フクロウとかドラゴンがベタな路線か…」
「ドラゴンは居ないんじゃないかな~…って、あれ?」
話してる途中で何か物音が聞こえて、辺りをキョロキョロと見渡す。後ろの茂みがガサガサしてるんだけど、あれは…え? モンスターきた!?
やばい、生産に夢中で【索敵】とか全然使ってなかった!!
かず兄の肩をつついて合図し、慌てて茂みから距離を取る。結構まずいかもしれない、だって物音がやたら大きいんだよ!?
二つの視線が草藪へと向けられる。そしてついに黒い影が勢いよく飛び出し、警戒してる私たちの前へと躍り出た。それは深緑色の狼だった。
《Lv.6 フォレストウルフ》
「ちょっ…マジか!? Lv.6!!? さっきよりのトレイントより格上じゃねーか!?」
「も、もしかしなくても強敵っぽい…? ここに敵が居なかったのって、この狼の巣だったからとか…!?」
「グルルルル……!」
「ユーリィ、【索敵】入れろ! 他にも居たらマズい!!」
「うん! 戦うの!?」
「向こうは逃がしてくれそうにねーからな…!」
フォレストウルフはこちらを睨みつけながら、鮫が回遊するようにゆっくりと私たちの周りを歩いている。いかにも、獲物を狙う肉食獣らしい動きだった。食べても美味しくないよ!
【索敵】を使ってみたけど近くにモンスターは居ないらしい。一匹狼と見つめ合いながら私たちはぎこちなく間合いを取ろうとする。緊張感が凄い…!!
データの世界なのに、自分がドキドキしているような錯覚すらしてしまう。ザリ、と獣の足が地面を踏みしめた。く、来る…!!
「グルルァアッ!!!」
獰猛な声と共に、戦闘は始まった。
この間、VRゲームの日間ランキングTOP10入りしてました。こんな始めたての小説が入っていいものか戦々恐々してます(;´ω`)
読者の方々へ改めて感謝を。ありがとうございます!!




