進路 2
洋子も成績は学年で上位に入る。
だが、大介は自分の欠点をさらけ出すようで、どうしても洋子に勉強を見てもらう気になれなかった。プライド、そんなものはないんだけど、どうしても素直になれない。
そんなモヤモヤがすこしだけ続いたある日の夜、大介は母親の紀子に進学の話をはじめた。
「母さん、話があるんだけど」
「疲れているから難しい話はなしよ」
「進学のことなんだ」
「あなたを見ているともう進学は諦めたのかと思ったわ」
「家で勉強してねぇからな」
「よそでしているの」
「してない」
「ギターばかり弾いているじゃない」
「癖みたいなものさ」
「そんなこといってていいの。勉強しなきゃいけない時期じゃない」
「いろいろ手は尽くしたけど、自分に合った勉強方法が見つからないんだ」
「呆れたわ、この期に及んでなにをいうの。
友だちはみんな勉強に躍起になっているでしょう」
「みんなは関係ないさ。大切なのは自分のことだ」
「あなたはいままで勉強のことを真剣に考えてこなかったのよ。
わたしにもちゃんと通知表を見せたことがなかったじゃない」
「ショックを与えるだけだ」
「知らないよりよっぽどいいわ」
「母さんが寝込んだら大変なことだ」
「そんなにひどいの、誰に似たのかしら姉弟揃って」
「俺は都立高に行きたいだけだ」
「受け入れてくれるならどこでもいいじゃない」
「海東高校に行きたいんだ」
「都立は助かるけど、大丈夫なの。いまから5教科の勉強が間に合うの」
「いまの状態だとかなり危うい」
「そら見なさい」




