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目を開けると、巨大な産業用機械と、青と黄色の作業服を着た人々が働く光景が広がっていた。
どうやら俺は、とある工場で働いているらしい。
だが、今はそんなことはどうでもいい。俺たちの知る世界は、まもなく終焉を迎えるのだから。
もちろん、これから何が起こるかは知っている。だから、焦る必要はない。
記憶が確かなら、世界変異から数時間後、巨大な炎の竜が東京の工場地帯に墜落し、その爆炎と衝撃が半径4、5キロ以内の生き物を全て焼き尽くす。
だが、俺は能力がある。生き残れる。心配無用だ。
そして、そこに墜ちた炎竜は、最強クラスの魔物としてその一帯を縄張りにするのだ。
そういえば、言い忘れていた。世界変異後、地球の規模は千万倍に拡大する。人類の既存の地理知識は、まったく役に立たなくなる。
そして、これは太陽系の重力バランスに多大な影響を与え、地球がその中心となる。
これらの変化には、重大な理由がある。
地球の規模が拡大する理由は、これから地球に現れる他の全ての種族にとって十分な居住空間を確保するためだ。
もちろん、一部の人類の種族も別の存在へと変異する。例えば、フランス人の一部は吸血鬼へと変わっていく。
ともかく、最も重要なのは評価値システムだ。お前の行動に応じてランクが決まり、世界への影響力が大きければ大きいほど、より多くの価値を獲得する。そしてその価値に応じて、驚くべき報酬や称号が与えられ、毎月の評価ランキングに基づいて素晴らしい褒賞が得られるのだ。
俺はまず最初の行動として、ここにいる連中を皆殺しにするつもりだ。
殺害もまた、十分な影響だ。他人を殺すことで、俺のランクは大きく跳ね上がる。
これを悪魔の所業と考える愚か者もいるだろうが、そんな連中は、この新世界に適応できない哀れなカスだ。
辺りを見回し、武器に使えそうなものを探す。約1メートルの金属パイプを見つけ、それに向かって歩み、手に取った。
パイプを確認していると、突然、視界に表示が現れた。
【全体通知】
【あなたの世界は変異し、FX世界群に追加されます】
この文章を読み、俺は嫌らしい笑みを浮かべた。前世では、この表示をまともに受け止めなかった。
だが今、俺は最初の殺人を俺の手で刻みつける。
周囲を見渡す。40歳ほどの男が、不可解な空中文字に驚きを隠せずにいる。
他人のシステムメッセージは見えないが、これは全体通知だ。連中もこれを見ているに違いない。
一瞬の躊躇もなく、金属パイプを強く振りかぶると、その男の頭部めがけて全力で殴打した!
ドン! という鈍く、湿った音。男の頭蓋骨が砕け、血と髄液が飛び散る。彼は即死した。その瞬間、新たな黒い表示が現れた。
【初殺し】
【あなたは最初のプレイヤーを殺害し、称号《最初の殺戮者》を獲得しました】
【称号効果により、恐怖値を恒久的に2倍にします】
このメッセージを目にした俺は、獣のような、歪んだ笑顔を浮かべた。
「ああ……これは、本当に……たまらなく 楽しくなりそうだ」