研究所へ
・・・と言う訳で、今雨音達はショッキングピンクに塗装されたワゴン車に
乗車する事となった。
この様などこかの烏賊のゲームみたいな車でも一応は研究所の
正式な移動用車両という名目ではある。
このワゴンが悲惨な経緯となっているのは、多分"そこにいる人"
の所為だろうか。
「お初にお目にかかるねー、佐伯雨音君。私は鬼原 蓮。
よろしくだよー」
そこでこの車の運転を担当していた女性が鬼原蓮。
乱れた髪の毛を適当に後ろで結んでいるのが印象的だ。
「名前は聞いてます」
正直、彼女が何者なのか良く分からないので雨音は人見知りするが、
鬼原はそれを物ともせず話を掛ける。
「そんな怖い顔しないでって。ホラホラホラホラ、可愛い顔が台無しだぞ?」
「雨音さんに触れないで下さい!」
雨音の顔に手を近づけた鬼原を響が咎める。
彼女は冗談でなく言っているが鬼原はまだ飄々としている。
雨音は現在の主観的情報から彼女があまり好きになれないと思う。
「ーーー彼女がこの研究所の研究開発主任の鬼原博士だ。
ハッキリ言ってイカれた女だがよろしく頼む」
晴斗が辛辣な言葉を贈る。が、鬼原はそれを物ともしない。
「イカれた女でーす」
「このワゴンは自動走行だから、俺とそこの妨害野郎が
車体前部座席へ。んでお前ら3人が後部座席に入ってくれ」
晴斗が案内した通りに座席を組む。
ーーーだが、先程この通りに晴斗が席を指定したけれど、それは間違いだった
様だ。
今、晴斗は所長と電話している為、後ろで起こっている
事には気付いていない。
「電話に集中しすぎるのはどうかと思うわね・・・・・・」
雨音の言葉に鬼原が反応する。
「私は賛成だと思うよ。あの子の手が塞がってる今、私は
好き勝手出来るからね。エッヘッヘ!」
鬼原の腕は響を押し退け、雨音へ近付く。
しかし、彼女に向けられた手は紙一重で止まった。
「・・・・・・あれ、動かない」
鬼原が不意に響の方を向くと、そこにいたのは・・・アナザーだった。
「鍛冶で貴様の腕を拘束した。次は貴様の腕を"飛ばす"ぞ」
いつの間にか鬼原の体は鋼鉄の鎖で縛られている。
どうやら鬼原は怒らせる人を間違えた様だ。
「いやアッハッハ。冗談だよ。ジョークジョーク」
鬼原が大粒の汗をかきながら苦笑いを浮かべる。それと同時に捕縛していた鎖が
解かれる。
「と、ところで用件は済んだのかい?」
鬼原が話を変え、晴斗に質問する。
「あぁ、研究所へ戻ったら佐伯の家に行く。それで良いな?」
晴斗が雨音に問う。それに対して雨音が承諾する。
「構わないわ」
とは言うがーーー。
「ここまで話が通ったなら別に研究所に戻らなくて良いんじゃ無いかしら?」
雨音がそう質問する。しかし晴斗がいいや、と続ける。
「社交辞令だ。お前には所長に一応会って貰う」
「それに所長は雨音さんに会いたがってましたからね」
響が続く。
「そうなの、分かったわ」
雨音は遅くならないと母親に伝えたのに時間が経ってしまうのに
何とも言えぬ感覚があったが渋々承諾する。
「まぁ、もう着いちゃったから来るの確定だけどね!」
いつの間にか雨音達は研究所の前まで来ていた。
研究所の地下には駐車場があり、一般にも貸し出している為か
結構混雑していた。しかし研究所の車両は指定された専用駐車スペースが
あるから関係無かった。
「よし、まずは俺が所長室まで案内ーーー」
「私が案内しますから着いて来て下さいね、雨音さん」
晴斗に被って響さんが進言する。
「ありがとう、長谷川さん」
当然雨音は響に感謝する。
「響で良いですよ~」
響さんが笑顔で言う。雨音もそれに答え、響さん、と呼ぶと
彼女が顔を真っ赤に染める。
「・・・・・・行くぞ」
不憫そうな晴斗の顔が見えた様な気がしたけれど、
兎に角雨音達は研究所を進む。
「ここが所長室だ」
晴斗が軽くノックをし、その鈍重なドアを開く。
「失礼します、所長」
そこにいた所長に雨音が驚愕する。
「・・・・・・!?」
その所長室の椅子に座していたのは、"彼だった"。




