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決戦は三日後〈6歳編〉

 8


 こちらの世界の空は、月と星と墨を流したような真っ暗な空が広がるだけだった。


 吊り上げ式のゴンドラ、と書いたけど十畳ほどの大きさと屋根としっかりした扉のある小さな小屋みたいなものでどういう原理なのか揺れもしない。

「…びっくりしただろう。すまなかったな、連れだす計画がかなりずれ込んでしまって」

 話を聞くと、今回の飲み会は私を連れだすためのエサだったらしい。

 死なない程度に、酒の中に睡眠薬を混ぜて飲ませたんだって!

 里中の、飲み会に参加していない家にも配り歩き料理にも混ぜて万全を期したらしい。

「だから、今現在里の中で起きているのはラジアータとオリュザ、そして奥方のエイレ殿だけだと思うよ」

「…!母さんも…」

 てっきり、私が軟禁されはじめた時も無言を貫いていたから父様と一緒で賛成なのかと思ってた。


「エイレ殿から伝言で、父親を恨まないで欲しいと。 君にとっては、ただ閉じ込められただけだろうが父親なりの理由があると」

 まだ、父様を許す気持ちにはならないけどいつか対面したときそう思えるだろうか。

 今考えたところで、何も分からないけど。

「…ありがとうございます。今は、これからはじまる生活を楽しもうと思います」


 それから、しばらくは私もオクトス様もお付きの人達も無言で進みうっそうとした森はかなり広範囲にわたって広がっていていた。

 …これは、早まって飛び出したりしてもすぐ捕まるかヘタすりゃ死んでたな。良かった。

「まだまだ、王都には遠いから今後の予定をサラッと話すよ。君には三日後、能力試験を受けてもらう。それまではこちらで用意した宿屋に泊まってくれ」


 三日後⁉︎

 いやいや、ちょっと早すぎやしませんかと思ったけれどちょうど試験がはじまる日付けだったらしくそれを逃すとまた一年待たないといけないんだって。

「…どうだ、頑張れそうか?」

 オクトス様からは、私を心配する気持ちが伝わってきて涙が出そうになる。

 でも、ここで泣いちゃダメだ。

 泣くなら試験に合格して、晴れて入学できてからだ。


 王都に着いたのは、完全に日が昇ってからだった。

 お城を中心に、放射線上に街並みが広がっていてところどころに見える円形の広場には緑がある。

「美しいですね」

 都市の造型にはうといけど、これは抜群に美しいわ…!

 上から見るとよりはっきりわかる。


 オクトス様は、そんな私の様子をニコニコしながら見ていた。

 空飛ぶゴンドラは、城の敷地内に静かに着地するとドラゴンは獣舎に連れられていく。

「…い、いいんでしょうか。私が城の中に入っちゃっても…」

 まさか、城の敷地内に入るとは思わずびっくりしちゃう。

 そんな目を白黒させている私を、面白いものを見たぞ!みたいな顔をしてオクトス様は見ている。


「いいに決まってるじゃないか、僕と一緒なんだよ?それに、君まだ六歳だし何か出来るとは思ってないから」

 笑いながらおっしゃいますけど、誰だってこんなとこ来たら緊張すると思うね!

 ちょっとむくれていると、オクトス様は「ごめんごめん」と言いながら必死に笑いをこらえている。

「今日は、これ以上移動するのもなんだしこのまま部屋で休んでいくといい。おい、この子の部屋を用意してやってくれ」

 そこで私はオクトス様と別れた。


 使用人さんの先導で、客間に案内されたんだけど部屋に入ってベットに横になるなりそのまま寝てしまう。

 起きたのは、次の日の朝。

 ええ、緊張してた割にはしっかり朝食は頂きましたとも!

 これから先、食べられる保証なんてどこにもないからね!


「お世話になりました」

 私は城とオクトス様に別れを告げて、あのチャナという男性に連れられて宿屋に移動することに。

 城から近く、他国の使者も泊まったりする結構重要な宿屋らしい。

「…オリュザ様はお元気ですか」

 この人は、オリュザ姉様の元・専属使用人で母親はオリュザ様の乳母だったらしい。

 幼い頃から知っているオリュザ様が、病で伏せりがちだと聞いていてもたってもいられずにいたんだって。

「そうですね。自然は豊かですし、ラジアータ兄様もいますから大丈夫だと思います」


 本人はまだまだ、ラジアータ兄様と並んで仕事ができるようになれると信じているし大丈夫じゃないかな。

 まあ、それでもチャナさんにとっては心配なんだろうけど。

「…こちらが、試験会場に到着したら試験官に渡す受験票と推薦状です。なくさないように。…あとは、試験会場まで私が送りますので当日は宿屋の前で待っていて下さい」


 私は書類を受け取り、宿屋の中で確認した。

「町歩きは自由ですが、城から一番遠い部分はスラム街なので絶対に近づかないこと。あとは…」

 色々注意する点をチャナさんに聞いて、私は身を引き締める。

「ーーー以上です」

 説明が終わり、私は宿屋で一人勉強することに。

 あらかじめ、試験に出そうなところの本や道具を用意してくれていたから期待に応えるべく勉強しはじめた。




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