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第3話 第1節 驚愕 ラグナロック

第3話目のサブタイトルは『激突 戦乙女の姉妹』です。


『世界征服……』

 武人と美雪は、同じ言葉をつぶやいた後、ポカ〜ンと口をあける。

 それはそうだろう、世界征服だよ。今時子供向けの特撮番組でも出てこないぞ、そんな設定。

「少し語弊があるかもしれませんが、そのとおりです」

 ブリュンヒルデは、表情を変えずに言った。

「マジデスカ?」

 あまりのことに棒読みのセリフがもれ出る武人。

「マジとはどういう意味でしょうか?」

「本気とか本当にという意味よ」

 美雪がブリュンヒルデに説明している。

「事実です武人様。正確には増えすぎた人類を減らして、選ばれた人間で新たな世界を作る。ですけど」

「誰だ? そんな馬鹿げた事を考えたやつらは?」

 当然の疑問をブリュンヒルデにぶつける。本当に馬鹿げた話だが、考えた連中は本気で達成しようと動いているだろう。

「そこまでは分かりません。深水博士でもそこまでは掴めなかったようです。最悪、美雪さんのおじい様がかかわっている可能性すら、捨てきれません」

 美雪の爺さんには、美雪の両親には内緒で俺も何度か会っている。大企業の会長とは思えないような好々爺ぶりだった、それはもう美雪のことを目に入れても痛くないほどの溺愛ぶりだったし、一緒にいた俺にも随分よくしてくれた。あの人が関わっているとは考えたくない。

「美雪?」

 横を見ると美雪の顔が真っ青だ。

「た、武人、私、どうしたら」

 動揺する美雪の肩をつかむ。

「落ち着け、まだお前のじいさんが関わっていると、決まったわけじゃない」

「そうだよね、武人。まだ決まったわけじゃないよね」

 ふと足元を見るとノームが心配そうに美雪を見上げている。武人はノームを抱き上げ美雪のひざにちょこんと座らしてやると美雪はノームをギュッと抱きしめた。ノームも美雪になされるがまま静かにしている。武人はブリュンヒルデに向き直った。

「ブリュンヒルデ、君達9体のヴァルキューレがそろえば、それは可能なのか?」

「戦乙女の槍が完成してしたら可能でしょう。それに簡易量産型の計画もありましたから」

「くそ、爺さんは何でこんなものをそんな物を作ろうと……」

「それは違います! 深水博士は、私達を惑星開発用に作ったのです。それを軍事転用して、自分達の計画に利用しようとしているのは、アースガルド上層部に巣食う連中です」

 淡々と話を続けていたブリュンヒルデが、初めて声を荒げる。

「惑星開発……」

「はい。惑星をテラフォーミングするのには長い時間が必要です。そんなところに人類を送り込むことなんてできません。ですから、私達Dollがテラフォーミングを行い、人を迎え入れる。それを目的としてヴァルキューレシリーズは開発されました。私を除いて……」

「君を除いて?」

 武人は鸚鵡返おうむがえしに聞いた。

「はい。私の開発目的は彼等の計画、ラグナロックを阻止すること、姉達を破壊することです」

 ブリュンヒルデはそう言って目を伏せる。本当に人間と変わらない反応をする。

「どうして、君はここに?」

「深水博士が、そう望んだからです。博士の行動に彼らも気がついていました、私は間一髪で逃がされ武人様に託されました。私には厳重にプロテクトが施されています。マスターの命令無しでは、戦うどころか自分の身すら守れないほどのプロテクトです」

 淡々と話すブリュンヒルデ、しかしその表情は悲しげだ。しばらく沈黙のときが流れた。そして……

「武人様はマスターとして私と一緒に戦うことができますか? 後は、武人様の決断次第です」

 ブリュンヒルデは瞳を閉じ何も言わない。

 武人も口を開かない。重い空気が流れた。




「じいさん、何のつもりだ?」

 武人はリビングで一人、呟いてみた。美雪達は今頃、夢の中だろう。気がついたら日付が変わっていたので泊まっていくことになったのだ。そのときに、美雪の両親ともまたひと悶着あったのだが、ちょうど日曜日だしさっさと誤解は解いておかないといけない。

 Dollが夢を見るかどうかは分かっていないが、公式的にはバイオコンピュータを使用したタイプは見るらしいという事になっている。ノームとヒルデはどんな夢をみるんだろう?

 頭の中がぐちゃぐちゃだ。世界征服。選ばれた人間だけの世界。三流のSF映画じゃあるまいに…… しかも、希望を託されたのが、ただの高校生ときたもんだ。

「武人」

 ふいに名前を呼ばれて振り返ると、美雪が立っていたが武人は目をそらした。

「眠れないのか? 美雪」

「うん。武人も?」

「いや、少し考え事していただけだ。もう寝るつもりだったのだけどな」

「少し良いかな?」

「いいけど、ひとつ頼みがある。服を着てくれ、その格好のままだと…… なんだ」

 武人に言われて美雪は自分の格好を思い出した。下着の上に寝間着代わりの大きいサイズのワイシャツ一枚。

「ごめん。着替えてくる」

「そうしてくれ」

 武人は美雪がリビングから出て行くのを確認してから、ホットミルクでも作ろうかとキッチンに立った。




 翌朝、いつもより遅い時間に武人が起き出すと、テーブルの上に朝食が並んでいた。

 トーストに、オムレツに、サラダに、コーヒー。

「武人、おはよう」

 美雪が微笑んだ。昨夜、落ち込んでいたのが嘘のようだ。結局あの後、とりとめのない話で時間をつぶしただけだったのだが。

「ああ、おはよう。うまそうだな」

「うん、昨夜のお礼」

「何もしてないけどな。それに俺の方こそ礼を言わないとな」

「えっ?」

「なんとなくさ、美雪と話して頭がすっきりした。ブリュンヒルデいるか?」

 武人が名を呼ぶとノームをおもちゃにして遊んでいたヒルデが動きを一瞬止めたあと、武人に向かって、うやうやしく一礼する。

「はい、武人様」

「君と一緒に戦うよ。君のマスターとして」

「分かりました。マイ マスター」

 ブリュンヒルデは、微笑みながらまた一礼した。


世界制服ですか?

いいえ。世界征服です。制服でどうしろと…… コスプレ?

とまあそう言う訳で、いまどき世界征服ですよ(笑

作中で武人もあきれていましたけど(笑

日本転覆ぐらいのレベルでも良かったのですけどね。大風呂敷を広げて見ました。

まあ、カルトの宗教集団が考えそうな気もしますが、そんなことを考える人たちは今や絶滅危惧種です(笑


そういう敵を出しておいてなんですが、世界征服を考える人の思考など、想像も付きません(笑

このお話が無事完結できるのか今から心配です。

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