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正直なところ、これほど早く(星座)に注目されるとは思っていなかった。
星座とは、神々や高位の悪魔、真なる主など、強大な力と高位の階級を持つ存在の総称だ。
もちろん、喜んでいるわけではない。
なぜなら、私に注目したのは〈愛〉の系統の星座だ。愛の系統の星座が与えてくれるものは、戦闘や闘いで直接役立つ類のものではないことが多い。
だが、いずれにせよ相手は星座だ。敬意を示す必要はあるだろう。
まずは、この恥ずかしがりのプリンセスを病院に連れて行かねばなるまい。
最優先で、彼を可能な限り工場地帯から遠ざけなければならない。あの火竜がどこかの工場に衝突する可能性が高いからだ。
この“金のなる木”を失うようなリスクは冒せない。
タクシーを捕まえ、都心部の病院へと向かう。
道中、リチャードは完全に沈黙していたが、システムは絶え間なく煩いメッセージを送りつけてくる。
【星座《禁断の愛》が、あなたに隣にいる彼をキスするよう提案してきました】
【星座《禁断の愛》が言うには、キスすれば報酬としてB級アイテムがもらえるそうです】
まあ、B級アイテムをキス一本で手に入れられるなら、悪い取引ではない。
だが、愛の系統の星座がくれるB級アイテムとなれば、おそらく恋愛やら何やらに関連した代物だろう。
つまり、それを所持していなくても、私にとって何の不都合もないのだ。
【星座《禁断の愛》は怒りながら言う、あなたはとても臆病者だそうで、愛する人をキスしないのだと】
この星座、本当にうるさいな。
【星座《禁断の愛》は嘲笑いながらあなたを見つめ、おそらくは男としての機能が正常に働いていないから行動に移せないのだろうと言う】
このメッセージを受け取った瞬間、私は頭に血が上り、自分を抑えきれなくなった。まだタクシーの中だというのも忘れ、声を荒らげて叫ぶ。
「クソッタレ…!星座だろうが何だろうが、これ以上その大きな口をたたくなら、俺の男らしさをお前の存在の根底まで深く深く刻み込んでやるぞ!」
【星座《禁断の愛》は恥じらい、言葉に詰まりながらも、今まで誰も彼に対してそんな口の利き方をしようとはしなかったと言う】
【星座《禁断の愛》は恥ずかしさで染まった頬を手で隠そうとする】
なんだ?まさかこの星座、私の暴言で興奮するようなマゾヒストの変態なのか?
そういえば、なぜあの陳腐な決まり文句「今まで誰も〜しなかった」を使ったんだ?
今はどうでもいい。こんな変質的な星座とは、一切関わり合いになりたくない。
私が関わりたいのは、 “深淵に憩う悪魔”や、“殺戮場の悪魔”、“混沌の皇子”といったような星座だ。連中なら、戦いにとってより適切なものをたくさん提供してくれるだろうに。
【星座《禁断の愛》が、あなたのスポンサーになりたいと言っています】
【星座《禁断の愛》が贈り物を送ってきました】
【スキル《偽善( Hypocrisy)》を獲得しました】
【スキル名:偽善( Hypocrisy) ランク:B 種別:パッシブ 説明:このスキルは自動的にあなたの嘘をつく技術を高め、他者からの信頼をより得やすくします。嘘をついている際の誤ちや露見を防ぎ、あなたの脳は最適な嘘を迅速に構築します】
このメッセージを目にした時、私は思わず笑みが零れた。 「戦闘能力ではないが、これは…非常に有用だ」
これにより、「小説家になろう」の読者に受け入れられやすい、読みやすく没入感のある文章になっているはずです。