恋
「それってかなり楽しい話ですか?」
響さんが期待を込めた、そして余りにも悪どい笑顔で聞く。
「残念ながら悲しいお話です。そう・・・錫が今の計画を進める
様になった最大の一因です」
鈴さんは表情を強張らせ、語り始めた。
「あれは2年前、位でしたかね・・・。因果律に関して
の研究が進んできた頃です」
「その佐々木羅衣里がこちらでの研究をさせて欲しいと
訪ねて来たのです・・・・・・」
・・・・・・私達と限られた人材のみで結成されていた研究所に
突如現れた部外者に一同は亜然とするしかありませんでした。
政府からのスパイなのではと彼女に対して疑いの目を向ける方もいました。
ですが、錫たった一人だけ彼女が研究員としてここにいる事を
受け入れたのです。
私とダゴンも正直彼女の存在に対して違和感を抱いていました。
なので、一応ダゴンから錫に佐々木の件を話したのですが、
錫は彼女は大丈夫だと言う一点張りでした。
そして間もなく、彼女は研究員の正式な一員として研究所に
招かれたのです。
その日、当然が如くダゴンと私は研究所所長の地位を得た錫の
元へ向かいました。
「何故!?何故佐々木羅衣里を仲間にした?答えろ錫!」
ダゴンが錫に詰め寄りました。何でも、ダゴンは彼女が
政府の要人と連絡を取っている場面を目撃したから、との事だったのですが。
「四楼、お前は名無一門にされた事を覚えているか?あいつらは、
いや・・・・・・この力を持たない人間は僕ら”羅刹”を嫌悪し、
恐れている」
「羅刹って?」
「鬼門からの力を得て鬼の如き力を賜う。
ならばそう名付けるのが妥当かなと思ってな。そんな事は良い。
兎に角彼女は、羅衣里は僕達の味方なんだ!」
「味方・・・」
「そう。羅衣里は僕の力を恐れなかった。嫌悪しなかった。優しいんだ。
だから・・・・・・」
「錫!!」
ダゴンは錫の服の襟元を握り、錫に向かって睨みつけました。
「お前あの女に何を吹き込まれた?」
「あの女じゃない、羅衣里だ」
「やめて!!」
その時、話の当の本人である佐々木羅衣里が所長室の扉を
強く開けました。
「お願い皆さん、錫を責めないで下さい!」
「な・・・・・・」
「処分を受けるのは私だけでしょう?だから、彼に責任は・・・」
「誰が錫に責任があると言った?」
鬼の形相でダゴンが佐々木に迫りました。今にも泣きだしそうな彼女を
見かねて錫が飛び出して行きました。
「やめろ四楼・・・羅衣里に手を出すな!」
「なんだと?元々こいつの所為だろうが!」
「錫!四楼さん!落ちついて!!この状況だからこそ、監視管が
見張っているんじゃないの!?」
その場にいた全員が佐々木を向いたのです。
「そんな、まさかな」
「鈴、そんな嘘をつくんじゃない!」
「じゃあ何故錫は佐々木羅衣里の方を向いたの?」
「あ、ああ。ああああ!!」
次第と錫の目からは涙が零れおちて来ました。
その瞳に映る佐々木羅衣里の顔は、とても・・・・・・
冷たかった。




