邪魔者
しかし、その廃ビルは秋葉原の住宅街の外れに建っていたので、
土地勘の無い私達は地図無しでは研究所へ行くのもままならない立地だった。
「地図は他の研究員が持って先に戻って行っちまったからなぁ」
晴斗が頭をかきながらぼやく。
「やっぱり無能なのね・・・・・・」
「まったくもー、雨音さん、ここは私に任せて下さい!
こういう時は携帯の地図でーーー」
響の携帯の画面には"圏外"の文字が表示されていた。
ここは樹海でも何でもない、秋葉原の住宅街。
なのに、何故電波が届かないのか・・・。
「・・・まさか?」
響が呟く。それに続き雨音も言い放つ。
「羅刹かも、って事ね。立て続けに現れるなんて私も”強運”ね」
雨音達は三方向に背を合わせ、辺りに注意を払う。
「不審な人影を発見し次第報告してくれ」
晴斗が二人に指示する。
この辺りは民家の飼い犬の鳴き声がけたたましい程閑静な土地な為、
何か怪しい動きがあってもすぐ分かる。
「出てきなさい・・・・・・」
雨音が呟く。
そうしている内に数分立ち、業を煮やした晴斗が声を上げる。
「埒が明かねえな、"クリエイト"!」
突如晴斗が叫ぶ。その途端、近くのビルの影から男が
"引き寄せられてきた"。
「それが・・・貴方の因果律?」
雨音の問いに晴斗は人差し指を振る。
「厳密には違うな。これは因果律と同じ様な異能力の"クリエイト"
って奴だ。生まれつき身に付いたてたが良く分からねぇんだ」
男をこちらへ操作し引き寄せながら言う。
「どう言う事?」
雨音が聞く。がそれに晴斗は答えない。否、答えられない。
その一連の動作には集中力が必要な様だ。
「話は後だ。まずは引っ張りだしたあの不審な男に"聴取"をするか」
晴斗がこちらへ倒れて来た男に近寄る。
すると、まだ意識を保っていた男がむく、と起き上る。
「その必要はねぇぜボウズ。何せ俺が羅刹なんだからよぉ!」
起き上った男は突然その体躯を誇張して見せて言った。
「ビンゴ!やっぱりあの人が羅刹だったんですね!雨音さん、
ここは私に任せて下さい!」
響がまたもや言い放つ。
「でも荻君は?」
「すまねぇ、クリエイトは1日1回だ」
晴斗がその場から下がりつつ謝罪する。
この状況では雨音か響(?)しか戦闘は出来ない・・・・・・。
この考えに置いて雨音には気になる事があった。
「長谷川さん、貴方も羅刹なの?」
雨音が聞くと、響は大きく頷く。
「ちょっと厄介な因果律ですけどね・・・・・・一応研究所の
用心棒張ってますから!」
そう言うと響は手を組み、叫んだーーー。
「お願いっ!アナザー!」
アナザー、"もう1つ"とか"別の"等を意味する言葉、
それは一体何を示唆しているのか?と雨音は考える。
しかしその瞬間、彼女の疑問は確信になった。
「貴様が敵か・・・・・・この私が断ち切って見せる!」
途端響の眼差しは一変し、先程の年相応の少女の様な幼気な表情から
敵を刈り取る戦士の眼差しへと変わっていた。
「性格が変わった・・・・・・!?」
雨音が驚く。
「説明をしてる場合ではない。兎に角あいつを倒すぞ」
"アナザー"と呼ばれた響の別人格であろう彼女は
懐から貨幣を取り出した。その貨幣をコイントスして見せると、
その貨幣は彼女の身長以上の大きさの鎌となり、大きく振りかざす。




