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見える魚は釣れない

 Twitterなどを見ていると、よく釣果報告として何が釣れたとかそんな呟きが画像付きで流れてくる。


 それ自体はすごく好きなのでいつも『おお――!』と一人で呟きながらちょっとテンションを上げているのだけど、釣れた場所とかを見てみると大体地方なので、結局、ボクの釣りにはあまり参考にならないことが多い。


 ただ、この釣果報告。

 仮に、ボクが住んでいるところの近くで釣ったというものでも、同じ場所に行ってボクが釣れるかと言われればそれは無理なのかもしれない。

 無理なのかもしれないけど、ちょっと足を伸ばせば行けるところで魚が釣れていると聞けば行きたくなるのが釣り人の性分(さが)なのではないだろうか。


 そんなこんなで情報を仕入れて釣りに行くことが多かったボクだけど……

 いつものことだが、釣りに行く前は釣れることしか考えないからテンションは高いのだけど、釣り始めてしまうとまったく釣れないのですぐにテンションは急降下してしまうのである。


 ここ最近は友人の保田くんと釣りに行くことはなくなってしまったのだけど、こういうボクのテンションの一番の犠牲になったのは保田くんだろう。何せ彼は釣りをしないのに、ボクの釣りに付き合わされるのだ。しかも釣れればそれなりに楽しいが、釣れることはほとんどないのである。

 ボクとしても釣行前は釣れるつもりなので、保田くんに釣りの良さを知ってもらいたくて誘っている。

 彼からすれば迷惑極まりない話だろう。

 

 こういう釣りの情報に関しては、昔はネットなどはなかったので、釣り雑誌などを読んでは釣れそうなところを物色して釣りに行っていた。

 良さそうな情報を見つけるたびに、一人で行くのは寂しいので手近な友人である保田くんや多田くんを誘う……。


 一番ひどかったのは千葉県のとある漁港に釣りに行った時である。


 以前に書いた大原での出来事とはまた別の話である。

 いつ行ったかも記憶が定かではないが、まだ独身だった頃の思い出である。

 千葉県へは、日帰りでいつものようにボクと保田くん、そして多田くんで出かけた。


 釣り雑誌にはその漁港でクロダイが釣れると写真付きで載せられていた。


『これは期待大だよね』

 いつものようにテンション高めなボク。

『おお。ちょっと楽しみだよ』

 ボクは釣り雑誌の記事と写真を見せて保田くんを誘ったので、彼は嫌だとは言わなかった。

 それどころか少し楽しみにしていた様子だった。


 雑誌に書かれてあった場所までは車で数時間かかったが、そんなことを感じさせないぐらいに早く着いたのを覚えている。


 目の前には磯が少し点在している漁港。

 確かに雑誌の写真と同じ場所だ。

 ここにはクロダイがたくさんいて、ボクらのようなヘッポコ釣り師でも、もう勘弁してくれと言うまで釣れるはず……そんな甘い妄想をしながらボクら3人は漁港に入り、海の中を覗き込んだ。


『え?!』


 思わずボクは言った。

 水深が30㎝ほどしかなかったのだ。


 こんなんじゃクロダイはおろかボラさえ釣れるかどうか……


 一抹の不安を抱えながらも釣り雑誌のあの写真を思い起こして首を横に振る。

『まあ……さ。今は干潮だから仕方ないよ。気長にやろう』

 多田くんは言った。

 うん。

 確かに干潮だ。

 潮が満ちてきたら水深も深くなってクロダイも回ってくるに違いない。

 ボクらはそう信じて釣りを始めた。


 予想通りというべきか……残念ながら時間が経てば満ちてくると思った潮は時間と共に引いていき、ついにボクらが釣っている釣り座から底がはっきり見えるぐらいになってしまった。

 これでは釣れるわけがない。

 お得意のボラの呪いもかける元気がなく、ボクらは早々に帰り支度をした。


 帰りに食べたラーメンがしょっぱかった……

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