選択 4
「それは特別な音階なの」
「普通そう思うだろ。
だけどこの音階は珍しくもなんともない。
歌謡曲にも早くから取り入れられていたし、いろんな国の音楽で使われていたんだ。
さまざまな表現ができるからギターのアドリブにも活用されてきた。
日本では歌謡曲と演歌はどう比べても別ジャンルの音楽だけど、なかには同じ音階を使っているものもあるんだ。
これと同じ現象の最たるものがメジャースケールとマイナースケールだ。
洋子だって音楽に明るいアップ・テンポの曲と暗いスロー・テンポのバラードがあるのを知っているだろ。
でも使われている音はCメジャースケールのドレミファソラシドとAマイナースケールのラシドレミファソラにはシャープもフラットもついていない同じ音のはずなのに、全音と半音の並び順が違うだけで曲の印象がまったく変わってしまうんだ。
音楽って本当に不思議だよな」
「ふーん、わたしには少し難しいな。同じ音階でも違うジャンルの曲になったり、基本的には同じ音なのに明るくなったり暗くなったりするんだ。ねぇー大介、それだけ音楽に詳しかったらほかの教科に生かせない」
「俺にもよくわからないんだ。音楽の知識ならストレートに頭の中に入ってくるのに、学校の勉強ときたら形無しさ。
確かに音楽は小学生の頃から『全米トップ40』に出会っていたし、国内で流行っていた歌もラジオで夢中になって聴いた。
そしてなぜ自分がこの曲に惹かれるのか、どうして印象に残るのか、脳ミソにタコができそうなくらい考えたよ。
でも、小学生だったからその原因はよくわからなかったけど、自分なりに好きな音楽の傾向はわかってきた。
時間が過ぎて中学生になると自ずと自分のやりたい音楽の方向性は見えてきたんだ」
「大介、あなたにはもう将来の目標があるんだ」
「そうだね、目標はでっかく山下達郎や桑田佳祐に負けないミュージシャンになろことさ」
「山下達郎と桑田佳祐ってそんなにすごい人なの」




