はじまり 5
「愛情の深さより大事なことがあるんじゃねぇか」
「なにがいいたいのよ」
「一番大切なことはどれだけ相手を信頼できるかどうかさ。愛情なんてつかみどころのない霧みたいなものさ。おまえはその霧が浅いか、深いのか本当に自分で判断できるのか。すぐに冷めちまうこともあるんだぜ」
「よっぽど好きじゃなかったら躰なんて許さないわよ」
「まぁ、待てよふたりとも」と大介が間に入った。そして、
「俺たちはまだまだ経験不足なんだ。世の中男と女しかいないのに、その個性といったら十人十色ときている。一概に愛情をこうだとはいいきれないし、ましてや信頼関係も当人同士しかわからないことがある。いまは他人のことをどうこういうより、自分の考え方を確かめる時期じゃないのか。そして問題にぶち当たったら、そのときはみんなの意見を聞けばいい。自分の意見ばかり押し通したら答えなんて出てきゃしねぇよ」
「わたし間違ってないもん」
「俺の人生じゃないからな」とふたりとも素っ気ない。
すると洋子がその問題が終わるのを待っていたかのように、
「大介、今日誕生日でしょう。おめでとう」
「なんだよ、洋子もそれ知ってるのかよ」と功一がやっかむ。さらに、
「わたしからプレゼントがあるの、ハイ」
「なんだよ、今度は消しゴムかよ。みんな夢がねぇな」
「そうとばかりはいえないわよ。わたしの中ではいっぱい夢がつまっているんだ。ねぇ大介、誰かの存在をあなたの心の中から消してくれたら、わたし考えてもいいことがあるんだ」
「おい、ちょっと待て洋子。それはどういうことだよ。おまえ俺の気持ち知っているはずだろ。大介が誰を消すんだよ、ふざけるなよ、なに告っているんだよ。大介が香織のこと消せるはずないだろ、2年間も思い続けているんだぞ。そんなところに割り込んだところで苦労するだけじゃねぇか」
「ゴメン功一、わたし、大介じゃないとだめなの」
「うっそだろー」と功一は頭を抱えた。




