梅雨
あの一連の会話から暫く。
水無月に入り梅雨の季節となった。
連日しとしと降り続く雨に人々は憂うが、一人この季節を
待ち望んでいた少女がいた。
「響ちゃーん!聞いて聞いて!」
「どうしたんですか、雨音さん」
読書をしていた響に向かって
雨音が抱きつく。
「私ね、もうすぐ誕生日なんだぁ!」
「そうなんですか!?じゃあ何か買わないと・・・」
響を首を傾げ、何が良いか考える。
その時、かつて雨音が言った事を思い出した。
「・・・リボンだっ!!」
「リボン買ってくれるの?」
「わーすーれーてーたーあー!」
「・・・っと、雨音さん。誕生日には赤いリボンを買いましょう!」
「うん。ありがとう響ちゃん。それと・・・”さん”は無しっ!
この前も言ったよね?」
「あっははは、この方が性に合ってまして・・・」
「だーめ!」
「じゃあ・・・雨音!これでいいですよね?」
雨音が大きく首を縦に振る。
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首相官邸
「全員集まったな?これより”人工因果律計画”第十七次
中間報告会を始める」
会議室に集まった日本国官僚が卓を囲む。
その奥手に位置し、議論の中枢を担う彼こそが日本国内閣総理大臣、
安藤 邦夫その人であった。
「山本錫と言う足枷が外れ、やっと我々も
神の業に挑戦すると言った感じだな」
文部科学省大臣、槇 大矢。
「これで篠崎の所も株が上がったか」
経済産業省大臣、大場 洋二。
「とにかく、だ。今回の人工因果律の件はかなり特殊なケースだ。
鬼原蓮と・・・ヘルマン・ホ―エンハイムを招集しろ。
000、002のαユニットは完成していると伝えろ」
「鬼原はもう呼び出しました。ホ―エンハイムについてもたった今、
コンタクトに成功しました」
外務省大臣、野口 聡。
「奴らがこちらへの到着次第、人工因果律計画のフェイズ2、
起動実験に入りーーー」
「それは勇み足ですよ」
官僚らの会議に口を割って入る人影がそこにいた。
周りにいた関係者も困っているものの、手を出せずにいた。
「貴様は・・・鬼原!鬼原蓮!」
「ちゃお、おじさま方」
「この無礼者をつまみ出せ!」
「やめた方が身の為です。こっちにも、用心棒がいますから」
鬼原の背後から晴斗が現れる。
「貴様も山本錫と同じ手を取るか・・・」
「目的が違いますよ。あのA.C.Lシステムはまだ試作段階です。
その上モデルにしているのはリヴァースと来た。何が起こるか
分かりませんよ」
鬼原が顔をしかめる。しかし、負けじと総理が反論する。
「貴様らはあの男と直接戦ったかどうだか知らんがな、
臆病すぎるぞ。奴が死んだという事は貴様らが一番知っているだろう?」
「あなた達は今まで否定してきた因果律、そして錬金術を用いて
やっているんですよ!流石に生き急ぎ過ぎていませんか!?」
「賢しいわ!こいつらを連れ出せ!」
総理に命じられた部下達が鬼原、晴斗を部屋から追い出す。
「・・・クリエイトを使わなくて良いのか?」
「ああ。あの恥知らずな親父どもの不信感を煽るだけさ。今でさえ
信頼は無いというのに・・・」
「仕方が無い。応接間で菓子でも食い散らかして行こうか」
「そんな事をしているから不信が拭えないんだろうが!」
そう言いつつも、二人は応接間に向かう。
やけに豪華な扉を開けると、青年が用意されていた菓子を
頬張っていた。
「あ、どうも。ヘルマン・ホ―エンハイムです」




