純白と漆黒
さぁ、今日も1日が始まる。
今日こそは、今日こそは1番になってやるんだ。
カタンとレールに乗せられ、ゆっくりと店内を一周すると、あちらこちらで俺達を品定めしているお客さんがいた。
そこのお嬢さん、俺はまだ1週目だよ!新鮮なタマゴを背中に乗せているんだ。美味しいよ!
「あら、美味しそうね」
そうでしょ?それなのに見て、俺の体は純白の100円皿だよ!
お嬢さんが手を伸ばして取ったのは、俺の隣で流れていた中トロを背中に乗せた漆黒の500円皿。
「お前5皿分。悪いな」
くそっ、今日も先に行かれたぁ!
グルリと店内を回り、2週目に入るとカウンター横にいるガリ達が「2週目♪」とかなんとか趣味の悪い歌を歌う。そして開いた俺の隣には、また漆黒の皿が置かれる。
今度はウニの軍艦巻か……しかしこっちにもお子様に人気のツナ軍艦があるし、根強い人気のイカもある!
カタン、カタタン。
カタタン、カタン。
1日の仕事が終わって、最後のお風呂に入ると、一足先に綺麗にされた漆黒の皿が得意げに高く、高く積みあがっていた。
「今日も、俺の勝ちだな」
五月蝿い!お前が当店人気ナンバーワンのトロを背中に乗せてさえいなければ、俺が勝てる筈なのにっ!
「もう、貴方達はいつまで競い合うつもり?」
そんな事を言われても、毎日毎日負け続けるのは悔しいじゃないか。緑さんは良いよね、いつもいつも大人気のデザートを背中に乗せてるんだから。
ムゥと膨れていると、鼻で笑った漆黒の皿は、
「デザート枠の300円は黙ってろ」
と、緑さんにも大きな口をきいた。
でも、仕方ないんだ。だって、コイツは500円皿なんだもん。俺、5皿分の仕事を1皿でこなすんだもん。
「喧嘩はおよし。皆ここの大事なお皿達だよ」
ザバー。
食器洗い機が開き、その中から出てきたのは金色に輝く800円皿!
このお店最高額のお皿の登場に漆黒の皿は何も言えなくなったのか、お店の電気が消えるまでズット黙ったままだった。
でもね、金色さん。やっぱり1番多く食べてもらいたいって思いは変えられないよ。だってね、皆の背中に乗っているのも美味しそうだけど、俺の背中に乗っているのだって美味しそうなんだもん。
皆に、いっぱい食べてもらいたいもん。
明日こそは、1番になるんだ!
カタン。
さぁ、朝が来た。
今日も1日背中に沢山乗せて運ぶぞ~。
気合を入れて見渡した店内、今日のお得メニューはトロかぁ……やっぱり人気があるもんなぁ。
トロって事は、また漆黒の500円皿が断トツで1位……ん?
えぇ?「今日はトロトロづくし、赤身が100円」だってぇ!?
今日は勝てる!