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好きな子を落とすために拾った黒ギャルに恋愛コンサルしてもらったら、なぜか俺にだけ激重で困っている件  作者: ちくわ食べます


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第4話 コミュ力お化けと部屋の鍵

 当然だが、俺と黒豹は別々に登校した。


 一緒に登校したらおかしな噂が立ちかねないからな。

 

 教室に入った俺はいつもの席にスマートに座る。


 俺の席は窓際の一番後ろ。できればもう少し前の方が黒板が見えやすいんだが、席順は運が絡むから仕方ない。


 しばらくすると黒豹が騒がしく教室に入ってきた。


「あーげは! おはよ~!」


「おっはよう、おはよ~! ねえねえ、昨日のTikTikみた?」


「見た見た! あれヤバくない?」


 ……相変わらずの陽キャぶりだ。


 教室に入った瞬間、黒豹の周りに友達が群がっている。


 女子がキャッキャ、ワイワイしてるなぁ。


 対する俺は、誰にも話しかけられることなく教科書を開いているわけだが……


 まあ、これが俺たちの日常だ。


 俺たちは対象的な存在で、住む世界がまったく違うのだ。


 その時……ふと黒豹と目が合った。


 黒豹は一瞬止まったがすぐに目を逸らして、友達の方を向いて話を続け始めた。


 完全に他人のふり。


 だが……それでいい。


 俺たちが一夜を明かしたのはたまたま、偶然なのだ。


 特にやましいこともなかったしな……息子が反応しただけで。

 

 奴の元気は俺の意思とは関係ないし。


 俺たちは他人。その対応で正解なんだ。


 ◆



 放課後。


 俺は鞄に教科書を詰めながら、自然と視線がそちらに向かっていた。


 教室の前の方の席に座る星城院 日香里せいじょういんひかりが、友達と話しながら帰り支度をしている。


 長い黒髪がさらりと揺れている。品のある仕草。穏やかな微笑み。


 いつ見ても可憐だなっ……まさに天使だっ!!


 本当に完璧なんだよ……星城院さん。最高すぎるだろ……


 神の使いか? いやっ、神そのものか?


 成績は常に学年上位。先生からの信頼も厚い。


 それでいて鼻にかけたような素振りもなく、嫌味がない。


 誰にでもまんべんなく優しい様はもはや聖母すら霞むほどの存在。


 星城院さんが笑うと、黒豹のせいですさんでしまった心が浄化されていくような気がする。


 ……いや、気がするだけじゃない。実際に浄化されている。


 きっと星城院さんは女神の生まれ変わりなのだ。


 聞いてくれよ、あの透き通った声。女神としか思えないだろ?


 科学的じゃない考え方かもしれんが、俺の中ではこれがリアル。


 心を科学的に理解するのは限界があるかもしれない、という証明かもな……


「ふふっ」


 いかん、声が漏れてしまった。


 この世界が仮にゲームなら、好感度は数値化されるだろう。


 だが俺の好感度はカンストしているから「270F」みたいな謎の数字になるかもな。


 出来ることなら星城院さんとお付き合いしたい。彼女と付き合えるなら何でも出来る。


 だが、2学期を迎えてもなお、俺は彼女とほとんど話したことすらない。


 果たして俺は……このままで星城院さんとお近づきになれるのだろうか?


 彼女に話しかけるためにはクリアしないといけない問題が多すぎる。


 タイミング、話題、距離感、声のトーン。


 どうやって計算すればいい?


「まだ……データが足りないのか?」


 俺は小さく呟いて、教室を出た。


 結局今日も、星城院さんに話しかけられなかった。



 ◆


 図書館で勉強してから家に帰ると、妙な予感がした。


 そして玄関を開けた瞬間、嫌なものが目に入ったのだ。


 女物の小さなローファーが。


「おっかえりぃ~! 真面目くぅんっ!」


 ……なんで黒豹がいるんだよ。


 黒豹が俺を出迎えてくれた。


 リビングのソファーには、寝転んでスマホをいじっていただろう形跡がある。


 俺の部屋着を着て完全にくつろいでいたようだ。


 ていうか、昨日は置いてなかったスーツケースもある。


「なぜ黒豹がここにいるんだ。どうやって入った? 鍵もないはずなのに」


「え? 合鍵作ったからだよ。管理人のおばちゃんに頼んだらさ、快く作ってくれたの~」


「……は?」


「おばちゃんに『彼氏の部屋なんですけど~、鍵のスペアってお願いできますかぁ♡』って言ったらすぐだった!」


「俺はお前の彼氏じゃねえし! つーか管理人のおばちゃんも何やってんだよ! 不用心すぎるだろっ」


 管理人のおばちゃんは人がいいのは知ってるけど、いくらなんでも軽率すぎる。


 ……いや、これは黒豹の突出したコミュ力が成せる技なのか。


 もしかして……黒豹は人を操る特殊能力でも持ってるんじゃないだろうな?


 これは俺にはないとんでもない才能だ。


 だが、これ以上は――


「おい、出ていけ。今すぐだ」


「真面目……くん……?」


 俺は本気のトーンで言った。


 これ以上はさすがに限界だ。


 昨日は緊急事態だったし、一晩だけなら許せるし、許した。


 だが、合鍵を勝手に作って居座るなんてどうかしてる。犯罪だろ。


「出ていってくれ……冗談じゃない。なに考えてるんだ」


 黒豹はスマホを置いて、俺を見た。


 いつもの軽い笑顔が無くなっていた。


「……だよね。ごめん、ちょっと、調子乗りすぎた」


 黒豹がソファーから立ち上がった。


「まあ、しょうがないか~。赤の他人だし。さすがのアタシもマズイってことくらいわかるよ……」


 珍しく話が通じている。さっきまでの軽い調子じゃない。


「荷物まとめるからさあ、ちょっと待ってて。……あ、あと服ありがと。洗って返すからそれまで借りてていい?」


「……おう」


 黒豹が自分の荷物をスーツケースに詰め込み始めた。


 俺も学生カバンを部屋に片付けることにした。


 ――これでいい。これが正解なんだ。


 見ず知らずの、しかも年頃の女子を家に置くなんて、論理的じゃないにもほどがある。


 倫理だって怪しいくらいだ。


 俺がリビングに戻ると……荷物をまとめていた黒豹がぽつりと言った。


「はぁ~あ。また『拾ってくれる人』探さないと……」


「黒豹……『拾ってくれる人』ってなんだ? もしかして、帰るとこないのか?」


「そうだよ~。アタシお金ないし。ママから家追い出されちゃったからさぁ」


「……なんで追い出されたんだ?」


 聞くつもりはなかったけど、口が勝手に動いていた。


「ちょっとおもしろいかも?」「続きが気になる!」

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