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23 卒業パーティー

学園内のホールでは、ドレスアップした卒業生たちが思い思いに談笑したりダンスをしたりと楽しんでいた。

ほどよく酒も入り、全員が少しずつ理性を溶かしてゆく。


そんな中、ハワードはキョロキョロしながらホールを歩き回っていた。


「……おかしい。アレックス嬢がちっとも見つからない! ヘイゼルも見当たらないし……一体どこにいるんだ?」

「あ~……すでに会場にはいると……思うが……」


イアンがハワードに返答するが、その背中には冷や汗が流れていた。

実はすでに、ハワードは何度か二人とすれ違っているのだ。

なぜ見つけられないかといえば……そう。二人はいつもの服装を脱ぎ捨て、本来の性別に似合う姿で堂々と乗り込んでいるから。


認識できないものは見えない。イアンは先入観の怖さを改めて思い知ったのだった。



★    ★    ★



「リィン、今日は特別綺麗だな。他の男に見せたくないくらいだ」

「や、やぁね、アレックスったら! ……ありがと」


バカップルは今日も平常運転でパーティーを楽しんでいた。お互いの瞳の色に合わせた衣装を身にまとい、仲良し婚約者であることを周りにしっかりとアピールしている。

かつてリィンに目を付け、最後にワンチャンを期待していた男たちは、その様子にすごすごとシッポを巻いて立ち去った。


「ヘイゼル……とても、美しい。俺の心は君にすっかり捕らわれてしまったな……」

「あ、ありがとうございます……! その、オリバー様も、とても素敵です……」


そしてもう一組のバカップル。こちらは二人とも白地に紫の刺繍を施した衣装に身を包んでいる。

頬を染めて恥じらうヘイゼルに周りの男たちが一瞬見惚れたが、彼女のドレスを見て早々にアピールを諦めた。

完全にオリバー色に染め上げられたヘイゼルに声をかける強者はいなかった。


二組のバカップルは合流すると、アイコンタクトをしてコクリと頷いた。

さあ、ここからプチざまぁの始まりだ。



★    ★    ★



「……ハワード様」

「その声、ヘイゼルか? 一体どこに…………え?」


まずはヘイゼルが仕掛ける。一瞬でハワードの脳を破壊しにかかった。

ドレスアップしたヘイゼルは絶世の美女に仕上がっており、これまでのヘイゼルと顔は同じでもメイクによって雰囲気がガラリと変わっている。


ハワードは目の前にいる美女がヘイゼルと同じ顔、同じ声であることを認識したが、同一人物であるという判断はできなかった。


「……あの、その……あ! もしやヘイゼルの身内の方かな!?」

「本人ですよ、ハワード様」

「ほん……にん……?」


ほんにんって何だっけと、国語能力が怪しくなってしまったハワード。

しばし考え込むと、ぽむと手を打った。


「そうか! パーティーの余興だな! 一体誰が考えたんだ? ヘイゼルに女装させるなんて。びっくりするほど似合っているな!」


笑顔で納得したハワードに、そうきたかとヘイゼルはため息をついた。すぐに理解してもらえるとは思っていなかったが、これは手強い。


「……余興ではないのですよ、ハワード様。私の本当の性別は、女なのです」


真剣な目で見つめれば、そこは長い付き合いの二人だ。ヘイゼルが嘘をついていないことがハワードには分かった。


「ヘイゼルが……女の子…………?」


呆然と呟くハワードに、彼の待ち望んでいた声がかけられた。


「ハワード様~。ごきげんよう〜」

「はっ! その声はアレックス嬢! 聞いてくれ! 今、ヘイゼルから衝撃的な話がっ……?」


振り向いたハワードは、そこに声の主がいないことに困惑する。キョロキョロ見回すが、近くに彼の認識するアレックスはいない。

そんなハワードの真正面にいた男が、ニヤニヤしながら口を開いた。


「どうしたんですかぁ? ハワード様、あたしのこと分からないの?」

「……え?」

「ひどいですわぁ~。毎日一緒にお茶してたのに~」

「…………え?」


正面にいるのは、間違いなく礼服に身を包んだ男だ。なのに、その男からハワードの愛する少女の声がする。


「…………アレッ……クス…………?」

「はぁい! なんでしょう?」

「……はっ! 分かった! 今度こそ余興だろう!? な!? き、君は、男装、しているんだろうっ!?」


必死の形相でアレックスに迫るハワード。彼は、一縷の望みにかけた。

ヘイゼルからの流れで、とてつもなく嫌な予感がしていたが、ハワードはそんなはずはないと己に言い聞かせた。

だが、無情にもその思いは踏みにじられる。


「うっふふ~。おかしなことを言われますのねぇ。あたし、男装なんてしていませんわ~。だって、あたし、もとから男ですものぉ! 今まで女装していただけですわ!!」


とびきりの笑顔を浮かべ、男――アレックスは、ハワードに言い放った。


「アレックス嬢が…………おと……こ…………」


化け物を見たかのような顔でそう呟くと、ハワードは泡を吹いて気絶したのだった。





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