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因果律のレイン  作者: テンペスティア
Rain of Causality Law
17/76

ソウコウ中

 「おはよう佐伯君、昨晩は眠れたかい?」


 翌日、鬼原が雨音の家へ迎えに来て、丁重に挨拶する。


 「いいえ、所長の件とか考え事をしていて、満足に寝られていないわ。

  御免なさい」


 彼女に対して雨音は不眠を謝罪する。しかし鬼原は彼女の気怠(けだる)さを

 吹き飛ばす様に言う。


 「おお、それは残念。まぁいいや、二人もいるから、さっさと行こうか」


 玄関を開け、母親に挨拶をしつつ車へ向かう。


 「ええ、行ってくるわ、母さん」


 雨音が笑顔で言う。

 すると雨音の母が手を振り、彼女らを見送る。


 「鬼原さん、晴斗君、後は頼みますねー!」


 雨音の母の声に呼ばれた二人は会釈をし、搭乗する。


 ーーーこれから雨音達がショッピングに行くのは、

 東京郊外のショッピングモール「セヴェク奥東京」。

 服飾から食品まで、幅広く商品が陳列している。


 「それってやはり所長の罠、とは言わないわよね?」


 雨音が全員が抱えているであろう疑念を代弁する。


 「さぁね。今のところ所長は何もアクションを起こしていないが・・・・・・」


 「兎に角、今日は楽しむ事を考えよう。まずはどこ行く?」


 鬼原が車に漂う重い雰囲気を払拭する様に言った。


 「私はかわいい洋服を見たいでーす!」


 響が大きく右手を挙げ、叫ぶ。


 「俺は眼鏡を見に行きてぇな」


 晴斗はぼそ、と呟いた。しかして何故眼鏡?と周囲は思いつつ、口を紡ぐ。


 「かしましいなぁ、あ!そうだ佐伯君、君研究員の制服貰って

  無かったでしょ?」


 鬼原が後部座席の私を向き、笑顔で問う。


 「え?そんな気を遣わなくていいのだけれど」


 雨音が消極的な言葉は発するが、鬼原はノンノン、と指を振る。


 「そうじゃないって。形式上、研究員と言う事は世間様に公開しなくちゃ

  なんだって。到着したら長谷川君に付いて行って貰って化粧室で着替えちゃいなよ」


 鬼原がサムズアップを見せつつ言った。


 「簡単に言ってくれるわね」


 雨音は鬼原を怪訝な様相で睨むが、彼女は全く聞き入れない。


 「今持ってるし見てみなよ。多分気に入ってくれるよ」


 そう言うと鬼原は雨音に紙袋を手渡した。

 雨音は不服ながらも取り敢えず中身を見ると、新調された制服が

 一通り入っていた。


 「ちょっと出してご覧よ」


 鬼原に促されるままに服を取り出していく。

 厚手のカーディガン、Yシャツ、ホットパンツ、スパッツ等が

 紙袋に揃っていた。

 好みにあった制服のデザインに雨音は思わず称賛の声を漏らす。


 「結構可愛いわね」


 雨音が少々興奮しながら言うが晴斗が途端、突っ込む。


 「そのデザインがか・・・んなんだからロリコンの餌食に

  されるんじゃねえのか?」


 晴斗の無神経な言葉(不器用な心遣い)に対して響のボディブローが入る。


 「空気読んで下さいよこのっ、駄眼鏡!」


 晴斗が雨音に謝罪のポーズを取ったまま意識を霞めて行く。


 「良いのよ響さん。それより鬼原さん、ありがとう。気に入ったわ」


 雨音の上機嫌な声に鬼原はうしし、と笑った。


 「ほれほれ、気に入っただろう!」


 しかし響は一つ気になる事がある様だった。


 「って、鬼原さん後ろ向いてて良いんですか!?」


 「ああ、この車自動走行なんだって」


 鬼原が高らかに笑うが、他の乗員は笑う気になれない。何しろ自動走行の

 車なんて今の今まで乗った事も無く、機械任せに頼る事に恐怖を覚えるのも

 訳無いだろう。


 「・・・・・・ふふっ。ふふふふ」


 すると突然雨音は何故か堪え切れない笑いに襲われた。


 「雨音さん?どうしたんですか?」


 響の質問に彼女は笑いながらも答える。


 「何だか、こうやってふざけ合える友達がいなかったから・・・。

  皆のお陰でこんなに笑えるわ」


 雨音が何の意図か形容しがたい涙を拭き取りながら言う。


 「何だよそれ」


 晴斗がそう呟いた。言葉のみではただ呆れている様にも聞こえるが、

 彼の顔さえ確かに笑っていた。


-----------------------------------------------


 雨音ら一行が談話をしていると、すぐに目的地へ到着した。


 「そうこうしてるうちに着いちゃいましたね」  


 響が目の前の大型ショッピング施設を見渡し、感嘆の声を漏らす。 


 「ええ、ここがセヴェク奥東京・・・・・・」


 雨音が前面に高々と押し出される看板を見つつ呟いた。

 そして雨音達はさっそくエントランスへ歩を進める。

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