試練 3
チャイムが鳴り昼休みになった。するとユキチは大介の方を向いて、
「おい大介、キーボードとベースを紹介するから顔を貸してくれ」
「昼飯は?」
「そんなの後でいいよ。もう連中には昨日のうちに話をしてあるんだ」
「わかったよ」と大介が答えると、ユキチはさっさと歩いて隣のA組の教室に入って行った。そして扉から数えて2列目の1番後ろの席に座っている細身の華やいだ雰囲気の女の子を肩を叩いた。
「ユカ紹介する。こいつあたいと同じB組の大介。ギターでうちらのバンドに入るからよろしく頼むよ」
「ハーイ大介、私はベースの小西ユカ。ところで名字はなんていうの?」
「キリハラ、桐原大介さ。こちらこそよろしく」
「ユカ、あたいたちのライブ演奏のカセット持ってきてくれた?」
「あいよ、いわれた通り『BURN』のMDも持ってきたよ」
「サンキュー、これで大介に研究してもらわないと…」
「リッチー・ブラックモアの演奏なんてしたことがないから自信がないな」
「大介なら大丈夫さ。あたいたちも受験があったからあまり練習をしていないし、レベル的にもまだまだのところがあるんだ」
「ユキチが控え目だとなんか怖いな」
「大介それ当たり。ジョンもユキチに褒められた途端に階段を踏み外して、全治2週間の捻挫をしたことがあるんだ」
「デタラメだよ、そんなの」
「おいおい、ジョンってジョン・ロードに関係ある話か?」
「あーわるい。キーボートの松本実のこと。ジョン・ロードばりの凄いテクニシャンだからそう呼ぶのさ。ところでユカ、あなたのクラスにドラムをやっている奴はいないの」
「新しい環境になってまだ2日目でわかるはずないじゃん」
「片っ端から声をかけてみてよ。早く見つけないと安心できないし…」
「そうだよな、ここの校長もなにを考えているのかな。新入生に1か月の短期間で新しいバンド組んでライブをやれなんて、それ事態無理があるよな」
「大介、それは時間がないことに意味があるのよ。なぜなら、あたいたちもこれから先必ずなんらかの壁にぶつかる日が来る。その時のために与えられた条件の中で最高もパフォーマンスをすることが大切なの。そのために人は勇気をもったり、手段を選んだり、チームワーク鍛えたりする。そういう試練を乗り越えるためのトレーニングなるの」
「そうだよな。完成度の高いものを求めるなら夏休みにやった方が練習もできるし、チームワークだって高まるからな」
「じゃあユカ、あたいたちはジョンのところへ行くから。あいつまだ教室にいるかしら…」




