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進路 1

 

数週間後、担任の山口がクラス全員に向かってこう話を切り出した。

 「来週進路相談を行うからそれまで親とよく話し合って臨んでくれ。

各自の進路希望についてわたしなりの本人の成績や実力、さらに適性を考慮のうえアドバイスするから必ず出るように。

そして日程はいまからプリントを配るので親が出席するしないを明記し、都合の悪い日はスケジュール調整も行うから報告してくれ」と発表した。


 この日から大介はすこし憂鬱になった。彼の場合、小学1年のときに父親の三郎が交通事故に巻き込まれ他界し、それ以後は母親の紀子がひとりで働き家計を支えてきた。


3つ年上の姉、久美子は私立の女子高しか受からなかったため、大介はどうしても都立高に進学しなければいけない立場だった。


だが、これまで自分なりに成績を上げる努力はしてきたつまりだが、いずれも失敗に終わっていた。


これは彼が幼い頃から音楽中心の生活で育ったことが起因する。


つまりAメロ、Bメロ、サビといった形式ならばどんなに複雑なものでも理解できるが、英単語や数学の公式を覚えることは、リズムのような強弱もなければ、メロディーみたいな変化もない。


つまり知らず知らずのうちに頭の中で音を連鎖して覚える癖がついていた。


それなら音楽を聴きながら勉強すればいいのではないか、と考える人もいるだろう。


だが、音楽を聴くと今度はメロディーを耳で追ってしまい、かえって注意力が散漫になり、記憶の障害になってしまう。


つまり新たな学習方法を見つけなければいけないのだが、大介自身は見当すらつかずに途方に暮れていた。


そこで一度だけ功一にどんな勉強方法しているか聞いてみたが、「腕の立つ家庭教師と出会うこと、そして自分のレベルにあった参考書や問題集を集中的に勉強すればある程度の点数は取れる」という。


大介には家庭教師を雇うことは無理だが、参考書と問題集なら手が届く。だが、気になったのは<自分のレベルに合った>という点で、つまり功一が使っているものは参考にならないということである。


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