表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

忙中有閑

作業部屋にはDIYに使用する様な工具類が一式揃っており、名前の通り簡単な作業も出来るように専用の机も置いてあった。他にもスキー用のゴーグルが数個、スノーシューが何足か置いてある。


「自分達でやれる範囲の事は全部やりたくてね。いつの間にか色々揃っちゃったんだ」


マサさんが少し照れて言う。


「ここって普段から鍵はかかってないんですか?」


マサさんが普通に工具部屋のドアを開けるのを見たので聞いてみた。


「うん。殆んど用事はないと思うけど、必要な時はお客さんにも好きに使って欲しいなって思ってさ」


「こっちの方ってマサさん達の部屋とかが固まってますけど、勝手に部屋に入られたりとかはあるんですか?」


「うーん、自分達の部屋には一応鍵をかけてはいるから勝手に中に入られたりとかはないんだけどね。好奇心旺盛なお客さんとかは普通にこっちの方まで入って来るよ。ほら、僕達って呼び出されるまではフロントに立ってない事が多いでしょ?」


「確かに」


つまり誰にも見られず作業部屋に来ようと思えば誰でも来れたという事か。


観察してみると、色んな種類の鋸があった。


「お姉ちゃん、ここにある鋸に血液とかは付いてな

い?」


私はお姉ちゃんにテレパシーで呼びかける。


「ううん、どれにも付いてないよ」


「そっか、ありがとう」


ちょっと聞いてみるか。


「マサさん、ここって色んな種類の鋸がありますけど、もしかして無くなってるものとかありませんか?」


「うん?えーと、ちょっと待ってね......あれ?横引きの鋸が無いぞ...?」


「鋸以外では何か無くなってませんか?」


「確認してみるね」


マサさんが物を退かしつつ、部屋を探す。


「あれ?鉈も無いぞ。普段殆んど使った事ないんだけど、あると便利かなって思って買っておいたんだけどな...」


「無くなった道具は最近いつ使いました?」


「鋸は趣味の日曜大工で2ヶ月前に使ったけど、鉈はちょっと覚えてないな。滅多に使わないような物をわざわざこんな所に置いておくなって話ではあるんだけどね」


「凝って色々集めだすと止まらなくなっちゃいますよね。私も経験があります」


「うん。そうなんだよね~」


唐突に気になり出した事があったので、お姉ちゃんにテレパシーで聞いてみる。


「ねえ、お姉ちゃん、確認なんだけど、堤さんの生首って再凍結された痕跡とかなかった?」


「無かったよ。間違いなく死後凍結してからそのままだね」


「分かった。ありがとう、お姉ちゃん」



「あの、全然話は変わるんですけど、旅館の西側にある崖の下って、もしかして割と近くに道路がありませんか?」


なんとなく気になったのでマサさんに聞いてみた。


「うん、あるよ。崖下は森になってるんだけど、そこから100m足らずで県道に出るね。華凛ちゃん達がバスで通って来た道とは違う道だよ」


ああ、やっぱりそうだったのか。しかし、まだ最後のピースが埋まらない。


「なるほど...あっ、そういえば、美花さんと雅志さんって、いつ位からここで働いていらっしゃるんですか?私達とあんまり年も変わらないのに凄いなあて思って」


「そうかい?ありがとう!二人とも高校卒業まではちょっとした手伝いをしてもらってたんだけど、卒業後どうするかって聞いたら旅館で働きたいって言ってね。

もしかして僕に遠慮してるのかなって思ったから、都会でキャンパスライフも良いんじゃないかって話したら、雅志も美花も、そんな事より お母さんが大事にして来たここを守る事の方が大事だって言ってくれたんだ。

でも、それだったら大学に行って、経営の事とか色々学んだ方が守る事に繋がるんじゃないかって言ったら、勉強はやろうと思えば何処でも出来るし、通信制の大学もあるけど、自分達の雪華楼はここにしかないって言ってさ。

