魔王-記憶のない彼女
「ちっ、小賢しい真似を」と抜き取ったが聖なる力が宿った弓矢に貫かれた傷口はものの見事に毒のように体を蝕んでいった。
回復魔法ですら無効化していくその力に
これが聖なる力か……と俺は苦虫を噛み締めた。
そんな時、勇者一行はこれが好機と判断したのだろう、その秘められた聖なる力を放たれた
咄嗟に俺は防御しながら魔力を放つがその衝撃波で飛ばされそうになった。
と、その時俺は正面にいる、彼女の結界が緩むのを感じた。
咄嗟の判断だった。
俺は彼女に近寄り防御魔法を発動する。
この時、先程の肩の負傷に回復魔法、それから防御魔法と攻撃魔法の同時展開
そしていまの防御魔法で魔力を相当消耗していた。
おそらく肩の傷が相当な負担になっているのだ、普段の俺ならなんて事のない魔法だったのだから。
くそっ……と眉を顰める
ここまで苦戦を強いられるだなんて
けれど、俺はふと思った
彼女のもとで殺されて逝くのもいいのかもしれないと。
そう考える中、勇者たちは先の爆発で吹っ飛んでいたが立ち上がる
そして俺の腕の中にいる彼女に気が付いたのか勇者らはこちらを見て瞠目していた。
そして同時に彼女も自分の状況に気が付いたのか「魔……王」
腕の中にる彼女が驚きそういった。
魔王……か、と俺は彼女の後頭部を見下ろす
もうお前は俺の名を呼ぶこともないのだな、と
それもそうだ、彼女は皮肉なことに人間に生まれ変わり前世の記憶もないのだ。
だが、俺はそんな彼女を見胸が苦しくなった。
彼女と時を過ごせば俺のことを思い出してはくれぬだろうか……俺はこの戦いの中そんなことを思った。
「この女が大切か? この女を死なせたくないのであれば大人しくここを立ち去れ」
気が付いたらそんなことを言っていた。
が、しかし
「わたしのことは構わないで! わたしごと殺って」
彼女のその苦痛の叫びに俺は
ああ、いくら彼女に会えてももうあの日々には戻れぬのか
と悟った。




