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第2話 第1節 買い物に行こう

第2話のタイトルは『第2話 暗躍 黒い影』です。


 腹が減って、目が覚めた武人が目をひらくと、髪の黒い少女の寝顔が目の前にあった。びっくりした武人が飛び起きる。頭の中を覆っていた眠気は一気にすっ飛んでしまった。

「ヒ、ヒルデ、何でお前がここにいる?」

 ヒルデというのは、彼女がそう呼んでくれと言うのでそう呼ぶことにした。

 あの後、ヒルデのBCをチェック(外部接続端子は髪で巧妙に隠されていた)したが、詳しい事情はわからなかった。データ領域のほとんどにプロテクトがかけられ、ブラックボックス化されていたからだ。無理に開こうとするとデータ自体をロストしかねない。

 ヒルデに直接聞いても「わからない」と返事が返ってくるだけ。

「マスターおはようございます」

 ヒルデが眠そうに目をこすりながら微笑んだ、素肌の上に羽織っている武人のシャツがはだけて、小振りだが形の良いむねが覗いている。武人は、はだけたシャツをあわせてヒルデの胸を隠す。

「ヒルデ、シャツはちゃんと着てくれ。俺の理性がもたない……」

「?」

 ヒルデは、きょとんとした顔をしている。

 昨夜はヒルデに客間を提供したはずだが、いつの間に隣にもぐりこんだのだか。

 dollに睡眠は必要か?と問われれば、武人は人間並みに必要だと答えるようにしている。

 dollの脳に当たる、『BC』、バイオコンピュータは、完全な機械でなく、生態部品を多用したコンピュータだからだ。

 作動させるためには、電気だけでなく人間の脳のように糖質等も必要になるし、疲労して処理能力が落ちることもある。無論、連続起動させることも可能だが、その分寿命は落ちる、処理速度はガタ落ち、良いことなど何もない。

 何気に時計を見る午後12時だ。腹も減る訳だ。

 テレビをつけると、ちょうど午後のニュース始まるところだった。世の中、事もなしとはいかないようで事故のニュースが流れる。

 『午前8時頃、首都高速湾岸線で、東京都在住、三柴みしばあかりさんの運転する乗用車が中央分離帯を越え、大型トラックと正面衝突する事故がありました。この事故で運転していた三柴みしばあかりさんが死亡……』

「うん、ヒルデ。どうかしたか?」

 ヒルデを見ると、テレビにクギ付けになっている。

「ヒルデ?」

 武人がヒルダの肩に手を置くと、ヒルダが武人に抱きついてきた。不安げに震えている。

「どうした? ヒルデ」

「わからない……」

 それはそうだろう、ヒルデの記憶メモリは封印されていた。ある条件がそろわないと、解けないようになっている。ヒルデに聞けと言っておいて、肝心のヒルデの記憶メモリに封印をかけるとは、じいさんも何を考えているのか……

「そうか、なら気にするな、できるだけのことは俺もやるからさ」

「マスター」

 ヒルデが武人の背中に回した腕に、ギュッと力をこめた。武人はヒルデが落ち着くまで髪をなでてやった。




「武人、おまたせ」

「深水殿、お待たせしたでござる」

 喫茶店でコーヒーを飲んでいると、深雪がやってきた。なぜかノームも一緒だ。

「おう、休みにすまないな」

 ヒルデの服を買いに行こうと思ったので呼び出したのだ。

「別に良いわよ、いつものことじゃない」

 確かに女性型のdollを作ったときは、付き合ってもらっている。dollを伴ってというのは、初めてだが……

「そうだな。何か頼むか?」

「いらない。この娘がヒルデちゃん?」

「はい。ブリュンヒルデです。ヒルデと呼んでください」

 ヒルデがぺこりと頭を下げる。

「私は、九十九つくも深雪みゆき、よろしくね」

「はい。九十九様」

「深雪でいいわ。あ、様もいらないから」

「わかりました。深雪さん」

「かわいい娘ね、武人」

 深雪がヒルデの横、俺の真向かいに座りにこりと笑いながら言った。説明を求めているのはすぐわかった。物心ものごころ付く前からの付き合いだ。

 それにソフトが専門だとはいえ、美雪もdoll研究会に所属している身だ。ヒルデが普通のdollとちがうことに気が付いたのだろう。あまりにも人間に近い動きに……

「じいさんが送りつけてきた。こんなものと一緒に」

 持ってきていたじいさんの手紙を渡した。

「これじゃ、何もわからないじゃない」

「ヒルデの記憶メモリも封印されているし、詳しいことはわからないけど、じいさんも急いでいたみたいだな、手紙が走り書きだし、届く前にアスガルドセキュリティーサービスの人間も来た」

 昨晩のことを簡単に話した。

「それって、まずいじゃない?」

「俺としては、得体の知れない男より、じいさんを信じようかと思うわけだけどな。ヒルデもアスガルドに行くのは嫌だといっているし」

 深雪もしぶしぶだが、納得してくれたようだ。

「でも、それをアスガルド会長の孫の前で言う?」

「相手が本物かすら、分からん」

「そうね。考えてどうにかなる問題ではないし、行きましょうか」

 深雪に引っ張られるようにして、俺達は喫茶店を出た。


第2話開始です。

どうにか今月で、あと4節と『戦乙女の補修授業』の3、4時限目を更新します。


プロローグに登場した三柴みしばさんが死亡しました。名前とセリフだけでちっとも姿を現しませんでしたけど……


とりあえず次回までは平和です。では『第2話 第2節 ショッピング』でお会いしましょう。

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