20 外堀を埋めよう大作戦
リィンはついでに、ヘイゼルに女友達を作ろう大作戦についてアレックスに相談してみた。
「いいんじゃないか? やっぱ同性の友達は大事だからな。ヘイゼル嬢が他国へ行くにしても、この国で人脈は作っておいた方がいいだろ」
「イアンさんにも事情を伝えておいた方がいいんじゃないかと思うんだけど……」
「あー。ハワードにざまぁするにも、アイツは巻き込んでおいた方がいいな。よし、そっちは俺に任せろ。リィンはヘイゼル嬢の方を頼む」
「分かったわ!」
★ ★ ★
「う、嘘でしょ!? ヘイゼルさんって女性だったの!?」
「全く気付きませんでしたわ!!」
ヘイゼルに許可をもらい、カミラとシンディーを放課後に呼び出したリィンはこれまでの経緯を語った。
二人は驚いたものの、すぐに順応した。
「……確かに言われれば中性的なお顔立ちですものね。納得ですわ」
「どっちにしても素敵です!」
じぃぃ~っと間近で観察され、居心地が悪そうにしているヘイゼル。助けを求めるような視線を送られ、リィンは二人を引き剥がした。
「こらこら。二人とも近すぎよ! ヘイゼルが困っているでしょう!」
「あらあら、すっかり保護者みたいね、リィン」
「リィンは可愛くて繊細なものが好きだものね~」
「な、なによ。私がヘイゼルを好きで何か悪いの!?」
「悪くないわよ。リィンは分かりやすいなって思っただけで」
「馬鹿にしてない?」
「ぜ~んぜん!」
キャッキャと戯れるリィンたちをまぶしそうに見守るヘイゼル。それに気づいたシンディーがそっとヘイゼルの手を取った。
「ヘイゼルさん。私ともお友達になってくれますか?」
「は、はい! 喜んで!」
「あ、ずるいっ! 私も私も! お友達になってくださいませっ!」
カミラも反対側のヘイゼルの手を握る。
「……嬉しいです。同性の友人がこんなにできるなんて……」
頬を染めて幸せそうに呟くヘイゼル。
「「っっっ!!」」
カミラもシンディーも、男装女子の魅力に陥落したのだった。
★ ★ ★
「あ、アレックス嬢が男性で……ヘイゼルが……女…………?」
同じく放課後。鍛錬場に赴いたアレックスはイアンにこれまでの経緯を説明していた。
ところが、脳内の処理が追い付かないのか、フリーズしてしまったイアン。
直立不動で固まったまま動かなくなってしまったので、どうしたものかとアレックスは悩んでいた。
(まあ、これまでずっと友人として接してきたヤツが女だったとか言われたら、混乱するよな)
自分の女装のことは棚にあげてイアンを見守っていると、ようやくイアンが声を絞り出した。
「ヘイゼルのやつ……」
(騙されていたとか、恨み言でも言うつもりか?)
アレックスが次の言葉を待っていると、いきなりドシャッとイアンが崩れ落ちた。
「お、おいおい! 大丈夫か!?」
思わず素で叫ぶと、イアンが目を丸くしてこちらを見上げてきた。
「その声……本当に男、なんだな……」
「あ、ああ。……その……騙していて、申し訳なかった」
アレックスの謝罪を聞いたイアンは、ふぅ~っと長い溜息をつくと、ふるふると首を振った。
「謝罪は必要ない。経緯を聞けば、俺やハワード様に非があることくらい分かる。むしろ、こちらが謝らなければな。……本当に、すまなかった」
潔く頭を下げるイアンにアレックスは笑みを浮かべた。
「ヘイゼル嬢は、あんたが許してくれるならこれからも友達でいたいと言っていた。許せないなら今後はもう二度と関わらないと。……どうする?」
「そんなの、許すも許さないもないだろう。ヘイゼルが好きで騙していたわけじゃないんだから。俺はヘイゼルが男だろうが女だろうが好きだ! あっ、と、友達としてだぞ、もちろん!」
「だよな~。あんたにはテレサ嬢がいるもんな?」
「あ、アレックスっ!!」
顔を赤くして焦るイアンに、アレックスが手を差し伸べた。
「……あらためて、俺と友達になってくれるか?」
からかわれたイアンはむすっと無言のままだったが、差し出されたアレックスの手をしっかりと握りしめたのだった。




