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レプティリアの百合  作者: ころころどろん
魔女の悲しみ編
26/26

めでたしめでたし…とは行かないようです<6歳編>

24


「ーーーグラース・アルファよ。よくぞ、我々の隣人を救い我が国に利益をもたらしてくれた。礼を言う」

大広間で私は大勢の貴族と、学園の代表・友人に囲まれながら私は国王陛下から勲章を受け取った。

ちなみに、両親は出席していない。なんでかって?

それは父がそもそも、周囲にさんざん安全だからと説得されようやく納得しかかったのに私がよりによって学校の行事で誘拐された事が原因なわけ。

母は父を置いてはいけないし、激怒し今すぐに連れ帰ると息巻く父親を抑えるためにルジアーダ兄様は残らざるを得なかった。


「…どうした。そなたは、誇るべきことをしたのだから胸を張っていいんだぞ」

式典後、沈みがちにうつむく私にそばにいたカサム様が声をかけてくれる。

レプティリア王国が、他国の王族や特別に国に対して功労のあった者を歓待する部屋でモナとハトゥールやオクトス達レプティリア王国側とライエット王国改めレプティリア王国ライエット領になった人達が揃っていた。

「父は連れ戻したいと怒っていますから。手放しでは喜べません」

うすうす、私以外の家族が出席しない事で面識のある目上の人や同級生は私が両親ともめていると分かったらしい。

「…父が私に期待しているのは、勉強して名を上げる事じゃなく結婚して家を繁栄させる事ですから。それなのに、言いつけを破って学園に入学して…あげくの果てに誘拐までされてますし」


まあ、これが兄様達だったら「でかした!」と手放しで喜ぶだろうな。

ただ女には、いや私が今回同じ目に遭った事でむしろ親の言う事を聞かない悪い娘だとレッテルを貼られてしまったんじゃないかと思う。

「で、でも…。直接合って話したわけでもないのでしょう?それなら、そこまで悲観する事もないんじゃない?」

私は、モナに父親から送られてきた手紙を見せる。

文面を読んでいくうちに、モナの顔が段々と暗くなっていく。

そら、「帰ってこいグラース」から始まり事細かにどうして父親の言う事が聞けない?結婚して家庭に入るだけなのにどうしてお前が学ぶ必要がある…とか。

裁縫や洗濯、などと言った家事こそ学ばなければいけないのにそれをしていないだとか。

きわめつけは、「お前に婚約者を用意したからさっさと戻ってきて婚約しろ」という。


「これは、なんというか…悲しいわね」

モナは心底同情した、悲しい表情をする。

「でしょう。ーーーだから、私ねこのまま学園に復学は出来ないなって思うの。必死に私に勉学の道を開こうとして下さった兄様達には悪いんだけど」

かと言って、家にそのまま戻るのも違う…というか嫌だ。

「なにいってんだ!…お前が入学した事で、入れなかった者がいるんだぞ」

ハトゥールは真っ赤な顔をして、私を怒鳴りつけた。

王族の癖に表情豊かだなあ、この人。

「誹りは甘んじて受ける覚悟はありましてよ、ハトゥール殿下。ですが、そもそも私の将来は私のもので他の誰のモノでもないんですよ」

暗に王族のあんたとは違うんだ、ときっぱり言ってやれればどれだけいいか。

私は私なんだから。

「なんだその言い方は…!お、俺はお前を心配して…っ」

唇をかみしめたハトゥールを見て、さすがに言い過ぎたかなと思うけど私はもう偽って生きたくない。

あの魔女に関わってから、私も外に出て働きたいという意欲がむくむくと自分の中でわいてくるんだもん。


あれから、ハトゥールと私の言い争いで集まっていた王家の人々や友人達は徐々に減って行って解散した。私は王城の一室で、遅めの昼食を取っていた。

トントン、とノックの音とともにミメットさんが入ってくる。

「ミメットさん…。ライエットへ帰ったとお聞きしたんですけど」

功労者を応対する部屋には、ミメットは確かいなかったはずだ。

国の基盤を立て直すため、祖国に帰ったときいていたのにな。

「まだ、こちらに王様と王妃様がいらっしゃるからね。当分は往復になりそうな雰囲気だよ…。おかげで君の晴れ姿も見られなかった」

そういうミメットは、本当にすこし悔しそうな顔をしていてこの人は両親と違って祝ってくれるつもりがあるんだと思うと嬉しくなる。


「…ちょっと、君が苦しんでいるようだと陛下からお聞きしてね。僕なら、力になれるかもしれないと思ってやってきたんだ」

「苦しんでいる…まあ、そうですね」

まあ確かに、父親の無理解に苦しんでいる…かな。

あの時は両国の関係者もいたし、あまり大事にはしたくないなとは思ってた。

「サキューレという、この辺では珍しい共和国制度という形態の国があるんだが。そこに、ライエット王国出身の知人がお抱え研究者として医学の研究をしていてね。そこでなら、少ないが給料も出るし働きながら興味のある分野を学ぶ事が出来る。どうだろう、そこへ行ってみる気はないか」


共和国…?

確か、国王のいない国って事だよね…。

この世界にそんな国があったなんて驚きだった。

働きながら勉強したいと願う、私の願いにはピッタリだけど…。どうしようか。

迷ったあげく、私はミメットに「行きたい」と返事をした。

私は家を捨てる決心をした。


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