ルジアーダ兄さんの帰郷〈1歳編〉
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生まれてから、一年たったけど今日は初めてくらいの勢いで家族がそわそわしています。
「おかあさん!今日は皆そわそわね〜?」
一歳を迎えて、ちょっと早いかもだけど喋れるようになりました!
父さんは、「うちの子天才!」なんて言ってるけど龍人の里にいる同じ年齢の子もちらほら喋ってるから別に天才じゃあない。
母さんは、普段ほとんど私を預けずに一人で世話してくれてるのにその日は朝からあっちへ行ったりこっちへ行ったり…。
何も教えてくれないから、気になっちゃってやっと通りかかったから聞いてみた。
「そうよ。あなたの一番上の兄が、レプティリア学園を卒業して帰って来るの。だから朝から準備しているのよ」
なんと!
あの噂で聞く天才少年が帰ってくるのか!
ルジアーダ兄さんは、私が生まれたとき国一番のレプティリア学園の学生さんだったらしくていなかった。
小さいときから、天才少年として将来を期待されてるってすごい龍人。
そんな兄さん が、卒業して家に帰ってくるってすごい楽しみ。
優しい人だといいな。
「わたしも、お手伝いしたい!」
母さんはニッコリ笑って、私にも出来る簡単なお仕事をさせてくれた。
父さんとアルヒア兄さんは、私が母さんからもらった豆のさやむきをいちいち止めに入る。
「とーさん、や!わたしのおちごとなの。あっちいって!」
あ、父さんがショックで沈没した。
しまいには、「おれもしばらく旅に出たら帰ってきてやってくれるかなあ」とか言ってる。
やんないよ?
「…あーなーた?グラースだって、立派に自分のできることをやっているっていうのに!さっさと仕事をしなさい」
やーいやーい。
父さんは耳を引っ張られて、仕事部屋へ逆戻り。
私はその間、真面目にお仕事っすよ。
「アルヒアにいさん、どうしてかくれてゆの?おしごとしなきゃめ!なんだよ」
アルヒア兄さんは、確か母さんに玉ねぎの皮むきをやれって言われてたはずだ。
「…黙っててくれよー。玉ねぎ、てがくっさくなるからやりたくないんだよ」
あっきれた、毎日母さんは料理でやってるっていうのに。
私が呆れた顔をすると、アルヒア兄さんはバツが悪そうな顔をしている。
「アルヒアにいさん、わるいこねー。おかあさんだって、まいにちやってゆのに」
やってもらえてることに感謝できないなんてサイテー。
「分かったよ…。だから、そんな顔すんなって。来月、オレもルジアーダ兄さんと入れ違いで入学なんだもん。比べられるだろうし」
両肩を落として、しょぼくれるアルヒア兄さんはちょっとかわいそう。
まあ、分からんでもないわな。
優秀な兄の後に入学したら、絶対比べられるだろうし。
でもだからって、仕事を手抜きしちゃだめだ。
「だからって、てをぬいちゃめ!なのよ?…おわったら、おてつだいいくからがんばって」
仕方ないから、私はアルヒア兄さんにやる気を出させるためにニッコリ笑って背中を押した。
まるで花が咲いたように、ニッコリ笑いながら「絶対だぞ〜!」って言いながら戻っていく。
「やれやれ…」
頑張れよアルヒア兄さん。
社会に出れば、常に比較されるんだからな。
「グラースちゃん、アルヒアが随分やる気になってたけどどうやったの?」
「わらいながら、おわったらおてつだいいくからねー。っていったらとびだしていったのー。ばかねー」
母さんはニッコリ笑って、私を抱きしめてくれる。
「グラース偉いわ。男はね、そうやってニッコリ微笑んで構ってあげるのよ?勝手に自分でやる気を出すからね」
母さん…。
一歳児に何教えてんの…。
まあ、母さんのアドバイスはしっかり今後に活かすとしてさっさとさやむきを終わらせることにした。
あれ兄さんが出てこない。