親として子供達の可能性を伸ばしてあげる為に、断固として進学を勧めるべきなのかどうか悩んだんだけど、子供達の情熱や決意を受けとめるのも親である僕の役割だなって思ったんだ。

...でも、嫁が亡くなった時は本当に色々大変だったけど、家族皆この場所でずっと繋がってたんだなって感じて、子供達の言葉を聞いた時、なんか凄く嬉しかったんだよね」


そう言ってマサさんが涙ぐむ。


温かくて良い家族だなと思う。


私達の両親が温かくないという訳ではないし、育ててくれて感謝してるけど、海外から滅多に帰って来ないから、お姉ちゃんとの絆に比べると、何処か少し希薄な感じはしている。


「マサさん、ご協力ありがとうございました!」


「いやいや、そんな!...他に何か僕達に出来る事はあるかな?」


「動機の候補になるものは考えられるんですけど、なんかそれだけじゃない気がするんです。だから普通に考えると次に狙われるのは404号室の谷崎さんなんですけど、そう考えるには何かを見落としてるなって。なので取りあえず出来ればで良いので、谷崎さんの事は注意していただけないでしょうか?」


「うん、分かった!任せてよ!」


そう言って私達はマサさんと別れた。


「さて、これからどうしようか、お姉ちゃん?」


「うーん、そうねえ...、他に調べられる事って言ったら、303号室の調査位なんだけど、笠井さんに許可が取れるかどうか......」


「取りあえず行ってみる?」


「ええ、そうね」


私達はエレベーターで3階へと向かった。



◯ふ~む、どんどん核心に迫っている感じがしますねぇ~。いやぁ、それにしても華凛ちゃんも華澄ちゃんも格好可愛いぃ!!ぐへへ。


あっ!何しに来たなんて思わないで下さいよ!


