出会い 3
次の日、大介は職員室を目指して廊下を早足で歩いていた。約束の本を2冊借りるためである。すると突然目の前を黒い人影が立ちはだかった、御木本功一であった。
「よう大介、洋子とはうまくやっているのか」
「しばらく声をかけなくて悪かったな」
「無様な姿を晒したからな」
「いうほどひどくなかったさ。ストレートでおまえらしかったよ」
「ふん、心から惚れた女にフラれたんだ。かっこなんて気にしねえよ」
「洋子のことは大切にするよ」
「ああ、そうあってほしいものだ。キスしたとか、胸を触ったなんて話聞きたくねぇからな」
「一様デリカシーはあるほうだ」
「でもなあ大介、俺はこれでも結構モテるんだ。毎年誕生日にプレゼントをもらうからな」
「それだけ魅力があるんだろ」
「俺としては嬉しいがどうしても乗り気になれねぇんだ。だって愛してないからな。つき合うならやはり一番愛してる女じゃなきゃダメなんだ。おまえはその大事な女を目の前から掻っ攫ったんだ」
「勉強に支障でもきたしたのか」
「俺はそんなにやわじゃない」
「そのわりには未練たらたらじゃないか」
「愛してもいない野郎にとられたことに腹が立つんだ」
「俺が決めたことじゃない」
「おまえはどうせ都立の普通科に進学するのがやっとだろう。俺は間違いなく開成に入る。将来幸せにしてやれるのはどっちかな」
「おまえは確かに頭がいいかもしれないがそれだけだ。いい大学に入って有名企業に就職したからといってそいつらの人生が全て薔薇色とは限らないぜ」




