雪山夜叉(せっせんやしゃ)
降り積もる雪の中、"それ"はあった。
恐らく男性の頭部だろう。
鼻腔から頸椎に向かって、テント用の長いペグが突き刺さっており、叫び声をあげている様に口は開かれたままになっている。
目玉はくり抜かれ、眼孔内は伽藍堂になっていた。
まるで今からバーベキューで串焼きをしようとしていたのに途中で食欲が無くなって、そのまま無造作に放置した様なそんな有り様だった。
雪山夜叉......
昨日旅館のオーナーであるマサさんから聞いた話を思い出す。
「雪山夜叉......か」
マサさんがそう口火を切った。
「せっせんやしゃ...ってなんですか?」
聞き慣れない言葉だったので気になって聞いてみた。
「この辺りには怖い伝説があってね......」
吹雪が更に強まり、まるで何かの咆哮の様に聞こえている。
「こんな吹雪が強い日に、雪山夜叉っていう人食いの怪物が何処からともなく突如現れて人を拐うんだって。
でも、食べるだけが目的っていう訳でもなくて、ただ戯れに殺す事もあるらしい。
それで昔、一つの村が滅びたっていう話だよ。
だからね、この音は雪山夜叉の叫び声であると同時に、犠牲者の悲しみの声でもあるんだって。
因みに雪山夜叉はまるで霧の様に消え去り、足跡とかの痕跡すら残さないから、誰にも正体が分からないみたいだよ」
マサさんは窓の方を見やりながら、そんな風に静かに語っていた。
頭部を調べたあと、お姉ちゃんは現場周辺の様子を慎重に調べている。
雪に不審な足跡が無いか、3Dスキャンしているのだろう。
一時的に止んでいた雪がまた降り始める。
天気予報によると、明日の正午近くまで猛吹雪になるらしい。
「お姉ちゃん、何か見つかった?」
テレパシーで尋ねる。
「ううん。もし足跡が残っているとしたら、最初に頭部を発見したオーナーさんの足跡が残ってる層と、昨日本格的に雪が降り始めた夕方過ぎまでについた足跡が残ってる層の中間部分にあるはずなんだけど何も無いわ」
「ここって旅館の玄関先から10m位あるよね?」
「そうね。何か痕跡が残っていてもおかしくないんだけど...」
なるほどね。まさに雪山夜叉の仕業に見えるって事か。
少しずつ風が強くなり、音を奏で始める。
まるで雪山夜叉による新しい犠牲者の悲痛な叫びのよう...というと流石に感傷的過ぎるだろうか。
○うっっわ!えげつなっ!!串刺しって、焼きマシュマロじゃないんですから!ミステリー好きの女神の私でさえドン引きですよ!
......はぁ、それにしても華凛ちゃんも華澄ちゃんも凛々しくて可愛い...ふへへぇ......ハッ!
しっ、失礼しました!
皆さんお元気でしたか?
そうです!私です!女神です!
詳しい事は第一話を御覧頂くとして、軽く色々おさらいしておきましょう。
先ず"○"で囲まれた部分は、女神である私が話しているので、他の方には聞こえてません。
そして先ほど冷静に現場を検証していた二人は月代姉妹で、心の声の主は妹の月代 華凛ちゃん。身長は156cmで、ゲーム大好きな高校1年生の可愛い女の子です!
何やら能力っぽいのを使っていたのが、お姉さんの月代 華澄ちゃん。身長は178cmで、法医学や科学捜査が大好きな高校2年生の美人な女の子です!
それで華澄ちゃんの能力というのが、解剖や検査をしなくても、死体を見ただけで死因や死亡推定時刻がイメージで見えたり、生きている人や動物以外に対して各種科学捜査で得られる情報をイメージとして見られるというものです。
基本的に3m以内で見えている範囲で能力を使用出来ますので、例えば先ほど雪に埋もれた足跡を調査していた様に、3Dスキャンの能力を使うのであれば、3Dスキャンで分かる事は全部分かるという訳です!
他にも色々ルールがありますが、それはまた後で説明しますね。
あとは、皆さんの世界で未知のものXが推理の過程で登場するのであれば、こちらから必ずご説明致しますので安心して下さいね♪
...とまあ、おさらいはこの位にして、華凛ちゃんと華澄ちゃんがどういう経緯で串刺しになった頭部を発見したのか、皆さんには一旦過去に戻って、ここまでの流れを御覧いただく事にしましょう。
それではレッツタイムリープ!☆○