......へへへ、実はとっておきのブツを用意して来ましたぜ、旦那!


~~~人物表~~~


蔵田くらた 雅孝まさたか


 男性 旅館「雪華楼」のオーナー

 髪型:ショート七三ツーブロック

 服装:紺色の和装(絹)

 特徴:大の対戦ゲーム好き。ゲームコーナーは彼の趣味。


蔵田くらた 美花みか

 

 雅孝の娘

 高校卒業後 雪華楼の従業員になる

 髪型:ミドルポニーテール

 服装:暗い赤の作務衣(綿)

 特徴:快活な性格。父親に苦労させられる事もあるが、家族との仲は良好。


蔵田くらた 雅志まさし


 雅孝の息子

 高校卒業後 雪華楼の従業員になる

 髪型:スポーツ刈り

 服装:紺色の作務衣(綿)

 特徴:硬派で寡黙だが家族思いで優しい。


熊澤くまざわ 源三げんぞう


 下山 多恵の祖父 雪華楼の料理人

 髪型:五分刈り

 服装:板前風調理服(綿)

 特徴:職人気質で気難しい所もあるが、情に厚く涙もろい。


津川つがわ 哲雄てつお

 

 男性 

 301号室

 髪型:ぼさぼさのショート

 服装:浴衣+羽織

 特徴:正義感が強く眼光鋭い元刑事。愛妻家でもある。

 滞在:21日~23日


津川つがわ 実智子みちこ


 哲雄の妻

 301号室

 髪型:ロング、下部でまとめ

 服装:浴衣+羽織

 特徴:哲雄を支える大和撫子

 滞在:21日~23日


宮田みやた 紬希ゆき


 女性

 302号室

 髪型:ミディアムウルフカット

 服装:浴衣+羽織

 特徴:ヘビースモーカー。癒しを求めて温泉に来た。

 滞在:18日~28日


笠井かさい 世彰よしあき


 男性

 303号室

 髪型:ミディアム真ん中分け

 服装:浴衣+羽織

 特徴:気弱で、いつもおどおどしている。

 滞在:19日~23日


志島しじま 隼斗はやと


 男性

 304号室

 髪型:ショート+ゆるめのパーマ

 服装:浴衣+羽織

 特徴:明るい性格という訳ではないが、人当たりの良い好青年。

 滞在:16日~23日


鮫嶋さめじま 美咲みさき


 女性

 401号室

 髪型:マッシュ風ショート耳かけ

 服装:浴衣+羽織

 特徴:急病で彼氏が一緒に来られなくなった為、一人で温泉にやって来た。

 滞在:21日~23日


安藤あんどう 和志かずし


 男性

 403号室

 髪型:スパイクヘア

 服装:黒のプルパーカー(綿)とジョガーパンツ(ジャージー素材)

 特徴:やせ形。6年前のバラバラ事件の犯人

 滞在:20日~24日


谷崎たにざき 孝助こうすけ


 男性

 404号室

 髪型:マッシュショート

 服装:黒のジャージ

 特徴:無線のイヤホンをして何かを聴いている事が多い。6年前のバラバラ事件の犯人。

 滞在:20日~24日


つつみ 瑛二えいじ


 男性

 303号室

 髪型:アップバングショート

 服装:不明

 特徴:生首のみが「雪華楼」の玄関先で発見される。6年前のバラバラ事件の犯人。

 滞在:15日~17日


多田ただ つとむ

 

 男性

 403号室

 髪型:不明

 服装:不明

 特徴:大きなスーツケースを持って泊まりに来ていた。髭に白髪が混じっている。

 滞在:14日~16日

 

上川かみかわ はじめ

 

 男性

 404号室

 髪型:不明

 服装:不明

 特徴:少し多めに荷物を持って来ていた。見た目は20台に見える。

 滞在:15日~17日



じゃ~ん!どうですか?女神特製の人物表!


...えっ?情報が薄い?薄いのはお前の存在感だけにしとけ?......うぅ、そこまで言わなくても...。


......と・こ・ろ・で!一話の冒頭でも申し上げた通り、私は女神なので冗談は言いますが、嘘は絶対に吐きません!


ですから、この人物表に書いてある事は、"Xと呼ばれる人のYはZである"という点において全て真実なんです!


気に入っていただけましたか?いただけましたよね!


それじゃあ、続きをどうそ!◯



303号室の前まで来た。


チャイムを鳴らすと、少しして笠井さんがインターホン越しに返事をした。


「はっ、はい、どうか...されましたか...?」


「度々すみません。あの、実は外に放置してあった生首の方が、先週こちらの客室に泊まっていたみたいなんです」


「えぇ!!そっ...そんな......あわわわわ」


「それでですね、突然の事で驚かれている所 大変恐縮なのですが、部屋の中を少し調べさせていただけないでしょうか?」


