鯉に恋して
11、鯉に恋して
以前、『恋に恋して』というエッセイで冒頭の部分で恋愛の恋と魚の鯉をかけて書いたことがある。
恋愛に関しては奥手なボクも、釣魚に関しては常に積極的だった。
ボクが釣りを始めた際、ボクの心を虜にしたのは鯉だった。
『久良岐公園』の箇所でも書いたが、鯉という魚は身近な池や川にもいる魚でしかも引きは強烈。
あの引きを味わった釣り人は大抵、鯉釣りに魅了されてしまうだろう。
とにかく、手軽に釣れる・・・というのがいいのだ。
釣りは田舎に住んでいない限り、多くの時間と労力と費用を要するスポーツである。
まず、道具・・・。
安いものでも竿とリールだけで1万円ぐらいはするだろう。
さらにほかのこまごまとした道具を入れるとゆうに3~4万円は下らないだろう。
道具だけでこうなのだが、これに今度は交通費とか食事代とかがかかる。
船釣りならこの上、船代が・・・そして川や湖なら遊漁料が・・・かかってしまうわけである。
こうやって考えてみるとホントにお金がかかる。
そして、労力もかかる。
ボクは以前、伊豆で生活していたから、毎日のように釣りに出かけていたが、今はそうではない。
基本的に横浜のような都会に住んでいると釣りができるところまででかけるのに時間がかかったりするのだ。
ところが鯉釣りというのはこれがまた恐ろしいぐらい手軽なのである。
まず用意する竿はなんでもいい。
といっても根本部分、つまり腰の弱い竿はダメなのだが、腰の強い竿であるならなんでもいいのだ。そしてリールは使っても使わなくてもいい。
ノベ竿で浮き釣りをするのもよし、投げ竿をつかってブッコミ釣りをするのもよし。
費用だって相当安くつく。
竿やリールなどの道具を入れても5000円ほどで始めることができるのだ。
もちろん、本格的にやろうと思ったらそれなりにかかるのかもしれないが、そこまで本格的にやらなくても60センチぐらいの鯉なら釣れるし、その程度の鯉でも強烈な引きで釣り人を魅了してくれるのだ。
釣れる場所が、これまた手軽なのである。
鯉が釣れる釣り堀は都会にも多くある。
釣り堀なら竿も仕掛けも貸してくれるし、もし道具も何も持ってないのなら、釣り堀の費用を支払うだけで釣りが楽しめる。
釣り堀よりも自然の場所で釣りがしたいという場合も鯉釣りは手軽で楽しいのだ。
都会の公園の池にも釣りが可能なところはあるし、さがせば野池や釣りができる川もあるのだ。
思い起こせばボクが釣りを始めてこれまで、常に鯉釣りと共にあったような気がする。
前述の『久良岐公園』でも触れたが、そのほかにも多くの場所で鯉を釣ってきた。
中学の頃は近所の大岡川で釣りをしたことがある。
そして少し足を伸ばして、相模川にはけっこう定期的に行っていた。
高校在学中は釣りをしない時期も多かったが、それでも久良岐公園にはよく行っていた。
高校を卒業した後は戸塚の柏尾川で釣りをした。
で・・・。
最後に・・・最近では瀬上池に釣りに行っている。
これ・・・すべて鯉を釣りに行っているのだ。
そしてここに挙げた鯉が釣れる場所はすべて横浜近辺にある釣り場である。
もちろん、本格的な浮き釣りやブッコミ釣りができる場所ばかりではない。しかしどこの鯉も強烈な引きでボクらを楽しませてくれるのだ。
いろんな釣りを楽しんでいるボクだが、恋愛に例えれば、鯉釣りはボクにとって、ほかの何かが見えなくなるぐらい夢中になってしまう恋人ではない。
例えるなら古女房だ。
昔から一緒にいるが、夢中になるほどの関係ではない。
でも、一番身近で一番なくてはならない存在。
そんな釣りがボクにとっての鯉釣りなのだ。
今もまさに『鯉に恋して』いる。