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選択 1

 

しばらくの間、為すすべもなかった大介。


女性に告白された経験など全くなかったから洋子の言葉に実感が追いつかない。


隣りで功一は上半身を曲げてうなだれていた。


説子はこの日が来ることを知っていたのだろう。


洋子を見つめ真顔になっていた。


 「功一はクラス委員で勉強もスポーツもできるからこのクラスの女の子はみんな憧れてる。だから、わたしじゃなくてもすぐにいい人は見つかると思う。だけど大介は授業中ボーッとしてるし、先生に差されても答えられないし、スポーツだって得意じゃない。ただ音楽に夢中な人。わたしが見守っていないとどこへ飛んで行ってしまうかわからない。だから彼だけを見て生きたいの、わかって功一」


 「ああ、洋子の気持ちはよくわかったよ。だけど、俺は大介の気持ちが知りてぇな。本当に香織のことを忘れることができるのか」


 「ちょっと待てよ、そんなこと急にいわれても責任をもてる発言なんてできねぇよ。それに褒められてねぇし」


 「大介、洋子は1年の頃からあなただけをずーっと見てきたのよ。田代香織のどこがいいのよ。ちょっとかわいいだけじゃない。まともにしゃべったこともないのによく2年間も思い続けられるわね、変態」


 「おい、説子いい過ぎだぞ。向こうに責任はねぇよ、俺が勝手に思い続けただけなんだからな」


 「あー、やだやだ煮え切らない男なんて最低よね。女に告白させてなんにもいえないなんて男の風上にも置けないわよ」


 「わかったよ、洋子。携帯のアドレスと番号交換しようぜ」


 「本当、大介」


 「香織のことは忘れる、二言はねぇよ」


 「男らしいじゃん」


 「説子、おまえにいわれたかねぇよ」


 「大介、おまえハメられたんだ」


 「えっ」


 「二言はないんでしょ」と確かめた説子の表情にくもりがなかった。


 「あーあ、なんかいまはもうさっさと家に帰ってボズ・スキャッグスの『Simone』でもコピーしたい気分だ」

 

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