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レプティリアの百合  作者: ころころどろん
レプティリア学園編
14/26

うっきうき!強化合宿!〈6歳編〉①

14


「よーし、お前ら。長期休暇前の合宿、参加するやつはこれに保護者のサインもらってこいよ」

初夏の陽気で、むわっとする中クラス全体に紙が配られて読むと『強化合宿』と書いてあった。

「Aクラスはまあ…どっちでもいいぞ。ただし、使用人は連れて来れねえからそのつもりで。あと合宿は一週間な」

強化合宿…。

まあ、林間学校みたいなもんだろうな。

「グラースは参加しますの?」

「どうだろうなあ…。私は別に、里で料理とか狩りで取ってきた獲物さばいたりとかしてるからね。今のところ出る理由がない。モナはどうするの?」

そもそも、レプティリア学園の生徒の大半は一人で家事なんかしたことないような貴族や大商人の家とかの生まれだからあえてやるんだろうけど…。


うちは別に貴族じゃないし、生まれた時から自分のことは自分でするっていう家庭だったしねぇ。

「もちろん出席よ!だって、学校の行事でもないと野外で寝るなんて出来ないもの。ねぇ、グラースも参加しましょうよ!」

「…うーん、じゃあ参加しようかなあ。ハトゥールは?どうする?」

まあ、普段の生活と行事は違うしね。

「僕も参加する。こういう機会でもないと、料理などまず出来ないからな」

一対一で戦ってから、私とハトゥールの関係は親しく話すほどではないけどだいぶ距離は縮まったと思う。

たまにはこうして日常会話を交わしたり、教科中には協力しあったり。

「へぇ、あんたは不参加かと思ってたよ」

あー、そうか。そうだよねえ。

よほどの非常事態でもない限り、王子自らテントの設営なんてやらないだろうし。


「ヤァスは?参加する?」

私が聞くと、ヤァスは少し考えてから「参加する」と答えた。

「参加する…かな。あまり、出たくはないんだけど。だって、森って虫とか動物とか出るだろ?嫌いなんだ、ああいう生き物」

お、おう。

見た目、熊とほとんど変わんないのにそんなに虫が嫌いなのか…。よく今まで生活できてたな。


学校が終わってから、私は寮に帰って合宿の話をアルヒア兄様にしてみた。

どうやら、兄様は仲の良い同学年の友達が軒並み不参加で今年は参加を見送ったとか。

「うらやましいよ。あー、僕も参加したかった!あ、でも父さんがサインしてくれるかが問題だよな。グラースの場合は」

「やなこと思い出させないでよ…」

そうなんだよね。

飛び出すように出てきたから、父様がサインなんてするはずないだろうし。

「貸せよ、俺の名前で送っといてやる。そしたら、お前のやつだって分からないだろ?」

兄様!マジ天使。

確かに、紙には何年のかは書いてないから分からないね。


狙い通り、許可証はサインしてもらえた。

兄様は行かないのに、騙しているような気がして仕方ないけど学校行事だしね。

「グラース!行きましょ?」

紙を提出して、私はモナに引っ張られて彼女の自宅まで行くことになった。

なんでかって?

彼女が強化合宿用の洋服を作りたいから、見立ててくれないか?って。

「…おっきな家ね」

モナの自宅は、里の長である父様の家よりも何倍も大きく庭も整備されていて正直この中に入るのがおっくうになる。

「そう?でも王城よりは小さいわよ」

いやいや、あれと比べるのが間違ってるって…。


中に入ると、三人の使用人がお出迎え。

この使用人は、モナに付けられていて学校以外のどこでも交代で付いて行っては護衛をしたりするんだと聞いた。

「おかえりなさい、モナ。そちらは、グラースちゃんね?はじめまして、母親のモリーンよ。うちの娘がごめんなさい。わがまま言ったみたいで」

入った部屋には、仕立て屋とモリーンさんがいて何やら紙を見て話し込んでいる。

「いえいえ。モナにはよくしてもらっていますから」

心からそう言うと、モリーンさんはニコニコしてくれた。

でも実際、モナがいなかったら学校生活もかなりつまんないものになっていたと思う。


「いいえ!お嬢様には緑色が一番お似合いになると思いますわ!」

服を選びはじめて、三十分ほどたったんだけどモナの母親と仕立て屋は楽しそう?にこのデザインがどうかとかいいはじめた。

「私、いらなかったんじゃない?」

自分の服買うでもなし、この場に私がいる必要ないと思うんだ。

「何言ってるの?あなただって、一着作るのよ。アルヒアに頼まれてるの。女の子だから少しくらいオシャレしたいだろうって」

どうも、今回の合宿に行くことをルジアーダ兄様から聞いた母様が一着分のお金を送ってくれたらしい。

「いやあ…既製品で十分よ。第一、オーダーメイドの服なんて高くて合宿に着て行く気になれないわ」


だけど、そんな私の言葉を予想していたのか仕立て屋さんは予算内で収まるような自社の既製品をいくつか持ってきてくれていた。

「これはうちの新人針子が、練習用に作った服なんですよ。ですが、縫製はこちらでチェックしておりますし普段は服屋に卸しているものなので品質は良いと思います」

手に取らせてもらうと、縫い目も確かにしっかりしているし何着か買えてお得かも。

私はいくつかのチュニックとズボン、それに下着類も合わせて購入した。

「モナ、ありがとう。お母様もありがとうございました。服は制服で行くつもりだったので助かりました」

いやいや、まさか卸し値価格で新品の服が買えるとは思ってなかったし助かっちゃったかも。


「礼なら、あなたのお兄さんに言うのね。うちは娘のものを買っただけだから」

それから私は、モナの家でお茶飲みながら三人で会話した。



やはり学校と言えばこのイベントは欠かせません…。

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