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レプティリアの百合  作者: ころころどろん
魔女の悲しみ編
20/26

番外その②・誘拐事件

【注意】ハトゥール視点

僕とモナは一睡もしないまま長い時間を耐えていた。

これほどまでに、劣悪な環境にいたことなどないから一瞬うとうとはしてもすぐに目がさめる。

「どのくらい時間がたったんでしょうね…。私達がいなくなつたこと、まさか伝わっていないんじゃ」

モナが疑心暗鬼になっても仕方ない。

自分も、ここに入れられてどれほど時間がたっているのか分からない。

外が見えないから、陽の光で推測する事も出来ない。


「そんな事はないだろう。…仮にも国一番の学園なんだから」

大体、野宿しても安全だからあの場所で強化合宿をしていたんだ。

貴族が大勢通う学園で、何の安全対策もされていないのにこんな事をするはずは…ないだろう。

静かに目を閉じたその時。


ゴゴゴ…と、低いうなるような音のあとすぐ近くで魔法を打ち合う気配がする。

「ハトゥール様…‼︎」

モナも何が扉の外で起こっているのか、想像もつかないんだろう。

「おいっ!あいつらを…ウワアアア‼︎」

複数の走る音と叫ぶ声、そして扉の前でひどい衝撃が加えられて鉄製の扉がこちらに飛んできた。

「っ‼︎」

固定されていないのが幸いし、何とか受けた衝撃は少なくて済んだ。

「ハトゥール!モナ嬢!無事か!」

恐る恐る目を開けると、そこにはオクトス兄様が立っていた。


助かったんだ…。

情けないが、安堵の気持ちで涙が出てくる。けど。

「兄様、僕達は縛られていただけで無事です。けど、グラースが…!」

今でもいけ好かない奴ではあるが、でもクラスメートには違いない。

奴隷として、売られてしまったと兄様に告げて僕は気を失った。


次に目が覚めたのは、城にある自分の部屋だった。

覚醒と同時に、ひどい頭痛と吐き気がして震えがとまらない。

「良かった…!ハトゥール!」

母上が、目に涙をためて自分を見ている。

奥にはオクトス兄様と、渋い顔をしたカサム兄様が立ってこちらを見ていた。

「王妃様、申し訳ありませんが時間を頂けませんか。ハトゥールには、聞かねばならぬ話が山とあるのです」

そうだ。

僕には兄上達に話さなきゃならない事がたくさんある。

「何を言っているのです⁉︎我が子は、たった今目を覚ましたばかりなのですよ⁉︎そんな子供に目を覚ましたからすぐに話を聞きたいなどと!」


バラに例えられるほど、美しい僕の母が今は顔を真っ赤にして兄様達に怒りをあらわにしている。

兄様達を押しのけ、母上が僕を王位に付けたがっているのは周囲には知られた事だったけれど今はそんなことどうでもいい。

「母上、いいのです。…早くしなければ、助けられるものも助けられなくなる」

母上付きの使用人に頼み、部屋から連れ出すように命じる。


「モナの様子は、どうですか」

自分と一緒に捕まって、きっと深く傷ついているに違いない。

そう思ったのだけれど、僕が眠っている三日の間毎日学校に通っているという。

「ーーー周囲も止めたらしいが、本人が頑として受け入れなかったそうだ。…グラースも行方不明のままで、家にいる方が辛いと」

身分のせいで、おもねる者ばかりしか周囲にいない中で初めて出来た友達。

とても貴重なのは、モナにとっても同じだったのだ。

いなくなって、初めて自分がモナと同じようにグラースを仲間と認めていた事を感じた。

「捜索するにも、モナ嬢は買ったというエルフを見ていないというし……。その様子では、お前も直接見たわけではないのだな?」

頷くと、兄様達からため息が漏れる。

「現状手がかりが全くない。犯人達は手がかりも残していないし、第一抵抗した際に全員……」

魔法を扱える者がいたというのも驚きだったけれど、魔力を吸い取る腕輪があった以上心得があっても不思議じゃないか。

「カサム兄様、オクトス兄様、お願いします。…あいつを助けてください、僕も出来る事なら何でもします」

自分では何一つ出来ない悔しさに、僕は歯噛みするしかなかった。







次回は主人公視点に戻ります

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