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因果律のレイン  作者: テンペスティア
Rain of Causality Law
22/76

残された者

 「雨音っ!!」


 やっとのこさ雨音らは家へ帰って来た。

 ドアを開けると雨音の母が急に私、そして響を抱きしめた。


 「こう言って信じてくれるかわからないけど、お父さんの声が

  聞こえたの。お父さんはもう駄目だけど、あなた達だけは守れって・・・・・・」


 雨音の母は雨音達をぎゅっと抱擁し続けながら言った。


 「ええ。それが、羅刹の襲撃を受けて・・・父さんと、荻君が・・・」


 母親に事を説明する中で、雨音の心の中にて二人が”遠くへ逝った”と言う実感が

 沸いてきた。

 そしてその重圧に耐え切れず涙を零す。


 「うぅ、二人が・・・死ん、死んでしまった・・・・・・」


 彼らの死・・・。

 守らなくてはいけなかった命。守れなかった命。


 「そんな・・・・・・」


 雨音の母の表情が”絶望”に染まる。

 鬼原がふとテレビの電源を付ける。そこで放送されていたニュース番組では

 緊急速報と称してセヴェクで起きた事件を取り上げていた。


 「もうやっているのか。しかし大抵の情報は国によって隠ぺいされるだろう。

  所長(あの男)は政府とその様な約束をしていたみたいだからね。

  それに政府も慄いているんだろう。山本錫の因果律に」


 鬼原が平静を装うが歯を食いしばる。


 「死傷者は約三十人ですが、大きなショッピングモールで起きた事件です。

  大きく報道されますね。ただ、羅刹には触れないですね」


 響が涙を拭き、そのニュースをまじまじと見ながら呟く。


 しかしそのニュースではインタビューも成されない。明らかに違和感のある報道だった。

 恐らく視聴者は羅刹の、因果律の関係を考えられるだろうか。


 「・・・それでお父さんは!?」


 雨音の母が我に返り、ダゴンの死の真相を聞く。が、それは雨音らには答えられない。


 「詳しい事を言ってしまえばきっと母さんまで危険に晒してしまうわ。ただ、

  所長・・・いや、山本錫に回収されてしまった。そう伝えておくわ」


 苦心しながらも雨音はそう言う。すると雨音の母親が呟いた。


 「・・・何故お父さんが殺されなくちゃいけないの?何故晴斗君が

  死ななくちゃいけないの!?一体所長さんは何を考えて・・・」


 雨音の母は身を震わせ、”所長”と言う存在に疑念を抱く。


 「母さん・・・・・・」


 雨音が母の身を案ずる。


 そして鬼原が雨音の母の心の濁点である山本錫への辛みを解消させる為か、

 彼の行く場所への追走を提案する。


 「この凄惨な事件の発端には研究所所長、山本錫がいます。彼が次に目指すのは、

  京都府神下町・・・。そう”協力者”から聞きました」


 協力者。その正体について雨音は合点が行かず鬼原に問う。


 「鬼原さん、その協力者って?」


 雨音が問うと、彼女は内緒、とだけ口にし、響を見る。

 当の響は先程の涙から一変し、晴斗の仇である山本錫への復讐を誓う闘志が溢れ出ていた。


 「そうですね。まずはそこへ行って山本錫をぶっ倒す!!」


 響が声を荒げ叫ぶ。雨音もそれに続く。


 「私達は止めなくてはいけない。それが出来るのは私達だけなの」


 雨音の母が彼女らの姿を見て、様々に思う所はあるものの感慨深い、

 と言った顔を見せる。


 「雨音・・・・・・」


 雨音の母は実娘の呟く。


 「・・・・・・保護者は私と言う事で、期間不明のトンデモ旅行へ行く事を許可

  して下さいな!」


 鬼原が渋い顔を見せつつ雨音の母に瓢願する。


 「鬼原さん・・・・・・」


 鬼原の決意に満ちた顔を見て雨音の母はこく、と頷き信託する。


 「全員帰ってきますから、その時は美味しいカレー用意してて下さいね」


 響は自分を引き取ってくれた恩人の肩を抱き、笑顔で言って見せた。


 「響ちゃん・・・・・・」


 彼女の瞳は娘である雨音にそっくりだった。その目に雨音の母は一抹の不安を抱えるも、

 雨音と同じく激励する。


 「危険なのは分かっているわ。それでも、父さん、荻君が命を投げ打ってまで

  守りたかったものを、残された私達が紡いでいくの」


 雨音の母が複雑な表情を見せる。それは(雨音)を心配する親の顔。

 その面持ちは過去に何度か見た事があるーーー。


------------------------------------------------------------


 「雨音!大丈夫だった!?」


 雨音の母が急いで雨音に駆け寄る。


 「おかーさーん!!こわかったよーっ!!」


 小学生の頃。

 雨音がストーカーに追われ、”警察のお世話”になっていた時だった。

 雨音の母が迎えに来てくれて、優しく抱きしめてくれた。


 その腕は少し震えていたものの、とても暖かくて、不思議な安心感があった。


 その時の母親の顔。心配と、”安堵”ーーー。


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 「そう・・・そう言う事。安堵してくれているのね、母さん」


 雨音の母の表情は見る見るうちにいつもの面持ちに戻る。


 「雨音、成長したのね・・・・・・。お父さん・・・喜びましょう!

  お父さんが雨音に何かを託してくれたのね、きっと!」


 雨音の母はそう言うと、急に立ち上がり、服の袖を(まく)


 「立ち直ってくれて良かったわ」


 雨音が安心する。


 「今日は美味しいご馳走作るわよー!」


 雨音の母がガッツポーズを見せる。


 「やったぁ!」


 響が万歳をする。


 彼女らの立ち直りの早さに鬼原は苦笑いを浮かべる。


 「・・・見ていてくれよ荻君、ダゴン。私達は必ず勝つ」


 鬼原がそう呟くと夕食の準備にいそしんだ。

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