セヴェクにて
「さて、まず何をしようかしら」
土曜日と言う事もあってかセヴェクにはたくさんの人が訪れている。
さらに、セヴェクに入っている商業店も多く、一行は様々な店舗に目移り
してしまう。
「そうだなぁ、君と長谷川君は化粧室で着替えちゃってさ、
私達はそこの眼鏡屋で待ってるよ」
鬼原が親指で眼鏡屋を指し示す。
「丁度良い所に眼鏡屋があるもんだな…」
晴斗はそう言いながらも興味を持ち、店へ入って行く。
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そして鬼原、晴斗らがショッピングを楽しんでいる頃、雨音、響は化粧室へと
辿り着いていた。
「さてと、私もこの制服を着てまた新しい門出と言った感じね・・・。
どうしたの?響さん」
雨音が呟き、不意に響の方を見ると、何か違和感を感じた。
先程から響の表情が重く、暗い。
「ああ、すみません・・・。何だかここに来たら変な胸騒ぎがして・・・」
響が俯きながら呟いた。
彼女の憂いた心を元気づける為の策を雨音は模索する。
が、今までその様な感情に苛まれた事があまり無いので何を言えば良いのか
良く分からなかったが、取り敢えず思い付いた事を口にしてみる。
「そ、そうだ!響さん、私が着替えている間、外を見張っててくれない
かしら?こういう所にも悪い大人っているものよ!拉致、誘拐、暴力!」
少しばかり観点が違う様な気がしながらも雨音は言い放った。
「雨音さん・・・そんな神経質なのに何故いっつも犯罪者に遭遇
するんですかね・・・・・・」
響の面持ちが少しだけだが明るくなった。
それに安心した雨音は化粧室へそそくさと向かう。
「と、取り敢えず着替えてくるわね」
響は行ってらっしゃーい、と手を振り見送る。
先程の胸苦しさも解けた様だ。
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雨音が着替えている頃、響は化粧室の周りを見渡し、不審な人物がいないか
チェックしていた。
「えーと、悪い人悪い人・・・いないですよね。アナザー、あなたは
感じますか?」
不意に心の中の自分に問い掛ける。
彼女は記憶や教養も共有しており、世間一般の解離性同一性障害とは
全く異なっている為、この様な自己意識内での会話も可能としている。
「・・・いないですよね・・・・・・え!?」
すると響は店舗の間の通路を通り過ぎる不審な人物を目撃した。
「何ですかあの仮面の男!?」
「あれは完全に不審者ですよね・・・と言うかあれって・・・
機密資料の・・・・・・」
響は彼を追い掛け始めた。
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「響さん、着替え終わったわよ・・・って、いないじゃない。
何処に行ったのかしら?」
更衣し終わり、制服姿の雨音が響きを呼ぶが、返事は聞こえない。
丁度目の前に見えた鬼原達に聞いてみる。
「ねえ!」
「どうした佐伯?」
新調して貰った眼鏡フレームをまじまじと見ていた晴斗がこちらに気付く。
「大変よ!響さんがいないの!」
雨音の切羽詰まった言葉に二人は冷や汗を垂らしながら相談する。
「困ったな。はぐれちゃったか?」
鬼原が頭を掻く。
確かにこの巨大な施設でははぐれてしまうのもいた仕方ないとも言えるが、
雨音はそれでも響の身を案ずる。
その時、フロア中に鋭い轟音が響いた。
「・・・・・・何だ今の音は!?」
晴斗が突然の異音に反応し叫ぶ。
それはフロアの奥から銃声の様な音だと瞬時に気付く。それと同時に
客の悲鳴が聞こえて来た。
「こりゃ一体!?」
鬼原が辺りを見回す。
「ただ事じゃ無さそうね・・・・・・言って見ましょう!」
雨音達は音の聞こえた方向へ向かう。
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三人が走っていると見覚えのある人影が見えた。
「響さん!」
雨音が叫ぶ。
「雨音さん!」
同様に響も叫ぶ。
そしてそこには響の他に謎の仮面の男がいた。
「この辺りから銃声の様な異音がしたのだけれど、あれは
一体!?」
雨音が問う。
「そこにいるセフィロトの幹部、ダゴンを狙って発砲されたであろう銃弾が
一般客に当たりました!」
響が仮面の男を指差す。彼こそセフィロトが一人・・・ダゴンの様だ。
「ダゴンだと!?まさかお前はセフィロトに関する機密資料に
ちょっと写ってたからって追って来たのか?」
晴斗が目を丸くしながら聞く。だが、現状は問答をしていられる程穏やかでは無い。
「そんな事は良いですから!救急車を・・・撃たれた女性は致命傷です!!」
向こうを見ると、若い女性が腹部に銃撃を食らっていた。
「分かった。とにかく救急車をーーー」
晴斗がすぐさま携帯を取り出す。
「それは必要ないザキ」
その時、謎の男が口を挟む。
「一体誰なの!?」
雨音が身構えつつ聞くと、腰の曲がった老夫であろう謎の男が
懐から拳銃を取り出し、名乗りを上げる。
「それザキはヤマザキ。山本の兄貴の依頼で悪であるダゴンを殺しに来たザキ。
貴殿らも兄貴の部下なら研究員なら邪魔するなザキ」
ヤマザキと名乗る男は格好悪く決めポーズを取る。
「ザキ君、そうも行かないんだな!」
鬼原が思い切り前に出てヤマザキに怒鳴る。
しかし、ヤマザキは威勢良く飛び出した彼女に銃口を向ける。
鬼原はそれに少々驚く。
「良いから下がってて下さい!」
響が鬼原さんを退かせる。
それにしても、雨音は目の前に存在しているダゴンを注視していた。
彼は敵か、味方か。公開された情報の中に存在していなかった彼が一体何者なのか、
雨音はそれらの疑念を眼前の敵を見て押し殺す。




