ボクの奇妙な釣行記①
近くの川でニジマスが釣れると聞いて、出かけた。
仕事?
よく分からないけど行かなかったから多分休みだったのかな?
もしかしたらさぼったということもあり得る。
てゆうか仕事なんかやりたくもない。
お金の心配がなければ仕事などやらない。
なんで他人の人生の心配事をこんなにも背負わなければならないのか……まあケアマネジャーってそういう仕事なのだから仕方ないのだけど、もうそんなストレスにも辟易とさせられてたところだから、どうにでもなればいいと思う。
やけくそ……という言葉がふと頭に浮かぶ。
子供や妻はどうするの??
とはなぜか考えない。
何で考えなかったのかは分からないけどそれがどうにも奇妙な話だ。
灰色の霧がかかった場所をひたすら歩くと、小さな川が流れていた。
近所の川が釣れるなんてどこから聞いたのだろうか。
まあ、釣れるのだから釣ろう。
ボクは水辺に降りると魚がいそうな場所を探した。
なぜか流れのはやいところには魚はいないような気がしたから、流れが緩い場所を選んで竿を出すことにした。仕掛けはエサは使わず疑似餌を使う。
何色の疑似餌が有効かな?
スプーンのような形をした『スプーン』という名称の疑似餌を使う。
ニジマスはなんでこんなものに食いついてくるのだろう?
疑似餌の色は……
ニジマスに有効なのは赤と金が半分ずつ塗られているもの、などと言われているが個人的には派手な黄色やピンクの方が食いがいいような気がする。
疑似餌を入れたカバンからピンク色のものを取り出す。
水の流れる音がやたらと鮮明に聞こえる。
ボクは疑似餌をポイントに落とす。
通常だとリールをゆっくり巻いて疑似餌を泳がせることによって魚を誘うのだけど、今回はゆっくり底まで落としてみる。
いわゆるフォールさせるということだ。
釣り糸のふけを軽く巻き取りながら、疑似餌を底まで落とす。
魚はかからない。
てゆうかこの川……
ニジマスなんか本当にいるの?
ふと川の周りを見回すと、上の方には大通りがありバスなどが走っている。
そして通勤時間なのか……大勢の人がバスに乗り込んでこちらを好奇の目で見ている。
あ!!
仕事!!!
なんで忘れてたんだろ!!!!
と思うが身体は動かない。
てゆうか、別に仕事などどうでもいいと釣り始める前までは思っていたではないか。
リールを巻き、疑似餌を回収して、もう一度、同じ場所に投げる。
今度も同じく、ゆっくりとフォールさせていく。
ニジマスなんかいるんかな?
そんなふうに思った瞬間、何かが疑似餌を食った。
よし!!
そう思って竿をあおり、アワセを入れる。
手には間違いなく魚の動きが伝わってくる。
そんなに大きくない。
すぐに魚は手元までやってくる。
ウグイだ。
へええ。
この川、ウグイなんかいるんだ。
だったらニジマスもいるのかな。
『釣れる?』
唐突に声をかけてきたのは昔の友人。
てゆうか久しぶり。
でも向こうは昨日も会ったみたいなことを言っている。
『流れが緩いところに疑似餌をフォールさせると食うよ。でもまあ……ニジマスはまだ釣れないけど』
そういえば……
近所の川でニジマスが釣れると言ったのはこの友人だった。
『朝がいいよ』
『やっぱり朝か』
『そう、朝』
『朝!!』
『朝だよ!!!!』
『??』
『朝だよ!! 起きて!!!』
目の前にはかみさんの顔。
夢だったと気づくには少し時間がかかる。
もう少し釣ってたかったな……と思いながらも眠い目をこすって起きることにする。
今日は月曜日。
さすがに仕事をさぼるわけにもいかない。