終わりが見えない〈6歳編〉
19
どこまでも続く、雪と氷と石っころの世界にはまるで果てがないように思えた。
「ここが…」
三日三晩走り続けて、私達は森の入り口にたどり着いた。
なにしろ、広大過ぎて自分達じゃ見通せないほどで本当に森の中心部まで行けるのか心配になる。
そして、何より驚いたのは雪と石っころの世界から急に緑の生い茂る森が出現したことだった。
「ーーーなんなんですかねぇ、これ」
魔法的な作用だろうけど、線でも引いたみたいにぴったりと境界があって不思議だった。
「…分からないな。生物の痕跡は相変わらずないが」
ミメットの言葉を皮切りに、私達は森へ分け入った。
広い道路がないせいで、すべて荷物を人力で運ばなくてはならず部下の人達は大変だ。
別に力自慢じゃないけど、多分人間の男性よりは力があるよ。
荷物持とうか?
…と、言ったんだけど非常時のために是非フリーでいて欲しいって。
「協力は嬉しいけど、君にまで荷物を持たせるわけにはいかないよ」
まあ、最悪荷物を捨てて車に戻ればいいわけだし。
代わり映えのしない、同じ景色。
雪と氷の世界から、うっそうと茂った森に変わっただけだ。
「ーーー何を伝えたいのかなあ」
何千年も、たった一人で暮らしている魔女。
それだけ長い間生きていたら、もう龍人という意識もないんじゃないだろうか。
ただ、王子を失った悲しみを誰にも分かってもらえずに泣き続けているのかなあ。
「…だからこそ、我々は会いに行く必要があるんだ。魔女が何を思っているのか」
ミメットは歩きながら、私のつぶやいた声に答えた。
「ミメット様、そろそろテントを張りましょう。この広場が見晴らしもよく、比較的安全なのでは」
という部下の進言に従って、テントの設営がはじまったんだけど皆張るの早い!
あっという間に出来ちゃった。
「我々は、捜索隊だからね。毎年毎年来ているから、随分設営も早くなったよ」
そうか、森までは来てないけど手前の雪のとこまでは来てるもんね。
練習なんていくらでも出来るか。
そんな感じだから、学園のキャンプと違ってご飯の支度も早いし手伝いもいらなかった。
手早くパンを入れて三品も出来て、しかも美味い!
「家庭の味って感じで美味しかったです!」
こちらの地方は、基本ずっと寒いからスープもとろみがついていていつまでも暖かく食べられるように工夫してあったりした。
「そうか、それは良かった。さて、しばらく休憩しよう」
片付けの後、椅子に腰かけて空を見上げる。
今更な話だけど、両親にも連絡がいってるだろうし帰る事が出来ても家に連れ戻されそうな予感。
「早く独り立ちしたい…」
今の家族にも、もちろん親愛の情はあるんだけどさ。
やっぱり、根底には日本人の加山友美としての意識があるからちょっと違和感がある。
「独り立ちしたいのかい?…親御さんが許すなら、うちに来て欲しいくらいだよ」
人材はいくらいてもいいからねー。
自分が優秀だとは思わないけど、それもいいかもしれないな。
「アハハ、そうですね。父に連れ戻されなければ、是非お願いします」
まあ、何にせよ帰った時の事が怖いなあ。
私の言葉に、何かを考え込むミメットさん。
「実は、私学園に入学した時も父に反対されちゃって兄とその友人の手を借りて黙って出てきたんですよね。だから、帰っても学園にまた通える保障もないんですよね」
まあ事実だもんねー。
とりあえずはこの場を収めることが最優先だけどさ。
「おやすみなさい」と、挨拶をして私は寝る事にした。
翌日、再び森の中心地に向かって歩き出した。
行けば行くほど、木の生え具合が密になり歩きにくくなってくる。
「歩きにくいですね…。大丈夫ですか」
ナタを貸してもらって、歩きにくい下枝を刈りながらの歩きはさすがに私でも疲れがたまってくる。
私とミメット以外は、皆肩で息をしていて辛そうだ。
○○探検隊〜。って歌が似合うよ。
かなり進んだとは思うけど、何せ木が茂っているところを進んでいるからあまり実感がわかない。
でも、進むにつれて目の前に何かが見えてきた。
あれはなんだろう?
○○探検隊〜は、例のメロディーでどうぞ。