傀儡一揆
「はぁぁぁぁぁ!」
朝江がAレインを手に持ち、錫に突撃する。その速さに遥ないし晴斗もクリエイトを
使う瞬間さえ与えなかった。
そして、その瞬間振り返った錫の頭部が顔面から粉砕される。
「まだだ、山本錫・・・!」
さらなる攻撃を加えようとする朝江を晴斗が押さえる。
「待て、招!話を聞いてくれ!」
それでも抵抗し暴れまわる朝江に対し、やむを得ず晴斗はクリエイトで鎮静させる。
すると、彼女はゆっくりと動きが治まった。
「こいつは操られていたんだ、アリスにな」
アリス・・・その名を聞いて朝江は顔面が修復されていく錫の姿をもう一度見る。
「・・・・・・アリスに?」
晴斗は知っているのか?と問うと朝江はこくりと頷く。その存在の危険性は
ヘルマンから聞いたお陰で重々承知している。
「ヘルマンは前、アリスはその世界の人間等を使役して、自らの手を下さずに
世界の崩壊を傍観する、と言った事を言っていました。その通りとするならば
あの山本錫もアイツに使役されていただけの・・・つまり彼こそが傀儡だった、と
言う事になります」
朝江の推測に晴斗は頷く。話が繋がってきた。
要は回りくどい方法にて世界の破滅をもたらさんとする堕落した神格、アリスは
山本錫を操り、全て彼の仕業の様に仕立て上げ、自分は人間の愚かな様を嘲笑するだけ。
とてつもなく悪趣味な企てに憤慨しない者はいないだろう。
そして今、彼女の計画に踊らされた人間達は立ち上がろうと決心する。
「恐らく間もなくアリスはこちらに権限するだろう。その前に俺達が集まるぞ」
遥がその場に集う晴斗、錫、朝江に言う。彼らは各々返事をすると、まず遥が全員に
自分の近くまで集まる様指示する。彼らが固まると、遥は叫んだ。
「まずは雨音ちゃん達の元まで・・・クリエイト!」
その言葉と共に彼らは雨音らのいる場所へ移動する。
-------------------------------------------------------------------
一方、雨音、響両者は京都の街を巡っていた。
京都タワー展望台にて・・・・・・。
「見て下さい雨音!ほらほら、あそこにスーパーカミシモが見えますよ!」
響が展望スコープを見ながら雨音に話し掛ける。それを聞いて雨音が
響と場所を変わり見てみる。
「あっ、本当だぁ!すっごく小さく見えるねー!」
彼女らが談話をしていると、背後から物音が聞こえる。
雨音が後ろを見ると、クリエイトによって移動してきた面々と、知らない男性が
そこにはいた。
「あれ、晴斗君に朝江ちゃん。それと・・・どちら様?」
雨音が遥、錫を見て問う。確かにこの姿の錫、そして遥とは初対面となる。
それを見かねて晴斗が手短に説明する。
「こっちの俺にそっくりなのが親父だ。俺と同じクリエイトを持つ」
遥が手を振る。晴斗は父親から目を離しつつもう一人の説明をする。
「こいつは、山本錫だ・・・」
雨音、そして響が血相を変える。
「ああ、そんな顔をそれても相違は無い。何せ因縁の相手だからな。
ただ、こいつは全ての元凶たる者に操られていた。俺自身もこいつに
何があったかは詳しく聞けていない」
錫は無意識に彼女らに土下座をしている。
「そうですか。それで、全ての元凶と言うのは?」
響の問いに朝江が答える。
「アリス。そう呼ばれている世界構築システムのバグです。彼女は少女の姿を模して、
山本錫を始め、様々な人間を操作して自らの嗜好の為に世界を破壊する言わばラスボスです」
「・・・・・・つまりそいつを倒せば良いのね」
朝江の言葉に反応を示したその声の主は雨音だ。しかし、その口調は今までと明らかに違う。
「また会ったわね」
偶然にも主人格が戻った雨音に、響が強く抱きしめる。
「痛いわよ響さん。それより・・・、山本錫。貴方の身に何が起きたのか説明して欲しいわ」
雨音が錫に言い放つ。それを聞いて錫は少し頷き、立ち上がる。
「僕の贖罪に繋がるならばいくらでも話そう。まずは僕が洗脳された時だ。
僕は以前、国の怒りに触れてしまって自衛隊による武力制圧を受けた。その時だった。
アリスの声が聞こえたんだ」
「その声は僕の体の自由を奪い、蝕んでいった。リヴァースの力で蘇生した僕は
自我を保ったまま、僕の体でそのまま自衛隊をーーー」
錫が態勢を崩す。口を押さえ今にも吐きそうだ。
「あぁ、うん。無理に話さなくて良いわよ。質問を変えましょうか」
雨音は気を遣い、そう言うと、錫もその様にする。
「それじゃあ、この体の事かな。この体は以前としてただの僕の依代だ。
アリスが体を失った僕に用意した肉の塊に”憑依”させられた」
「クローン?とするとその体にはモデルがいるんですか?」
響が問うと、錫が遠くの景色に目をやりながら答える。
「さぁ・・・。恐らくは以前の世界からかな」
そう言うと錫は全員の姿を見ていく。
「これまで僕がしてしまった悪行、それを贖えるかは分からない。ただ、僕は
君達の力になりたい。僕が起こす筈だった終焉はこれからアリスの手によって開始
されるだろう。それに迎え撃てるのは僕と、君達のみだ。僕が言うのも図々しいけれど、
共に戦って欲しい」
錫の瓢願に一同は頷く。
「・・・そして、貴方の罪を拭えるのは貴方しかいないのよ」
雨音がそう言った瞬間、展望台の上部から激しい爆発音が聞こえた。
そして京都タワーが停電し、一般客らが一斉に逃げて行く。
「まさか・・・来たのか!?」
錫がそう言った先、頭上から少女が煙を裂き、現れた。




