月と龍
ちょっとの間龍が飛んでるようだった
なんてことない夜のひとときが
心に刻まれた日となった
月の写真を撮る。
あぁ、このカメラじゃうまく撮れない。
そう思った瞬間、ふいに雲が流れてきた。
その形があまりに面白くて、思わずシャッターを切る。
パシャ。パシャ。
あれ?
月が――龍の目のように光っている。
黒い雲が胴体になって、
空をうねるように駆けていく。
まるで、月の力を吸い上げるように。
ほんの一瞬のことだった。
龍はやがて薄れて、闇に溶けた。
けれど、その姿は目の奥に焼きついて離れない。
あの夜見た光景は、夢のようで現実で、
その余韻がずっと心に残っている。
今もこの写真を見ると、
ほんわかとあの時の感覚を思い出す。
――幸せを引きずれた夜。
私の携帯は古いから月をとってもいまいち。ぱっとしない。この日は、雲が助けてくれた。