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「洋子はロックがどこで生まれたのか知ってるか」 


 「アメリカでしょ」


 「へぇー正解だ。ビートルズやザ・ローリング・ストーンズを輩出しているからイギリスだっていうやつも多いんだけどな。1950年代に黒人音楽と白人音楽が融合してできたのさ。だけど、有名な話があってエルヴィス・プレスリーが駆け出しの頃、腰の動きが卑猥と中傷され、テレビでは下半身を映さないで放送したんだ。自由の国のはずであるアメリカがだぜ。いまじゃ考えられないよ」


 「でも、昔アメリカは奴隷制度や南北戦争で国全体が退廃して、そこから自由が叫ばれたんでしょ」


 「そうだ、リンカーン大統領の奴隷解放宣言は有名だよな。でも、奴隷制度を守ろうとして敗れた南部でカントリーやジャズやロックンロールが発達したのは皮肉な話だ。日本でもひどい話があるんだ」


 「日本でも差別があったの」


 「いまでは日本人の心の歌といわれる演歌だって、そのルーツは弾圧に対するカモフラージュから端を発したんだ」


 「なにをカモフラージュする必要があったの」


 「明治時代に自由民権運動が導火線になって、集会で演説することが取り締まられた。そこでみんなで集まって演説するのではなく、歌をうたったんだ。これが演説歌、つまり演歌の起源なんだ」


 「大介、あなた頭がいいんだからすこしは学校勉強に関心をもったら」


 「その話はあとでしよう。話を戻すけど、演歌をここまで広めたのは古賀政男の存在が大きいんだ」


 「知らない名前だわ」


 「昭和初期に活躍した人だから知らないのは当然だけど、古賀の功績は日本の代表的なわらべ歌や民謡に使われた音階に目をつけて演歌に反映したことだ」


 「へぇー、それじゃ演歌を作ったのは古賀政男なの」


 「うん、人によっちゃそういう人もいる。この音階は4度と7度の音をはずした(ヨナ抜き音階)ペンタトニック・スケールというんだ」


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