はじまり 4
「大介、おまえそんなこといっているから女にモテないんだ。そんなまわりくどいことを考える暇があったら、もっと女が喜ぶことを考えたらどうだ。A組の田代香織が好きだったら好きといえばいいじゃないか。それでお互いがいい関係になることのなにが悪いっていうんだ。下心のねぇ男がいるか、デリカシーで女を満足させられるのかよ。そんなことをいってるからおまえはいつまでたっても童貞なんだ」
「おまえだって人のこといえないじゃないか」
「童貞がどうしたのおふたりさん」という突然の声にふたりは血の気が引いた。大介はあわててエロ本と煙草を隠し、振り向いた先には霧島洋子が立っていた。一緒にいるのは仲のいい大島説子で、大介と功一は教室の扉が開いていたことをすっかり忘れていた。
「なんだ洋子と説子か。大介がしたい、したいっていうから相談にのってやっていたんだ」
「おい、おい、それはないだろ、功一」
「童貞がしたことってなに」と大島がとぼけながら問いかけた。
「決まっているじゃねぇか、女を抱きたいんだよ。大島ちょうどいい、大介の相談にのってやってくれねぇか」
大介はあわてて、
「大島、冗談だからな。なにもいわなくていいぞ」と切り出したが無駄だった。
大島説子はうつむいて床に視線を落とし、表情はみるみるうちに白くなった。躰全体をユラユラと揺らし、明らかに動揺しているのがわかる。
「わたし、そんな安物の女じゃないから」
「へぇー、じゃあ安物と高価はどこで区別するんだ、説子」
「愛情の深さよ」




