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レプティリアの百合  作者: ころころどろん
魔女の悲しみ編
23/26

再生の過程〈6歳編〉

21


「ーーー久しぶり。元気にしてた?」

飛行船は何事もなく到着し、私はハトゥールと再会した。

相変わらず、ハトゥールは生意気な顔をして私を見ていたけれど。

「お前こそ大丈夫だったのか。どうして、すぐに連絡をよこさない?…心配したんだぞ」

おやおや、随分素直だな。

けど、事あるごとに突っかかってきたことは忘れないからな?

「仕方ないじゃない、吹雪に阻まれて伝送玉も使えなかったんだし」

あの雪は、魔法的な何もかもを遮断していて伝送玉は使えなかったし。

魔女に会いに行くのが最優先だったもんなあ。

「…カサム様、どうぞよろしくお願いします」

そうと決まれば、早速受け入れのために戻らなきゃ。

国王と側近だけ残し、私が飛行船に乗り込もうとしたらハトゥールに腕をつかまれる。

「お前、また行くのか。しかも、モナにも黙ってろってどういう…」


「…あの子を通じて、家に話が行くと困るからよ。あんただって、私の実家の事情は知ってんじゃないの?」

私は今度こそ、ハトゥールの掴んだ腕を振り払った。

モナには悪いと思うけど、出来れば実家にバレるリスクを極力減らしたい。

モナの家には、アルヒア兄様も出入りしてるし…。

「…分った。引き止めて悪かったよ」

少しだけ、ハトゥールの表情を見て罪悪感を感じながら人目につかないように飛行船の中に乗りこんだ。


「…すまないね。君にあんな顔をさせて…」

出発した車内の中で、ミメットに謝られた。

見られてたのね。

まあ、あんな出入り口付近で話してればイヤでも見えるか。

「別に構いませんよ。ハトゥール様とは、単に学園でクラスが一緒っていうだけですから」

急に腕をつかまれたのには驚いたけど、元々は殴る蹴るされたりもしたしなあ。

むしろ、今だって来ないでくれると助かるくらい。

「そうかね?まあ、そうかもしれないな」

深く追求されなくてホッとする。

これから、避難民の誘導だとか器作りだとか色々やることはあるんだし。


帰りの飛行船は、ほとんど速度を緩めることなく無事にライエット王国に着いた。

広場に降り立つなり、王妃様をはじめとする人々にめんくらった。

「おかえりなさい、ミメット。それに、グラース」

口々に礼を言う、人々から離れて王妃様とニスルさんと共に城に戻る。

「避難しやすいように、今は国民全員が城の中で生活しているんです。…びっくりしました?」

どうして、城の敷地内に大勢ひとがいるんだろうと思ったらそういう事ね。納得。

一つの場所にいたら、避難の誘導も楽だもんね。

「王妃様、なんとかレプティリア王家の方々にも色よい返答を頂きました。早速、移動を開始してもよいかと」

ミメットの報告に、喜びの声が上がる。

国を捨てるわけじゃないから、戻ってこられるし結果としてはかなりいいんじゃないだろうか。


「ミメット様。飛行船の準備、すべて完了しております」

部下の報告に、満足したように頷くミメット。

ちょっと、早すぎじゃない?と思ったけど早速避難を開始するみたいだ。

私とミメットとその部下を残して、飛行船は順次上空に飛んで行く。

「…では、皆、よろしくお願いしますね。必ずあなた方が来てくれるよう祈っています」

そう言い残し、一番最後の船で王妃様とニスルさんが乗った飛行船が飛んでいく。

「行っちゃいましたねえ」

みるみるうちに、スピードを上げながら上空に飛んでいった飛行船はもう米粒ほどの大きさになっちゃった。

「そうだね。…さて、我々も仕事にとりかかるとしようかな。未来のために」


まずは、必要のない装置に流れる魔力を切る作業からスタートした。

色々手順があって、すぐには終わらないようなのでその間私は休むことに。

「んーっ、休ませてもらえて良かった…」

伸びをしながら、与えられた部屋のベットにだらしなく転がる。

なんとなく、皆真剣に作業してるから休みたいとも言えないしさあ。

そこは元日本人、やっぱり空気は読みますとも!

…と思ったら、誰かがノックしているのに気がついた。

「どうぞ。あれ?ミメットさん」

ノックの主は、朝から忙しそうに動き回るミメットさんだった。

様々な器具の乗ったワゴンを、自ら押して。

「すまないね、休んでいたのだろう?培養をスタートする準備が整ったのでね。早速ではあるが…」

ああ、私の体の一部…。

ワゴンの上には、麻酔薬や傷薬と書いてあるラベルの貼った瓶がある。


「いえ、必要なら別に構いませんよ。…ところで、体の一部ってどこを切るんです?」

ミメットによると、指の先が一番いいらしい。

麻酔をかけ、更に傷薬を塗れば元の状態に戻るんだって。

「じゃ、サクッとやっちゃってください」

私はベットに、目を閉じてもう一度仰向けに寝る。

「…ああ、すまない。では最初に、麻酔から…」

ちょうど腕のあたりに、針の刺さる感触と何かが体に入る感触がしてきた。

「…どうだい?今、君の手を握りしめているが感触は」

注射から十分ほどで麻酔が効いたみたいだ。

打たれた腕から下は完全に感触がしない。

私は静かに首を横に振った。


「そうか、では早速はじめるよ」

カチャカチャと、硬いもの同士がこすれたような金属音が数回なった。

「無事に切除完了。次は、君の指に傷薬をかけるよ。再生する時に、少しムズムズするかもしれないが、一時間ほどもすれば落ち着くだろう」

ム、ムズムズかあ…。

なんだか怖いな、と思っているとシュッという音がした。

「…すべての行程は終わったよ。あとは、部下を一人部屋に残していくから何かあったらその者に言ってくれ」

頭を少し上げると、確かにいつの間にか人が立っていた。

私と視線を合わせて、会釈をすると静かにその場に椅子を持ってきて座っていた。


これで、解決までもう少しだ。

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