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因果律のレイン  作者: テンペスティア
Rain of Causality Law
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帰る場所

 雨音はやっと我が家に帰って来た。

 因果律を手に入れてからと言うもの、

 1日に様々な情報が溢れ返り、凄く疲れて溜め息が出る。


 それでも、扉を開いた先に、母親が居ると言う事に雨音は

 安心感を抱いた。何かいつも以上の安堵が彼女にはあった。


 「お帰りなさい雨音。それで、そちらの皆様が研究所の方々?」


 雨音の母親が雨音の後ろにいる皆を見て問う。


 「お宅の佐伯さんがこれから配属される特殊研究チームの

  責任者の荻・マーク・晴斗です」


 晴斗が律儀に名刺を差し出す。


 「は、初めまして・・・と、特殊研究チームの、

  長谷川響ですっ、お母様」


 響の”お母様”と言う呼び方に雨音が怪訝そうな顔を浮かべる。


 「私は研究所の研究・開発担当の鬼原蓮です。宜しく

  ・・・・・・っと、もうこんな時間か。私は用事があるので

  ここでおいとまさせて頂きます」


 「鬼原さんは食べて行かないのですか?」


 足早に去ろうとする鬼原を見て雨音の母が食事を誘う。

 しかし、鬼原は遠慮する。


 「ええ、忙しいもので。変わりに、私の分はそこの食べ盛りの

  少年少女のおかわりの足しにして下さい」


 鬼原が笑顔で会釈をする。


 「そうですか・・・・・・ではお言葉に甘えて」


 雨音の母はそう言うと少し頷いた。


 「それでは、二人を送る為暫くしたらまた来ますね」


 鬼原はそう言い残して家を後にした。


 「それじゃぁ、改めまして、雨音の母です。宜しくね、

  晴斗君、響ちゃん」


 二人を玄関から上げると雨音の母ははにかんで言った。


---------------------------------------------


 雨音の母に導かれるままに私達は手を洗い、リビングまで案内される。


 「お腹空いたでしょう。早速ご飯にしましょうか」


 雨音の母がテキパキと食事の準備を進める。


 「速い・・・・・・」


 晴斗が感嘆の声を上げる。

 十数年の専業主婦としての腕前が光る。


 「あの、何かお手伝いしましょうか?」


 響が椅子から立ち上がり、母の側に寄る。が、雨音の母は丁重に断る。


 「大丈夫よ。響ちゃん。それに晴斗君も。二人は大事なお客さん、

  それに、雨音の初めての"お友達"だもの」


 友達・・・・・・。

 今まで雨音にそんな関係は無かった。

 悪い事をした訳でも無かったが、頻繁に警察の世話になった

 雨音を男子はからかい、可愛いからなんだと女子には苛められた。

 そんな事を学校にて続け、終始雨音は孤独だった。


 この14年間、誰も遊びに来なかった家。

 そこには今、晴斗と響がいる。


 「召し上がれ」


 出来あがったカレーライスを雨音の母が三人に配る。


 「カレーライスかぁ」


 晴斗がその輝きを目の当たりにし感嘆の声を上げる。

 彼がとても美味しそうに眺めるのでさらに雨音は母親の自慢をする。


 「これは母さんの十八番なのよ」


 へぇ、と二人が感心する。


 「それじゃあ頂きましょう!」


 響の掛け声で全員が唱和する。


 「いただきます」


 その瞬間、雨音達は食べた。食べ尽くした。

 今日は雨音、響が因果律を、晴斗がクリエイトを

 使用しエネルギーを消費している為、相当お腹が空いていたのだろうか。

 どんどんと頬張っていく。


 気付けば、カレーライスはルー、ご飯共にお代わりも底を付いていた。


 「食べてしまったわね」


 満足に腹を満たした雨音が言う。


 「ではでは御馳走様しましょう」


 響の声で再び唱和する。


 「ごちそうさまでした!」


 三人が言うと雨音の母は嬉々として頷く。


 「おいしかった?」


 雨音の母が笑顔で雨音らの顔を見る。


 「はい、感動しました!」


 響が涙を見せつつ語った。

 晴斗はこのカレーを理屈っぽく説明する。


 「特にスパイスの効いた独特かつ辛みとコクのある味が---」


 「この小説は食リポじゃないのよ」


 雨音の素早い指摘が入る。


 「みんなご飯食べちゃったし、もう少し休んだら帰る?」


 雨音の母が聞く。


 「はい。お泊りしたいのも山々なんですけど、荷物は家だし

  何より雨音さんに悪いです・・・・・・」


 それに対して響が呟く。

 彼女の寂しそうな顔を見て雨音は母親に提案する。


 「悪いなんて思わないわ。母さん、今度から二人をここに

  泊らせてあげて」


 「そうねぇ・・・・・・」


 手を頬に合わせ、母さんが唸る。


 「荻君、響さんは今一人暮らしをしているの」


 雨音が彼らの現状を吐露する。


 「荻君は実家が遠いだけだから兎も角、響さんは、家族がいないの」


 「え!?」


 雨音の母の表情が豹変し、響の方を向く。

 一方響は少し悲しそうな表情で頷く。


 「だから、どうか---」


 雨音が言い切らない内に雨音の母は立ち上がり、叫ぶ。


 「家で預かりましょう!」


 いきなり唐突な事を---。

 雨音の驚きはそれだけでは済まなかった。


 「良いんですか!?ちょっと管理人さんに連絡します!今から

  連絡すれば今日中でも話は通りますよ」


 響が自分の携帯で管理人に連絡しようとする。


 「えぇ!そんな軽簿に決めて良いの!?」


 雨音の突っ込みも間に合わず雨音の母と響が意気投合している。


 「決まりね!響ちゃん!」


 雨音の母が響の肩を抱く。


 「はい!じゃあ転校とか考えないと・・・」


 二人があたふたと引っ越しやら学校やらの手支度を整える。

 さらに、ギャグかの様に響の自宅の管理人とも話が付く。



 その様子に晴斗も対応に困るが一応鬼原に連絡し、

 響の荷物の運搬を頼む。


 凄く唐突な話なのだけれど、雨音はこうなる事をきっと心待ちにしていた

 のかも、しれない。

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