「あっ、貴方達が...ですか...?」


「はい。一応捜査用の道具も持って来てるんです、ほら」


私はインターホンのカメラ越しに、ルミノール溶液や3Dスキャナーを見せる。


「貴方達は一体......。わっ、分かりました!僕、なんだか気味が悪くて落ち着かないので部屋の中を徹底的に調べちゃって下さい!今行きます!」


笠井さんが玄関のドアを開けてくれた。


「よ、よろしくお願いします!」


「私達の方こそよろしくお願いします!」


客室へ入るなり、カモフラージュの為3Dスキャナーを使いつつ、お姉ちゃんが能力で客室全体をスキャンする。


「笠井さんの持ち物を本人の前でチェックする訳にもいかないし、特に気になるものとかはないんだけど、やっぱり浴室が気になるかな」


お姉ちゃんがテレパシーで語りかけて来る。


「まあ、やっぱりそうだよね」


取りあえず色々調べている振りをしつつ、私達は浴室に向かった。


「すみません笠井さん、何か浴室の窓を覆えるものを貸していただけませんか?」


「ん?...ああ、気付かないですみません!」


...あれ?.........まあ、そういうのが好きな人もいるか。


「やっぱり、堤さんのDNAと一致する血痕があるよ」


お姉ちゃんが能力で教えてくれた......ここまではあるべき所に収まっているような、そんな感覚がある。



その後、笠井さんが持って来てくれた布団で、私が窓をがっちり覆い、洗面所の方の明かりも消して真っ暗になった所で、お姉ちゃんがルミノール溶液をスプレーする。


ほんのり光る感じが結構綺麗なんだよな。


私が呑気にそんな事を考えてると


「ひっ、ひぃ!!」


と、笠井さんが悲鳴をあげた。まあ、それが普通の反応だろう。しかも自分の客室なんだし。


「これで今やれる事は全部やった感じかな?」


テレパシーでお姉ちゃんに聞いてみる。


「うん、そうだね......あっ、そうだ!今の時間帯だったら、場所が入れ替わってる事だし、どうせだったら これから大浴場に行ってみない?」


「あ~、それ良いかも。今は吹雪が止むのをのんびり待つしかないしね」


「ふふ、じゃあ、温泉に入る前に取りあえずお茶でも飲もうか?」


「さんせ~い、私あの茶菓子大好き!」



笠井さんが落ち着くまで待った後、私達は自分の部屋へ向かう為、客室を出た。


「お、お世話になりました...」


玄関先で笠井さんは意気消沈しながら言った。


「いえ、すみません...。笠井さんにとっては知らなくても良かった事でしたのに」


「そんな事ないです!あの生首を見てから、本当に雪山夜叉がいるんじゃないかなんて思ってましたから...。人間がやった事だったんだって思えるようになっただけでも、何処か救われたというか...」


「それでしたら私達も良かったです。戸締まりには気を付けて下さい」


「はっ、はい、気を付けます!」


私達は笠井さんと別れ自室に向かった。



ふぅ、朝から色々あって疲れたなー。


リビングのソファに体を沈め、ホッと一息つく。


「お疲れ様、華凛ちゃん。はい、お茶と茶菓子」


「ありがとう お姉ちゃん......って、お姉ちゃんもお疲れでしょ」


「ううん、私は全然。だから気にしないでゆっくりしてて」


「じゃ、じゃあお言葉に甘えて...ありがと」


お姉ちゃんが優しく微笑む。


テレビをつけると、クラシック音楽の番組が放送されていた。


あっ...結構好きかも、この曲。


......今の所 確たる証拠はないし、安藤さんの遺体を発見したとして、それがどれだけ犯人に迫る手掛かりになり得るのか正直分からない。


全体の筋道が見えているようでいて、所々不明瞭になっている箇所が未だにあり、まだ事件の真相に辿り着けていないと感じる。


あっ、考え込んでて、茶菓子あんまり味わえなかった...。


......温泉でさっぱりして来よう。


お姉ちゃんがお茶を飲み終わるのを待ってから、私達は大浴場に向かった。


今は部屋でいうと3号室が女湯なんだっけ。


脱衣所に入ると、一人先客がいるようだった。


服を脱ぎ、大浴場に入って確認すると、津川さんの奥さんである美智子さんが入っていた。


こういう所で話し掛けるのはマナー違反かなと思い、軽く会釈だけして髪と体を洗う。


洗い場の雰囲気は向こうと変わらないけど、多分景色はガラッと変わっているのだろうから、新鮮な感じがして良かったろうなと、昨日も今日も吹雪で真っ白になって何も見えない景色を見ながら思う。


「じゃあ、お姉ちゃん、先に入ってるね」


