"彼"
「貴方は・・・・・・昨日の・・・羅刹!」
雨音が所長室に座している男性を見て叫んだ。
「所長を知っているのか?」
晴斗の視線の先にいる"所長"は、確実に
昨日雨音が教われた時に助けてくれた羅刹その人だった。
「貴方は、この研究所の所長だったの・・・。顔を公表していないから
全然知らなかったわ」
雨音が所長にはにかむ。
「佐伯、知り合いか知らんけど口を慎め」
晴斗が雨音の態度をたしなめる。
が、所長はそれを良しとする。
「いや、構わないさ」
所長が晴斗を宥め、その席を立ち、雨音の元へ近づいた。
「改めてこんにちは、佐伯雨音ちゃん。僕の名前は山本 錫」
所長が手を差し伸べる。雨音はそれに答える様に握手を交わす。
「私が羅刹だったのは知っていたの?」
雨音が問うと、所長は雨音の資料に目を通しながら言う。
「ついさっき、ね。君の事は四楼から聞いている」
四楼・・・、雨音の父親の名に彼女は反応を示す。
「父さんの事を知っていたの?」
「ああ、一緒に因果律の研究をしていたからーーー」
所長が得意げに話していたが、雨音は彼に食ってかかった。
「じゃあ何故父さんは救えなかったの!貴方は父さんの仲間
なんでしょう!」
その突然の問い掛けに所長が驚きながらも止める事はしなかった。
「止めろ佐伯!」
晴斗の静止も、聞こえなかった。
ただ、雨音の父親を救えなかった悔しさを所長にぶつけてしまった。
「何故!何故セフィロトの進攻を許したの!」
雨音は所長の肩を掴みさらに追及する。
「済まない、四楼を救えなかったのは僕の責任だ・・・・・・」
「あの日僕に力が無かったから、四楼と、鈴が
救えなかったっ!」
私に揺さぶられながらも所長が叫ぶ。
「鈴・・・・・・?」
所長が口漏らした聞き慣れぬ人であろう言葉に雨音は手を止める。
「僕の妹だ、彼らは僕を救うために・・・・・・」
そう吐露した彼の言葉に我に帰る。
「ごめんなさい、山本所長。私は貴方の何も汲み取れていなかった」
雨音がすぐさま所長に謝罪する。
「いや、良いんだ。今僕達は彼らを救う為にいるのだから」
「君のお母さんには君が特殊研究員として四楼を
一緒に探す事を何とか了承してもらった」
所長は辛気臭くなる事を危惧してか話を変える。その変わり身の早さか
行動の迅速さか響が渾身の突っ込みを入れる。
「はやっ!」
「という訳で雨音ちゃんにはこの研究所の特殊研究員として
活動して貰うよ!」
所長が皆に向けて言い放つ。
「分かったわ。みんな、改めて宜しくお願いするわ」
雨音がこれから活動していく仲間に一礼する。
「よろしく、です!」
響さんが私と握手をしながら言う。
「ああ、これからも、だな」
荻君が照れくさそうにする。
「チーム結成、って奴かな?まぁ宜しくね佐伯君」
鬼原が手を振る。
雨音はそのチームと言う言葉に何か不思議な物を感じた。




