第七話
私のは帰るとき、兄さんと会うためCARPでメッセージを送っていた。
指定の場所に行ったが兄さんはいなかったので待っていると少し後に兄さんが来た。
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side 柏原 祥介
俺は掲示板も見ず、普通科G1のFクラスに向かう。結衣も俺が向かったと考えているだろう。Fクラス教室は普通の教室だ、机が少し違うが。
机には埋め込め式のPCが付いている。
それに、CARPの本体を接続した。
たぶん後で説明されるだろうが、先にやってもいいだろう。
ネット環境もあったのでCARPでネットを検索して行く。
動画なんかを見ながら過ごしていると、ホームルームが始まった。
気の弱そうな男性が入ってきていて、話を始める。
「えー、高校一年の普通科G1のFクラス担任の福田です。教える教科は古典です。いつもは国語科室にいます。最近は古いバイクを弄るのが趣味です。」
バイク弄りが趣味ってなんだよ。
俺は質問したい衝動にかられたが耐える。
「はい、では自己紹介からやって行きましょう。えー、南沢啓太くん。」
「南沢啓太です。趣味は特にないですが、彼女が欲しいです。」
「「「俺(僕)も欲しいっ!!」」」
まさかの野太い大合唱だ。
そのあとは勝手に生徒が自己紹介して行く。
「酒井隼です。・・・
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「・・・・新島八雲。非必修科目では一位。」
非必修科目って、結衣に唯一勝った人間ってことか!
他の奴もそう思ったらしく、
「マジかよ、990点代の化け物に勝ったのかよ。」
「間違えたのその科目だけだけど、それも90点代行ってるからな。」
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俺の番が来たので立って自己紹介する。
「柏原祥介だ。部活は特に決めてない。趣味は読書とゲームだ。」
「「「イケメンは逝ってよし!!!」」」
イケメンだと?このレベルになると凡人の判断すらできないのか?
まあいい。
その後も何度か自己紹介が続き、解散と思いきや課題の収集だ。
課題を忘れたらしき男子が悲痛な声で叫んでいる。
ん?ヤバい昨日終わらせずに寝た気がする。
カバンから課題のノートを取り出すと課題は終わっていた。
しかし、自分の字だからこそ分かるが、これは俺の字ではなかった。
たぶん結衣がやってくれていたんだろう。
俺が大きく息を吐く。
「ふーっ、よかった。」
そんな俺の心配を知ってか、課題を後ろから来た生徒がようやく取って行った。
帰る前に結衣からメッセージが来ていた。
俺を直接会いに来ないのが、ありがたい。折角、俺が結衣の兄だとばれていないのだ。
「おい、柏原。一緒に帰ろうぜ。」
一人の積極的な男子が声をかけてくる。
「いや、今日は用事があってな。すまん。」
そうして、俺は足早に教室を去った。
***
待ち合わせ場所では結衣がすでに待っていた。
「待ったか?」
「いや、あんまり待ってない。」
「そうか。俺が言ってもお世辞に聞こえるかもしれないが、答辞よかったぞ。」
「そう?ありがとう。いこっ」
結衣は俺の手は引かないが、引きそうな勢いで歩き始めた。
*****
side 柏原 結衣
私は兄さんと一緒に家に帰った。
制服から普段着に着替えた。入学式の報告(?)をするよう、母さんに言われていたので、国際電話で電話する。
テレビ電話なのでカメラの前で兄さんとソファに座る。
テレビに映ったのはどことも知れないが、とても豪勢な部屋で、赤地に金の装飾というなんともリッチそうな(実際リッチだが)ソファに男女が座っている。
二人とも実際の年齢より若く見える。
特に母さんはもう三十代になるはずだが、二十代の若さを保っている。かなり美人だ。
男性は少し年老いている。しかし、悪い年の老い方ではなく、味が出るような憧れそうな老い方だ。
『学園はどう?うまく行きそう?』
「まだわからないです。」
私は素直に答えた。
『祥介は?』
「俺は、先輩に誘われた部活に入ろうと思います。」
初耳だった、春休み中私に言わずに外出したときに行っていたのだろう。
『どんな部活なんだ?』
父さんが聞いた。
「写真を撮ったり、編集したりする部活です。」
写真に興味があるのかな・・・?
「母さん、あとで、兄さんに聞かせられない話があるので時間をとってくれませんか?」
兄さんは少し驚いている。
『・・・え?、いいけど。』
母さんと父さんも驚いていた。
その後少し兄さんも混ぜた話をした。
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兄さんが部屋から出て行った。
罪悪感があるがこのあとすることを考えると仕方ない。
『なんです、話って?』
「はしたないのですが・・・。」
服を脱ぎ、下着姿になる。
『・・・え?』
そこには、少女になった私が立っている。
「TS病というらしいです。」
私はいつまでもそんな格好をしていられないので、服を着た。
「もちろん、私は柏原結衣です。兄さんにはまだ言う気になれないので、今回は戸籍とかの処理をお願いしたくて・・・。」
『手術したわけではないの?』
「はい、変化を記録した写真もあります。まだ、初潮は来ていませんがたぶん子供も産める体だと思います。」
『法的な問題のために必要になるかもしれないから送っておいて。』
「はい、わかりました。ありがとうございます。」
その後、少し雑談をした。
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『TS病って言う病気なんだし、こういう時ってお大事にって言うのが正しいのかしら?』
『TS病は病気じゃないよ。』
父さんが訂正する。
『じゃあ、こっちで戸籍とかはなんとかするから。祥介を呼んできて。』
写真のファイルを添付したメールを母さんたちに送った。
私は兄さんを呼びに行った。
兄さんはすぐに降りてきた。
『元気にやってるみたいだけど、何かあったらすぐ電話してね?』
私たちに、再三電話をするよう言って電話は終わった。