「うん。あっ、入る前に...」


「"かけ湯を忘れないでね"...でしょ?」


お姉ちゃんがにっこりするのを見つつ、美智子さんから少し離れた所でかけ湯をし、湯槽に入る。


白く濁ったお湯の底は何も見えない。まるで今日の吹雪の様だなと感じた。


ふ~、生き返る~!


私があまりの気持ち良さに夢見心地になっていると


「うふふ、本当、良いお湯ですよね」


と、美智子さんが話しかけて来た。


「はい、温泉って今まで興味無かったんですけど、私、大好きになっちゃいました!......美智子さんは温泉好きですか?」


「ええ。でも、今まで主人の仕事が忙しくて、なかなか夫婦で温泉旅行とかは出来なかったんです」


美智子さんが少し遠くを見る目になる。


「それじゃあ、今回は福引きで勝ち取った念願の温泉旅行だったんですね!」


私がそう言うと奥さんが不思議そうな顔をしていた。


「福引き...?...ああ、そういえば主人がそんな事を言っていた様な」


ん?津川さんが一人の時に福引きを引いたのか?


「という事は哲雄さんが福引きを...?」


「あっ、いえ、違うんです。実は司法解剖で主人が立ち合う時に よくご一緒していた法医学の教授さんが、福引きで温泉旅行を当てたのに行けそうもないから私達に譲ると仰って下さって......」


「えっ、それはラッキーでしたね!......あの、もしかしてその教授って、年齢は60歳台で、森山って名前の人じゃないですか?実は知り合いのお祖父さんにそういう人がいて...」


勿論、真っ赤な嘘である。


「それでしたら違いますね。小此木さんは、還暦を迎える前ですし、ずっと独身みたいなので」


「あー、そうだったんですね。流石にそんな偶然ありませんよね!......ところで哲雄さんは今......?」


「お部屋で休憩してます。朝から色々あって疲れてしまったらしくて...。それに、何か思い詰めているみたいですし......」


「...それは心配ですね......。思い詰めているというのは、やはり六年前の...?」


「ええ、多分...。解決した事件ではあるんですけど、その...加害者側が表面では反省している様で、本当は全然そんな事はなかったみたいで...。遺族の方の事を思うと、やり場のない怒りや、やるせなさが込み上げていたんじゃないでしょうか」


「そう...だったんですね......あの、6年前の事件の時も小此木教授が...?」


「はい、主人からはそう伺ってます......その、すみません。折角の良いお風呂なのに、暗い話をしてしまって...」


「いえ、そんな......。私の方こそ色々聞いてしまってすみませんでした」


「いいえ、誰かに話を聞いてもらったら、気持ちが楽になったわ。きっと私も気持ちが張りつめてたのね。ありがとう華凛さん、華澄さん」


お姉ちゃんが空気を察して、離れた場所に遠慮がちに入浴していたのを察知したらしく、美智子さんはお姉ちゃんにもお礼を言うと、お姉ちゃんは微笑みながら会釈した。


「それじゃ、お先に失礼しますね」


そう言って美智子さんは大浴場から出て行った。


それを見届けたあと、お姉ちゃんが私に近付いてくる。


「その格好...もしかして華凛ちゃん、事件の真相が分かったの?」


美智子さんがまだ脱衣所にいる事を想定してか、お姉ちゃんがテレパシーで私に聞いてきた。


気づくと、私は考える時の いつもの癖で、両手の指の先を合わせ、自分の口許に寄せていた。


「うん、殆んど全部が。私の推理が正しかったら、安藤さんの死体にはある特徴があるはず」


「そっか...。でもこの吹雪じゃ......えっ?」


お姉ちゃんが驚いて窓の外を見ていたので、私もその視線の先を追って、窓の外を見つめた。


えっ、吹雪が止んできた......?


山の天気は変わりやすいから、あまり驚く事でもないのかもしれないが、それにしても急激に天気が回復して来ており、少しずつ日の光で辺りが明るくなって、旅館裏手の森を優しく照らし出していた。


ビュゥゥゥゥゥゥゥッ!!


その時、一陣の風が窓ガラスを叩いた。


悲しみでも憎しみでもない、ある種の怒りに似た感情。


ああ、そうか。雪山夜叉には雪山夜叉なりの矜持があったのだろう。しかし人間の手によってそれを踏みにじられた、これはその復讐なのかもしれない。


そう思わずにはいられない程、突如としてチャンスは訪れた。


私とお姉ちゃんは顔を見合わせ頷き合うと、急いでお風呂を出た......

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