プロローグ
そのうちに執筆が追いつかなくなるのは見えているのですが、また新連載です。(これで3本目)
月1,2回の、のんびりとした更新予定ですが、第1話(全5節)は今月中に更新します。
タイトルですが『天駆ける戦乙女の翼』と読みます。
doll
━ 【名】【C】
1 人形。
2 《俗》
1 美しいが愚かな女。
2 かわいい女の子。
3 《米俗》 親切な人、 気前のいい人。
4 軍事・民間で使用される人型機械の総称。
「冗談じゃない。ワシとした事がセキュリティサービスの動きに今まで気づかなかったとは……」
初老の人物が焦りを浮かべながら、キーボードに向かい、なにやら打ち込んでいる。
「セキュリティーシステムに侵入。これで時間が稼げる。三柴君、行きたまえ。ヒルデはワシの孫に託してくれればよい」
「でも、博士は?」
若い女性の声がスピーカーから流れてきた。
「私は逃げぬ。やった事の償いはしなければならん」
「博士……」
「君は、昨日付けで解雇という事にしてある。孫にヒルデを託したら今日のことはすべて忘れろ」
男を置いて逃げる事に、女性はまだ躊躇があるようだ。
「君を巻き込んでしまってすまないと思う。だが、君しか信じられる者がいない」
三柴と呼ばれた女性も初老の男も言葉を発しなかった。沈黙が支配する。しばらくして初老の人物は穏やかに言った。
「行きなさい。今からセキュリティーにダミープログラムを流す。その間に行きなさい」
「はい。わ、私は博士の下で働けて幸せでした」
1台の4トントラックが動き出すのを、モニターで確認した初老の男は、キーボードのEnterキーを押す。
「無事でいろよ三柴君、武人すまない、ヒルデを頼む」
男は数年前に妻子を失い、たった一人残された家族である、孫の写真が入った銀色のロケットを握り締めながら呟いた。
新連載にお付き合いありがとうございます。
今回はプロローグのみですが、水曜日までには次話を投稿します。
では『第1話 邂逅 武人とブリュンヒルデ』の『第1節 サポセンですか?』でお会いしましょう。